ブログ 「ごまめの歯軋り」

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舛添大臣  医療崩壊に医師増員方針 

2008年06月17日 | 時事問題
asahi.com 2008年6月17日
医師養成数増へ方針転換 97年閣議決定見直しへ
 全国的な医師不足対策のため、舛添厚生労働相は17日、医学部の定員削減を決めた97年の閣議決定を見直し、医師の養成数を増やす方針に転換する考えを明らかにした。 閣議後の記者会見で、「いまは医療崩壊の状態で、(97年の)閣議決定を見直す方向で調整すべきだということで、福田首相の了解をいただいた」と語った。

なぜ医師は不足したのか
 現在の医者の年齢分布を見ると、40-44歳区分を最大にして、高齢者医師数が減少するのは仕方ないとして、若年年齢層の医師数が減少しており、25-29歳の医者は3割ほど少ない。年金問題における人口分布を見るように、将来にはあきらかに医師数が減少するのは目に見えてくる。どうしてこうなったのかは、昭和23年の医療法の「人員配置標準」にある。病院が配置しなければならない医師の最低人員数は一般病床・感染病床・結核病床で入院患者16人当たり医師1人、精神病床・療養病床で48人当り医師1人、外来患者48人あたり医師1人と決められた。これに基づいて最小限必要な医師数を人口1000人あたり医師1.5人を1985年までに達成するという目標が立てられ、全国に80大学医学部が設立された。この目標を達成した国は早くも1986年には医師の数を1995年をめどに最小限10%削減するという方針転換をした。医学部の定員は2004年で7625人まで減らされた。人員配置標準に照らした最小限医師数を達成したら、これが上限であるかのように減少策に転じたのである。

 将来の日本の医師不足は決定的である。医師を増やす方法はあるのだろうか。それにはイギリスのブレアー政権が行ったように、医学部の定員を増やす、国外から医者を輸入する、患者を海外へ送るの三つしかない。急激な医学部定員増は不可能である。せいぜい年1000人程度の医者の増員が出来る限界であろう。長年の定員抑制策のボデーブローは深刻である。人口と同じように慣性の法則があって、短期間でどうなる問題ではない。つまり焼け石に水である。第2,第3の方法は現実的でない。看護婦の輸入が考えられている程度だ。日本の医療費は世界的に激安で、1/3-2/3の料金である。これでは医療レベルの高さからして逆に患者が海外から押し寄せる。ということでいまのところ妙案はない。政府には期待できない。自衛策として各人が病気にならないこと、些細な事で病院にはいかないことである。かかりつけの町医者の範囲で一生すごせたら病院へ行かなくてもいいのである。

原油高で苦しむ人、得をしている人

2008年06月17日 | 時事問題
村上龍、金融経済の専門家たちに聞く 
質問
原油高が続いています。この原油高で、利益を享受している層と、損をしている層
を指摘していただければと思います。

回答の一つ:菊地正俊 メリルリンチ日本証券 ストラテジスト
原油高で最も恩恵を受けているのは、いうまでもなく産油国です。2007年の原油生産量が最も多かったのはサウジアラビアの日量1041万バレルで、ロシアが998万バレルで続きます。ロシアはさらにオイルマネーに潤っていると思います。ドバイはオイルマネーのリサイクルで発展しています。米国も688万バレルと世界3位の産油国ですが、輸入の方が多いので、原油高の影響はマイナスです。米国は車依存社会ですので、ガソリン高と住宅価格下落の悪影響が減税効果を相殺して、個人消費が減速しています。原油高は原油輸入国から原油輸出国への所得の移転に他なりませんので、原油輸出国が恩恵を受ける一方、原油輸入国は打撃を受けます。
最近の原油高は実需より金融的側面が強いといわれます。ユニークな発言で知られる北畑隆生・経済産業省事務次官は6月9日の記者会見で、最近の原油高騰について投機筋など金融関係者は巨額の利益を得ている。経済産業省が5月22日に発表した「エネルギー白書2007年版」は、2007年下期のファンダメンタルズ価格(需給バランスで決まる価格)は50-60ドル程度で、30-40ドルはプレミアムと試算しました。実需に基づかない投資資金がコモディティ市場に入っているのは事実でしょう。原油先物に買いポジションをもっていた金融取引業者は、原油高から大きな利益を得たと推測されます。
ファンダメンタルズから乖離して、永遠に上がり続ける商品や資産はありませんので、原油価格が急落すれば、原油高の恩恵は一夜にして打撃に変わるでしょう。

