宇宙の誕生から138億年、地球の誕生から45億年の時空のタイムワープ 第5回
地球生命史七大事件と生命の発展
① 原始生命の誕生(約40億年前)
宇宙の元素は赤色巨星内で起きた核融合反応によって合成され、超新星爆発を通して星間空間に放出されたと考えられている。宇宙から飛来する隕石や彗星には多様なアミノ酸が含まれているから、生命体の一部は宇宙から地球に搬入されたのかもしれない。地球生命が誕生した時期は実は直接的な証拠はない。38億年前の堆積変性岩中の化学化石が唯一の情報である。岩石中の炭素元素の同位体組成が生物起源だと、天然にくらべて偏っているのである。何度も生まれては隕石などの破壊によって抹殺されたかもしれない。どのような微生物であったかは全く分らない。ただ生物起源と見なされる炭素組成が38億年前の変成岩中にあったというだけである。
② 原核細胞(バクテリア)の出現(38-35億年前)
オーストラリアのノースポールで35億年前の「フィラメント状のバクテリア」化石が発見された。深海堆積物のT型チャートといわれる石英からなる岩石(枕状溶岩)であった。岩石の生成の特徴から、深海の熱水噴出孔(ブラックスモーカ)付近で棲息していた独立栄養嫌気性耐熱細菌と見られる。現在の遺伝子系統図からいえば原核細菌(遺伝子の核はあるが核膜はない)の元祖に当るのであろう。当時はまだ海洋表面や地表部分は紫外線に曝されるので危険だった。深海で化学栄養からエネルギーを得て生きていたのであろう。
③ 光合成の開始(27億年前)
西オーストラリアのピルバラから27億年前の柱状「ストロマトライト」化石が発見された。酸素発生型光合成細菌シアノバクター(藍色細菌)であった。細菌のコロニーが石灰岩と層状構造を有する。捕食者が現れる前の先カンブリア紀の浅い海底にストロマトライトが林立していたと想像される。シアノバクターは水と炭酸ガスからエネルギーを得る光化学系Ⅱ型で酸素を放出する。これは植物の先祖である。海底でストロマトライトが発生した酸素ガスは鉄を酸化して酸化鉄が沈殿し、今日の縞状鉄鉱層BIFを作った。
④ 真核細胞の出現(21億年前)
20億年前には海水中の溶存酸素量が増え、大気中の酸素分圧は飛躍的に増加した。三村芳和著 「酸素のはなしー生物を育んだ気体」 中公新書でも紹介したが、電子伝達系という膜たんぱく質系で、生物は水素を電子供与体、酸素を電子受容体とするシステムを作って効率のよいエネルギー生産が出来るようになった。それを集中して行う器官としてミトコンドリア、葉緑体を持つ生物へ移った。このミトコンドリアという小器官はたんぱく質製造工場であるリボゾームと同様に親細胞とは違う独自の遺伝子情報を持つ。すなわち生物は共生菌からこのように特化した器官を導入したのである。21億年前に誕生した我々の先祖である真核性細菌の進化系統図を描くのは現在ではまだ難しい。おおまかにいえば、光合成細菌から分岐した真正細菌系と、古細菌系の二つの輪があるとされている。27億年前に生まれたシアノバクテリアから葉緑体が発生し、ミトコンドリアや葉緑体というエネルギー代謝に重要な細胞内小器官はいずれも光合成細菌に由来する。生物は酸素利用型の効率的エネルギー獲得システムへ進化した。細胞の大型化と細胞内小器官によって、細胞は飛躍的に進化し性分化もできた。
⑤ 多細胞生物の出現(10億年前)
カナダの藻類化石(紅藻に似た)が最古の真核多細胞生物の記録である。シベリアには9億年前の細胞壁を持つ植物化石も発見された。化石の中で生物由来の化石(バイオマーカー)が著しく多くなるのも10億年以降のことである。大型化・多様化・植物と後生動物が特徴である。そして生物は従属栄養(捕食関係)が主体となる。生物の形態はフィラメント状からシート状に変化し、体に中心が見られるようになる。これは外骨格の形成につながるのである。又中枢神経系の発生ももうすぐである。
⑥ 硬い骨格生物の出現(5.5億年前)
初期後生動物から柔らかい体を持つ「エディアカラ生物群」を捕食するハンターである「カンブリア紀動物群」が5.5億年前から隆盛を向かえた。海老や蟹のような硬い殻を持つ生物化石がでてくるのである。捕食上位の動物には俊敏な運動能力、アゴのような機械的破細器官、溶解液分泌器官が必要である。カンブリア紀初めには後世動物の多様化は目覚しく、節足動物、鰓動物、海綿動物などが出現した。これを「カンブリア紀の大爆発」と呼ぶ。
⑦ 人類の出現(500万年前)
生物の陸上進出はシルル紀(約4億5000万年前)に始まった。陸上の景観が変わるのも4億年前からである。シダ植物が広く繁殖し、デボン紀から石炭紀(4億年前ー3億年前)には森林という景観が地球上に現れた。脊椎動物の中から両生類・爬虫類・哺乳類、節足動物の中から昆虫類が現れて多様化した。恐竜の絶滅が6500万年前にあって哺乳類に代わったが、ついに500万年前に人類が誕生した。
