ブログ 「ごまめの歯軋り」

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米下院緊急金融法案否決  ブッシュの要請にノー  

2008年09月30日 | 時事問題
asahi.com 2008年9月30日10時28分
米下院、金融法案を否決
 【ワシントン=西崎香】米議会下院は29日、最大7千億ドル(約75兆円)の公的資金で金融機関の不良資産を買い取ることを柱とする緊急経済対策法案を否決した。米議会は法案修正で再審議に入る見通しだが、国民負担増を嫌う共和、民主両党の議員の反発は予想外に強く、修正後の可決・成立への見通しは立っていない。
 反対228票に対して賛成は205票で、23票差で否決された。反対は、議会を主導する民主党議員(計235議席)が4割にのぼり、共和党(計199議席)は7割近くに達した。可決を見込んでいた民主党指導部は衝撃を受けている。国民の間に買い取り制度への反対が根強いため、議会指導部は、政権側が20日に提示した原案を大幅に修正したが、可決に至らなかった。

共和党の反対多数で否決 ブッシュの真意は何処に 軍産複合体が予算削減に恐怖感?

このニュースには二つの疑問が生じた。一つは金融機関救済法案が否決されたことである。日本では金融危機のおいて法改正なしでなぜ簡単に国費投入をしたのだろうか。金融機関救済に税を使うことは大蔵省の裁量でできたのか。とすれば米国はやはり法治国家である。金融機関の不始末は金融機関が尻拭いをしろと議会は反対した。2つは共和党と民主党の政策の違いである。ブッシュの共和党が反対に回ったのは、解せない。ブッシュはもともとやる気は無かったか。形だけのことだったのか。予算の半分を軍事産業に投じている共和党政権では金融機関を助ける気はないのか。

読書ノート  橋本治著 「日本の行く道」 集英社新書

2008年09月30日 | 書評
今の日本の社会はどっかおかしい もうひとつの選択肢を 第8回 

第三章 いきなりの結論 (1)

この章は「産業革命前に戻せばいい」と云うむちゃくちゃな結論から開始される。勿論ギャグと思いますが。その理由の一つが地球温暖化が「産業革命以来の人間の生活活動の結果である」から「産業革命以前の段階に戻せばいい」と云う「売り言葉に買い言葉」のヤクザな連鎖反応である。なんだか著者は悦に入って大真面目に暴論を書きまくっていますが、現実味のない話です。その辺はカットして本当は何が言いたいのだろうかを考えてみました。多少は現実味があることは「1960年代の前半に世界を戻せ」と著者は云うことです。つまり高度経済成長以前の東京オリンピック時点の社会である。超高層ビルを破壊せよとか、中国の経済発展をからかってやれとか、江戸時代的な生活とかどれもこれもむちゃくちゃな意見であるが、「人のあり方を考える事のほうが、進歩や繁栄を考えるより重要だ」と云う文明批判である。井上ひさし的な面白さである。


経済問題  富田俊基著 「財投改革の虚と実」 東洋経済新報社

2008年09月30日 | 書評
財政投融資の実の改革は財投事業の見直しだ 第8回

第一章 「資金調達の仕組みの改革」(3)

2007年度で財投機関債を発行する機関数は24、合計6.2兆円で、資金調達に占める割合は34%に達した。その内訳は機関名と発行額(単位を億円)を列記すると、
公営企業金融公庫(3600)、
国民生活金融公庫(1900)、
中小企業金融公庫(1900)、
沖縄振興開発金融公庫(200)、
農林漁業金融公庫(230)、
日本政策投資銀行(2900)、
国際協力銀行(2000)、
独行法・住宅金融支援機構(36839)、
独行法・都市再生機構(1400)、
独行法・水資源機構(150)、
独行法・鉄道建設運輸施設支援機構(1000)、
独行法・福祉医療機構(1125)、
独行法・国立病院機構(50)、
私学振興共済事業団(80)、
独行法・国立大学財務経営センター(50)、
独行法・日本学生支援機構(1170)、
独行法・緑資源機構(61)、
独行法・日本高速道路保有・債務返済機構(5300)、
東日本高速道路株式会社(250)、
中日本高速道路株式会社(500)、
西日本高速道路株式会社(250)、
首都高速道路株式会社(100)、
阪神高速道路株式会社(100)、
関西国際空港株式会社(1106)である。