原油高で儲けているのは中東やロシアの産油国と、金融資本であるというが結論です

読書ノート 河野稠果著 「人口学への招待」 中公新書

2008年06月17日 | 書評
人口学は人口減少と少子・高齢化をどこまで解明したのか 第9回

出生率の予測と人口推計

人口問題の解明はこれほど困難だといいながら、経済予測に比べると人口予測は精度は高い。それは変化が緩慢で人口モメンタムというタイムラグが長いからだ。中でも出生率の予測は最も難しい。何故難しいかと云うと、一つは既存の出生力理論の人口推定に対する応用力の不足、第二に出生率変動の基本データの不足、第三に出生率の予測に社会経済要因を組み込む難しさにある。上の五つの理論(仮説)は残念ながら定性的説明に終始しており、定量的に数値解析できるレベルではないこと、そして国勢調査で個人プライバシー保護の観点からデータをアンケートできないことで決定的データ不足になっている、最後の社会経済要因は最も予測が出来ないからだ。

将来人口推計とは、人口学で最も実用的意味を持ち、国や地方自治体の経済社会計画と関連した行財政施策決定の基礎資料となる。コーホート要因法が1976年以来国際標準となった。「コーホート出産率法」は、世代を逐次おって出産数と生残数を繰り返し計算する方法であるがここでは説明は省略する。日本の人口の行方を「国社人研」の2006年度推計より結果だけ示す。1950年から2005年までが実測であり、それ以降2055年までは推計である。合計特殊出産率は2013年まで1.213まで下がり、2055年までに僅か1.264に上がるとと仮設している。2007年より日本の人口は減少傾向になり2055年には総人口は9000万人をきる。65歳以上の高齢化人口は2040年まで上昇し、14歳までの未就業人口は一貫して減少し続ける。100年後には日本の人口は4000万人以下となる。何らかの人口抑制策を講じて2025年にもし人口置き換え水準に恢復したとしても、2080年に人口は8000万人に一定化するが、2050年に人口置き換え水準に恢復した場合は2100年に人口は6000万人で一定化する。


文芸散歩 「平家物語」 佐藤謙三校註 角川古典文庫

2008年06月17日 | 書評
日本文学史上最大の叙事詩 勃興する武士、躍動する文章 第71回

平家物語 卷第十二

平大納言被流
九月二十三日、平家に連座して捉えられた公卿らの流刑が決められた。平大納言時忠は能登国へ、内蔵人信基は佐渡国へ、中将時実は安芸国へ、兵部少輔正明は隠岐国へ、二位僧都全真は阿波国へ、法勝寺の執行能因は上総国へ、阿闍梨融円は備後国へ、中納言律師忠快は武蔵国へ流された。平大納言時忠というは、左大臣時信の子、故建春門院の兄、高倉上皇の外戚、入道相国の北の方二位殿の弟である。平家の庇護のもとで顕職思いのままであった。息子の侍従時家十六歳は流刑からは漏れた。

土佐坊被斬
一方源氏の旗頭であった義経には十人の大名をつけたが、兄弟不和で近いうちに処分があると聞いて家来は鎌倉へ逃げ帰った。鎌倉殿は義経が勢いを付けぬ内に滅ぼしてしまおうと刺客土佐坊昌俊を都へ送った。都で義経に面会した土佐坊昌俊はなんとかごまかしてその場をはなれその夜討ち入る準備をしていた。義経の愛妾静御前が表が騒がしいようなので偵察に童を出したが帰ってこないので、義経は親衛隊の六七十騎で土佐坊四五十騎を攻め滅ぼした。土佐坊は六条河原で首を刎ねられた。

自作漢詩 「黄昏水郷」

2008年06月17日 | 漢詩・自由詩


雨余緑樹麦秋     雨余の緑樹 麦秋の天

梅子薫風鴎鷺     梅子薫風 鴎鷺眠る

碧落下弦霞浦月     碧落の下弦 霞浦の月 

黄昏水郷筑峰     黄昏水郷 筑峰の烟

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(赤い字は韻:一先 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)
筑峰とは筑波山のこと、霞浦とは霞ヶ浦湖のことです。水郷筑波国定公園です。蛇足