あきない世傳 金と銀 11 風待ち篇 高田郁(著)2021年8月発行
あきない世傳シリーズの11作目。
大阪から江戸に店舗を構え、呉服商いで成功をおさめるも同業仲間から締め出され
やむなく太物を商うこととなった五鈴屋。しかし、店主「幸」を筆頭に従業員全員が
心と力を合わせ、太物(木綿)商いに知恵を絞りながら邁進する様子が描かれている。
今回は、幸たち五鈴屋の創意工夫と太物商仲間の協力により、それまで江戸で
湯上がりタオルとしてしか使われることのなかった「湯帷子」を「藍染の浴衣」として
支持を集め、庶民の着物として市民権を得るに至る経緯が語られる。
相変わらずの面白さと安定感で、今回は特に大きな障害が現れることなく穏やかに読めた。
わがまま母
— 案内文を転記 —
湯上がりの身拭いに過ぎなかった「湯帷子」を、夕涼みや寛ぎ着としての「浴衣」に・・・
そんな思いから売り出した五鈴屋の藍染浴衣地は、江戸中の支持を集めた。
店主の幸は「一時の流行りで終わらせないためにはどうすべきか」を考え続ける。
折りしも宝暦十年、辰の年。かねてよりの予言通り、江戸の街を災禍が襲う。
困難を極める状況の中で、「買うての幸い、売っての幸せ」を貫くため、
幸のくだす決断とは何か。大海に出るために、風を信じて帆を上げる五鈴屋の主従と仲間
たちの奮闘を描く、シリーズ第十一弾。