独行法・住宅金融支援機構の財投機関債発行額が全体の半分以上を占める。その他では独行法・日本高速道路保有・債務返済機構も多い。特殊法人から独立行政法人という名前に変えたのは虚像である。国会の議決を必要とし政府から独立しては一日も存続できなのに独立法人とは恐れ入った。財投機関債は政治不信・市場過信の産物である。



文藝散歩 五味文彦著 「源義経」 岩波新書

2008年09月30日 | 書評
源平合戦の英雄「源義経」像を文献・史料から探る 第21回

7)源頼朝との対立ー「書状」より

義経への不信を決定的にしたのが、「平家物語」の「逆櫓」、「壇ノ浦合戦」に書かれている梶原景時からの「義経自専」、「廷尉不義」と云う訴えであった。大将たる義経が御家人と先陣争いをすると云う異常な熱意である。この讒訴によって、頼朝は使者を出して田代信綱に鎌倉殿に忠誠をちかうものは義経の命を聞かなくていいと云うお触れを出した。そして「平家物語」の「腰越」ではついに義経を鎌倉へは入れなかった。義経を都へ追い返した頼朝は、大江広元、三善俊兼、二階堂行政ら側近と戦後処理を進めた。義経に与えた平家没官領の24箇所を没収した。帰洛した義経は頼朝の畿内の支配が固まっている事に気がつき、ここから院を突き上げて義経の反撃が始まった。しかし経済的基盤を奪われ、手勢の兵力も少ないので義経はしだいに追い詰められていった。8月頼朝は佐々木定綱に前備前守源行家の追討を命じた。1185年8月の除目によって、源氏一族の範頼が伊豆守、惟義が相模守、義兼が上総守、遠光が信濃守、義資が越後守、義経が伊予守に任じられた。頼朝の知行国に国司として任じられたので、頼朝の管理下の経済的基盤は一挙に拡大した。義経は伊予の国を賜ったと云うが各地には地頭が補されており国務を取ることはできなかった。九条兼実の日記「玉葉」にはこの頃から義経に関する記事が多くなるが、兼実は頼朝の推挙で摂関になろうと画策していたからである。決定的な義経と頼朝の戦いは、頼朝が義経に刺客を送ったことで戦端が開かれた。このあたりを「平家物語」の「土佐坊斬られ」を見よう。
土佐坊被斬
一方源氏の旗頭であった義経には十人の大名をつけたが、兄弟不和で近いうちに処分があると聞いて家来は鎌倉へ逃げ帰った。鎌倉殿は義経が勢いを付けぬ内に滅ぼしてしまおうと刺客土佐坊昌俊を都へ送った。都で義経に面会した土佐坊昌俊はなんとかごまかしてその場をはなれその夜討ち入る準備をしていた。義経の愛妾静御前が表が騒がしいようなので偵察に童を出したが帰ってこないので、義経は親衛隊の六七十騎で土佐坊四五十騎を攻め滅ぼした。土佐坊は六条河原で首を刎ねられた。


自作漢詩 「嘯秋雨」

2008年09月30日 | 漢詩・自由詩
水雲暗暗苦低     水雲暗暗 低垂を苦む

風雨凄凄葉上     風雨凄凄 葉上に吹く

悴色空山蔵狡兔     悴色の空山 狡兔を蔵し
    
孤村林樹嘯寒     孤村の林樹に 寒鴟嘯く

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(赤い字は韻:四支 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)