(つづく)
地球生命史七大事件と生命の発展
① 原始生命の誕生(約40億年前)
宇宙の元素は赤色巨星内で起きた核融合反応によって合成され、超新星爆発を通して星間空間に放出されたと考えられている。宇宙から飛来する隕石や彗星には多様なアミノ酸が含まれているから、生命体の一部は宇宙から地球に搬入されたのかもしれない。地球生命が誕生した時期は実は直接的な証拠はない。38億年前の堆積変性岩中の化学化石が唯一の情報である。岩石中の炭素元素の同位体組成が生物起源だと、天然にくらべて偏っているのである。何度も生まれては隕石などの破壊によって抹殺されたかもしれない。どのような微生物であったかは全く分らない。ただ生物起源と見なされる炭素組成が38億年前の変成岩中にあったというだけである。
② 原核細胞(バクテリア)の出現(38-35億年前)
オーストラリアのノースポールで35億年前の「フィラメント状のバクテリア」化石が発見された。深海堆積物のT型チャートといわれる石英からなる岩石(枕状溶岩)であった。岩石の生成の特徴から、深海の熱水噴出孔(ブラックスモーカ)付近で棲息していた独立栄養嫌気性耐熱細菌と見られる。現在の遺伝子系統図からいえば原核細菌(遺伝子の核はあるが核膜はない)の元祖に当るのであろう。当時はまだ海洋表面や地表部分は紫外線に曝されるので危険だった。深海で化学栄養からエネルギーを得て生きていたのであろう。
③ 光合成の開始(27億年前)
西オーストラリアのピルバラから27億年前の柱状「ストロマトライト」化石が発見された。酸素発生型光合成細菌シアノバクター(藍色細菌)であった。細菌のコロニーが石灰岩と層状構造を有する。捕食者が現れる前の先カンブリア紀の浅い海底にストロマトライトが林立していたと想像される。シアノバクターは水と炭酸ガスからエネルギーを得る光化学系Ⅱ型で酸素を放出する。これは植物の先祖である。海底でストロマトライトが発生した酸素ガスは鉄を酸化して酸化鉄が沈殿し、今日の縞状鉄鉱層BIFを作った。
④ 真核細胞の出現(21億年前)
20億年前には海水中の溶存酸素量が増え、大気中の酸素分圧は飛躍的に増加した。三村芳和著 「酸素のはなしー生物を育んだ気体」 中公新書でも紹介したが、電子伝達系という膜たんぱく質系で、生物は水素を電子供与体、酸素を電子受容体とするシステムを作って効率のよいエネルギー生産が出来るようになった。それを集中して行う器官としてミトコンドリア、葉緑体を持つ生物へ移った。このミトコンドリアという小器官はたんぱく質製造工場であるリボゾームと同様に親細胞とは違う独自の遺伝子情報を持つ。すなわち生物は共生菌からこのように特化した器官を導入したのである。21億年前に誕生した我々の先祖である真核性細菌の進化系統図を描くのは現在ではまだ難しい。おおまかにいえば、光合成細菌から分岐した真正細菌系と、古細菌系の二つの輪があるとされている。27億年前に生まれたシアノバクテリアから葉緑体が発生し、ミトコンドリアや葉緑体というエネルギー代謝に重要な細胞内小器官はいずれも光合成細菌に由来する。生物は酸素利用型の効率的エネルギー獲得システムへ進化した。細胞の大型化と細胞内小器官によって、細胞は飛躍的に進化し性分化もできた。
⑤ 多細胞生物の出現(10億年前)
カナダの藻類化石(紅藻に似た)が最古の真核多細胞生物の記録である。シベリアには9億年前の細胞壁を持つ植物化石も発見された。化石の中で生物由来の化石(バイオマーカー)が著しく多くなるのも10億年以降のことである。大型化・多様化・植物と後生動物が特徴である。そして生物は従属栄養(捕食関係)が主体となる。生物の形態はフィラメント状からシート状に変化し、体に中心が見られるようになる。これは外骨格の形成につながるのである。又中枢神経系の発生ももうすぐである。
⑥ 硬い骨格生物の出現(5.5億年前)
初期後生動物から柔らかい体を持つ「エディアカラ生物群」を捕食するハンターである「カンブリア紀動物群」が5.5億年前から隆盛を向かえた。海老や蟹のような硬い殻を持つ生物化石がでてくるのである。捕食上位の動物には俊敏な運動能力、アゴのような機械的破細器官、溶解液分泌器官が必要である。カンブリア紀初めには後世動物の多様化は目覚しく、節足動物、鰓動物、海綿動物などが出現した。これを「カンブリア紀の大爆発」と呼ぶ。
⑦ 人類の出現(500万年前)
生物の陸上進出はシルル紀(約4億5000万年前)に始まった。陸上の景観が変わるのも4億年前からである。シダ植物が広く繁殖し、デボン紀から石炭紀(4億年前ー3億年前)には森林という景観が地球上に現れた。脊椎動物の中から両生類・爬虫類・哺乳類、節足動物の中から昆虫類が現れて多様化した。恐竜の絶滅が6500万年前にあって哺乳類に代わったが、ついに500万年前に人類が誕生した。
(つづく)