ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 河野稠果著 「人口学への招待」 中公新書

2008年06月19日 | 書評
人口学は人口減少と少子・高齢化をどこまで解明したのか 第11回
鬼頭 宏 「人口から読む日本の歴史」(講談社学術文庫)

 鬼頭 宏氏は人類の文明の歴史を総括して、成長の限界と日本の少子化問題を次のように説明した。
大国のGNPが大きいのは規模の問題であって、人口密度で相関を求めると有意な関係は無い。したがって人口が多ければ繁栄するというのは虚構である。GNPの大きい国では出生率、死亡率はともに低く、発展途上国では出生率が高く人口増加率も高いということである。発展途上国の人口増加率は人口転換の過渡現象でいずれ都市化による文明の恩恵(被害?)を受けて先進国なみに人口減退の波に入るはずだ。経済の人口維持力より人口爆発が大きければ経済発展の足を引っ張ることになる。つまり人口は経済発展のブレーキとなる側面がある。人口が多ければ総需要が増えるというのはあまりに浅はかな見方である。企業ではリストラと称して利益を維持したまま労働人口を減少させる動きが必死である。これは当面の利益を上げて分け前を増やそうとするする経営者の欲求から来ている。地球環境問題では成長の限界を前提として、あらたなソフトランディングを模索している。1999年の世界人口は60億人、2050年には89億人と予測している。21世紀末には世界人口も日本人口も停滞を余儀なくされる。日本の少子化高齢化は一段と加速されるだろう。2025年には人口は減少に転じ、2050年に1億人になり、2100年には6700万人に減少すると予想されている。そこで少子化の功罪を見てみよう。全体として経済的社会的なマイナス面のみが宣伝されている。たしかに少子化高齢化は購買力の減退、労働人口を減少させ、従属扶養人口を増加させるため社会負担を重くするなどマイナス面は多い。少子化を否定して何とか出生率を引き上げるべきだという論者がいるが、人口減少という大きな波動を小手先の出産補助金という官僚発想で何とかなると思っているのだろうか。笑止千万である。たしかに少子高齢化は我々にとって初めての経験であるが、じたばたするような問題ではない。まして人口停滞を豊かな時代の成熟しない若者の身勝手などと非難するほうが間違っている。歴史的に見れば今まで何度も人口停滞を経験している。人口停滞は文明システムの成熟化に必ず現れる現象だといえる。現在日本で起きている人口変動は次の特徴を持っている。
少子化、長寿化、 晩婚化もしくは非婚化、 核家族化と高齢者単独世帯の増加、 人口の都市集中


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1 コメント

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■秋葉原通り魔事件が暴くお役所仕事の実体とは?-やはりNPOに任せるべきか? (yutakarlson)
2008-06-19 09:29:35
■秋葉原通り魔事件が暴くお役所仕事の実体とは?-やはりNPOに任せるべきか?
こんにちは。人口減少という大きな波動を小手先の出産補助金という官僚発想ではどうにもなりません。最近、官僚が発想するととんでないことになるという、事例がまた一つ増えました。政府は秋葉原通り魔事件のような事件を防ぐために、サイトなどへの書き込みのうち事件を予告するようなものに関して、通報するシステムを構築するかもしれません。趣旨は結構なことなのですが、これが政府がやるとなると、とてつもないことになるかもしれません。私のブログでは、政府がこのシステムをつくると、とてつもないお金のかかる巨大なものになってしまうこと、またこれを防ぐにはどうしたら良いのかを掲載しました。是非ご覧になってください。

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