ブログ 「ごまめの歯軋り」

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サブプライム(低所得者向け住宅ローン)問題 米証券界長引く影響

2008年06月19日 | 時事問題
asahi.com 2008年6月19日0時12分
米証券大手3社、赤字か減益 3~5月期決算
 米証券大手のうち08年3~5月期の3社の決算が18日出そろい、いずれも赤字か減益だった。来月中旬に発表予定の米銀行大手の決算も損失計上が続きそう。サブプライム問題を端緒にした信用不安は長期化する可能性もある。
モルガン・スタンレーは、当期利益が前年同期比60%減の10億2600万ドル(約1100億円)で、2四半期連続の減益。4四半期続けて赤字か減益だ。
 最大手ゴールドマン・サックスのデビッド・ビニアー最高財務責任者(CFO)は17日の決算発表後、アナリスト向け説明会でこう強調した。2四半期連続の減益となったものの、減益率は前の四半期よりは改善。事前予想を上回る内容で、競合社に比べて収益力の強さを見せた。
 金融不安はここに来て再燃している。きっかけは、リーマン・ブラザーズが94年の上場以来初の赤字に転落したことだ。今月に入って株価が急落。決算見通しを前倒しで公表し、追加増資60億ドル(約6500億円)も打ち出した。

asahi.com 2008年6月18日11時51分
米銀、追加増資「650億ドル必要」 米証券大手予想
 米証券大手ゴールドマン・サックスは17日、米低所得者向け(サブプライム)住宅ローン問題にともなう損失で、米国内の銀行に総額650億ドル(約7兆円)の追加増資が必要になる可能性がある、との見通しを明らかにした。
 同社のアナリストがリポートをまとめた。米住宅価格の下落は年内いっぱい続き、米銀が計上する損失のピークは09年初めまでずれ込む、と予想。資本不足を補うのに必要な増資額は、これまで実施した1200億ドル(約13兆円)分と合わせて計1850億ドル(約20兆円)にのぼる可能性がある、とした。多くの米銀の業績見通しも引き下げた。

サブプライム後に米国金融界で何が起きているのか 米国経済の立ち直りは?

 2008年1月31日、日本の大手銀行グループの決算(2007年度末までの)が発表された。サブプライム関連の損失は5882億円に上った。アメリカのサブプライムローン問題は「信用危機」、「流動性の危機」、「資金繰りの危機」という三つの危機を引き起こした。2008年1月アメリカが不況に落ちるという不安が世界同時株安を引き起こし、今現在(6月)も株価は低迷し続けている。欧米の金融機関は巨額の損失を計上し、シティーグループ、メリルリンチ、USBという巨大金融機関の社長の首が飛んだ。そしてモノライン保険会社も危機に陥った。サブプライムローン関連証券にトリプルAという格付けを与えていたS&Pやムーディーズという格付け機関はつぎつぎと格付けを下げ、「格下げ」が価格崩壊を加速するという悪夢のスパイラルに入った。今サブプライムローン問題を反省すると、投資家の欲望が格付けと証券化の暴走許した結果のバブルであった。格付け会社は証券会社の追認機関(提灯持ち)と化したということが実態であった。格付け機関の役割は、証券化商品に支払い保証の期待を賦与して、大量取引が可能な「標準化と均質化」を備えた投資商品へ変身させる事であった。「トリプルA 皆で渡れば怖くない」という風潮を助長した。サブプライムローン問題は単に金融機関に損害を与えただけでなく、証券化・格付け・金融保険制度という欧米流の金融制度に根本的な不信が生じたほうが重要である。また世界中の投資家が「レバレッジを使って利益を増幅させる」というやり方に待ったがかかった。そして金融信用が収縮し「もう金は貸さない」という状況ではレバレッジ手法は使えない。この欧米の金融危機に動いたのが、アジアと中東の国冨ファンド(SWF) であった。オイルダラーと外貨準備金による緊急支援の手は、今後どのような流れを生むのだろうか。


読書ノート 河野稠果著 「人口学への招待」 中公新書

2008年06月19日 | 書評
人口学は人口減少と少子・高齢化をどこまで解明したのか 第11回
鬼頭 宏 「人口から読む日本の歴史」(講談社学術文庫)

