定価のない本 門井慶喜(著)2019年9月発行
終戦の翌年、神田神保町のある古書店主の不可解な死により、
彼の妻や兄貴分だった同じ古書店主が、死の真相を探っていくと
思いがけないことにGHQの日本占領策の一端に繋がっていく、、、
というストーリーで、登場人物も神田の古書店主たちの他にも、
脇役として徳富蘇峰や太宰治が登場、とても興味深く面白い。
占領軍が、日本人の歴史観を変えるため歴史的古書を収集し、
日本から持ち出す、という壮大な計画が明らかになり、
その計画に対し、神田の古書店主たちが団結し難題に
立ち向かうところは、敗戦国ながらも、日本の古書を
商ってきた店主たちの矜持が描かれホッとさせられた。
ただ、GHQの計画を推理するあたりまでは緊迫感もあるが、
終盤は、謎解きが説明的すぎるような感じで、チョッと残念。
わがまま母
—あらすじ— 転記
神田神保町・・・江戸時代より旗本の屋敷地としてその歴史は始まり
明治期は多くの学校がひしめく文化的な学生街に、そして大正十三年
の関東大震災を契機に古書の街として発展してきたこの地は、終戦から
一年が経ち復興を遂げつつあった。
活気を取り戻した街の一隅で、ある日ひとりの古書店主が人知れず
この世を去る。男は崩落した古書の山に押し潰されており、あたかも
商売道具に殺されたかのような皮肉な最期を迎えた。古くから付き合い
があった男を悼み、同じく古書店主である琴岡庄治は事後処理を引き受ける
が、間もなく事故現場で不可解な点が見つかる。
行方を眩ました被害者の妻、注文帳に残された謎の名前、、、さらには
彼の周囲でも奇怪な事件が起こるなか、古書店主の死をめぐる探偵行は、
やがて戦後日本の闇に潜む陰謀を炙りだしていく。