ブログ 「ごまめの歯軋り」

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企業側有利の一方的労働契約の正常化を願う

2007年03月31日 | 時事問題
asahi.com 2007年03月31日06時24分
東芝家電、「偽装請負」と認定 大阪労働局が是正指導
 東芝グループの東芝家電製造大阪工場(大阪府茨木市)で偽装請負が行われていた疑いが出ている問題で、大阪労働局が労働者派遣法に違反した「偽装請負」にあたると認定、是正指導をしていたことが30日、わかった。
 労働局は29日付で同社に文書で指導した。是正指導を求めていたのは、問題発覚後、今月5日付で同社の契約社員となった4人と、契約解除になった人材会社の男性労働者(38)。5人は同工場で3~10年間、偽装請負の状態で働かされていたとして、同社に直接雇用するよう労働局の是正指導を求めた。

国会での格差社会是正論議の方向を受けて、諸悪の根源である派遣労働法の廃止を

「企業の偽装請負」という違反問題が正常化しても、派遣社員という差別問題と労働条件の劣悪さが改善されるわけではない。そもそもの現在の派遣社員という劣悪な労働契約が横行したのはバブル崩壊後の就職氷河期において、企業側がきわめて安い労働力を得るために、特殊技能職だけに認めら得た派遣労働法を一般労働にも拡大適用できるように規制緩和をしたことが原因である。ねらいは安い東南アジアの賃金並みに日本人労働者の賃金を抑え込むための規制緩和であった。バブル崩壊という企業側のでたらめな失敗のしわ寄せを労働者に転換することである。問題の本質は派遣労働法の規制緩和を廃止して元に戻せば解決する。安い賃金という企業側の甘い汁を吸わせなければいいのである。それで潰れるような経営基盤の脆弱な企業は別の対応を真剣に探していただきたい。

東谷暁著 「金融モラル崩壊ー金より大事なものがあるー」 文春新書 第四回/全八回

2007年03月31日 | 書評
第三章  IPOビジネス

 確かに日本はベンチャー企業化は育ちにくいといわれる。日本の90年代のITブームの頃、クレイフィッシュというベンチャーがホームページ作成ビジネスからインターネット商店街をやって2000年ナスダックと東証マザーズに上場棄て話題をまいたが、ITバブルがはじけると急落し会計疑惑が持ち上がった。同じような例は携帯電話販売の光通信というベンチャーの重田康光は世界第5位の大資産家になったが、詐欺罪で逮捕、株価も急落した。米国では「アボイド・ドット・コム」といわれIT ベンチャー株は買うなという教訓が囁かれていた。

 米国の経済学者ジョゼフ・シュペーターは「創造的破壊」という言葉で企業化をこう定義つけた。「新しい生産方式だけでなく、あたらしい商品、販路、原料の獲得、組織を組み合わせて新しい産業を起すこと」  ところがそういう真に革命的な産業創造はなかなか出るものではなく、まずはどこかにトリックがあると疑いの目で見ることが賢明である。ところが日本の経済マスコミは話題さえあれば村上やホリエモン、重田康光らの行動を創造的破壊の企業家と礼賛する。米国で1980年代後半に巨大な投資銀行もシリコンバレーのベンチャー企業に目をつけ上場後の巨大な収益を得るためIPO(上場)ビジネスを展開するに至った。まさにゴールドラッシュの雪崩の如き金が動いた。投資銀行は上場で得た資金の7-8%を手数料としていただくストーリーである。もっと悪いことに本当に企業が成功しなくともよく「仮の成功」という仮構で数多くの上場(実体の伴わない噂だけの)が仕組まれ、赤字を飛ばして黒字になるまでごまかして成功を演出するいわゆる「飛ばし」が常態化した。ライブドアーの粉飾決算はまさにこれにあたる。