 鬼頭 宏氏は人類の文明の歴史を総括して、成長の限界と日本の少子化問題を次のように説明した。
大国のGNPが大きいのは規模の問題であって、人口密度で相関を求めると有意な関係は無い。したがって人口が多ければ繁栄するというのは虚構である。GNPの大きい国では出生率、死亡率はともに低く、発展途上国では出生率が高く人口増加率も高いということである。発展途上国の人口増加率は人口転換の過渡現象でいずれ都市化による文明の恩恵(被害?)を受けて先進国なみに人口減退の波に入るはずだ。経済の人口維持力より人口爆発が大きければ経済発展の足を引っ張ることになる。つまり人口は経済発展のブレーキとなる側面がある。人口が多ければ総需要が増えるというのはあまりに浅はかな見方である。企業ではリストラと称して利益を維持したまま労働人口を減少させる動きが必死である。これは当面の利益を上げて分け前を増やそうとするする経営者の欲求から来ている。地球環境問題では成長の限界を前提として、あらたなソフトランディングを模索している。1999年の世界人口は60億人、2050年には89億人と予測している。21世紀末には世界人口も日本人口も停滞を余儀なくされる。日本の少子化高齢化は一段と加速されるだろう。2025年には人口は減少に転じ、2050年に1億人になり、2100年には6700万人に減少すると予想されている。そこで少子化の功罪を見てみよう。全体として経済的社会的なマイナス面のみが宣伝されている。たしかに少子化高齢化は購買力の減退、労働人口を減少させ、従属扶養人口を増加させるため社会負担を重くするなどマイナス面は多い。少子化を否定して何とか出生率を引き上げるべきだという論者がいるが、人口減少という大きな波動を小手先の出産補助金という官僚発想で何とかなると思っているのだろうか。笑止千万である。たしかに少子高齢化は我々にとって初めての経験であるが、じたばたするような問題ではない。まして人口停滞を豊かな時代の成熟しない若者の身勝手などと非難するほうが間違っている。歴史的に見れば今まで何度も人口停滞を経験している。人口停滞は文明システムの成熟化に必ず現れる現象だといえる。現在日本で起きている人口変動は次の特徴を持っている。
少子化、長寿化、 晩婚化もしくは非婚化、 核家族化と高齢者単独世帯の増加、 人口の都市集中

文芸散歩 「平家物語」 佐藤謙三校註 角川古典文庫

2008年06月19日 | 書評
日本文学史上最大の叙事詩 勃興する武士、躍動する文章 第73回
平家物語 卷第十二

泊瀬六代

 高尾の文覚上人は六代御前を貰い受け、あくる年正月五日に都へ着いた。翌日大覚寺に連れていったところ、北の方は長谷寺に籠って居られるとの事で、斉藤六が急いで長谷寺にゆき都の大覚寺へ北の方を連れ戻し、親子の再会をなしたという。文覚上人は出家には賛成せず、高尾で母と六代の住む家をしつらえて迎えたと云うことである。付に「六代斬られ」と云う後日譚が挿入されている。六代御前が十五歳になられたころ、頼朝より、六代御前の人柄・人物を見て将来危険人物になるかどうか文覚上人に問い合わせが来た。文覚上人はそれほどの人物ではない不覚の人だととぼけた返事をしておいたが、やはり頼朝の懸念は恐ろしく、十六歳となった文治五年の春六代を出家させられた。お供に斉藤五・斉藤六をつけて修行に出た。高野山の瀧口入道から父中将維盛が自殺した有様を聞き、熊野へ回って都へ戻られた。このまま行けば六代の命は全うできたのだが、運命はそうはさせてくれなかった。六代御前は三位の禅師として高尾で行い済ましていたのだが、建久十年正月十三日鎌倉殿が五十三歳でなくなられた時、主上は後鳥羽院であったが政治には一向見を入れず、遊びにうつつを抜かす馬鹿殿であったので、高倉天皇の第二皇子で兄の二の宮を位に就けようと文覚上人が謀反を起した。謀反が発覚して文覚上人が隠岐国へ流されると、次の将軍の時に平家の嫡嫡子で文覚上人ゆかりの人であった三位の禅師を逮捕し、相模国田越にて斬られたと云うことである。十二歳から三十歳まで命を永らえることが出来たのは長谷観音の御利生といわれたが、それにしても文覚上人に助けられ文覚上人の野心に連座したのも運命であろう。

自作漢詩 「江村午後」

2008年06月19日 | 漢詩・自由詩


雨収葉際翠光     雨収まり葉際に 翠光浮かぶ

花落枝頭白日     花落ち枝頭に 白日悠なり

竹院堂前無吠犬     竹院の堂前に 吠ゆる犬無く
 
南風田家有     南風田家に 牛有り

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(赤い字は韻:十一尤 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)

CD 今日の一枚 テレマン「ホルン協奏曲」

2008年06月19日 | 音楽
テレマン「ホルン協奏曲」
アイオナ・ブラウン指揮アカデミー室内管弦楽団 
ホルン演奏:ヘルマン・バウマン、チモニー・ブラウン、ニコラス・ヒル 
DDD 1984 PHILIPS

1本、2本、3本のホルンのための協奏曲が5曲収録されている。快活で優美な協奏曲は既にバロック音楽を超越して、モーツアルトのホルン協奏曲に近い。