江戸染まぬ 青山文平(著)2020年11月発行
江戸末期、将来が見通せない立場で暮らす武家の次男坊たちの姿、そんな彼らが
斜めから見ざるを得ない世の中と鬱屈した心境などが短編として描かれている時代小説。
なかなかなかった視点から描かれた硬派な時代小説の短編七篇、それぞれが面白い。
各編、江戸時代の社会での、次男の立場の弱さや肩身の狭さ(将来性のなさ、選択肢の少なさ)
の切実さ、先の見えない身の悲哀と恨みまで描かれていて、同情してしまう。
六篇を読んでいき、最後に『台』が、、、思わずニヤリ、なるほどねえ、となる。
構成が上手いね〜。
で、個人的には『台』が一押し、テーマが独特で、話の展開からラストもとてもいい。
脚光を浴びることない立場、身動きのままならぬ日陰の生活に焦点をあて描かれた
ユニークな短編集でした。
わがまま母
以下、文藝春秋社、案内文を記す・・・
— 江戸に生きる人々が織りなす鮮やかな人生。
“青山流時代小説”の真骨頂!
旗本の次男坊で部屋住みの俺は、武家であらねばならぬ、などとは思っていない。
堅物の兄が下女に好意を寄せているのを見て取って、わざと下女にちょっかいを出そうとするが、
気づくと女は身籠っていた。しかも父親は、隠居の祖父だという。
六十九歳の老人に女で負けた俺がとった行動は――。
直木賞受賞作『つまをめとらば』に連なる傑作短編集。