ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 巽 好幸著 「なぜ地球だけに陸と海があるのかー地球進化の謎に迫る」 岩波科学ライブラリー

2018年09月30日 | 書評
地球表面の熱収支

太陽起源から地球進化の謎に迫る、陸と海の関係から読み解く  第13回

5) 終章ー水惑星地球 (その1)

地球には海水があって、陸と海に別れている。これが地球がほかの惑星と決定的に違うことである。そして38億年前からプレートテクトニクスが作動して沈み込みによって地球の内部に持ち込まれた水を媒介として海洋地殻が変質し、同時に安山岩質のマグマを生産していることが最大の特徴です。本書は最初から水ありきからスタートしている。ただし地球全部が水で覆われ陸部が生まれなかったのではない。マントルの対流と地殻のプレートテクトニクスによって海洋地殻が大陸地殻をもたらしたとしている。地球内部構図と地震波伝播速度、および地球内部物質の図からわかるように、地球深部へゆくにつれ温度と圧力が高まり、構成物質はさまざまな層からなる。太陽は太陽系のエネルギー源であり最大の重力源であります。地球内部温度に示したように、地球の内部の温度分布による理解は重要です。マントルの対流に示したように、プレート運動はホットスポット密集域が上昇流、プレートが沈み込む場所が下流域となるマントル対流の一部である。なぜマントル対流が起きるか、それは地球の最深部内核温度が5000度以上あるからです。つまり地球の中心から表面に向けて熱が伝達されています。現時点で地球内部の温度推定法は、地震波不連続面の深さと鉱物の相変化を比較して求められる。鉱物の温度圧力試験の結果から相変化の起きる温度を当てはめるのです。地球内部物質から割り出し温度が地球内部温度となります。地球地殻表層から50kmまで15度から1350度上がり、50Kmから2700KmのD"層まで2300度にあがり、外核に接するD"層の熱抵抗は大きく3800度の温度となります。2900Kmの外核から5100mの内核までに5500度にあがり、内核では温度は5500度一定です。上図に地球表面の熱収支を示す。

(つづく)

読書ノート 巽 好幸著 「なぜ地球だけに陸と海があるのかー地球進化の謎に迫る」 岩波科学ライブラリー

2018年09月29日 | 書評
 地球内部温度

太陽起源から地球進化の謎に迫る、陸と海の関係から読み解く 第12回

4) サブダクションファクトリーーその地球進化における役割 (その3)

プレートが低温であるため、この不連続面で下部マントルは冷却されスピネル相に転移する。冷たいプレートはやがてペロブスカイト相に転移し下部マントルより高密度となり少しづつ漏れ出して落下する。ペロブスカイト相に転移したプレートは更に下部マントルへ落下するというしくみである。プレートが発生する脱水残渣と多量の融解残渣、特に融解残渣の相変化について高温高圧実験を行った結果、364万気圧、6000度(内核の条件)で、周囲のマントル物質よりも高密度になった。島弧地殻の直下から剥落した融解残渣は、その後も落下を続けマントルの底に落ちるのであろう。これを「スーパーコールドプルーム」と呼ぶ。従って脱落する融解残渣の量は大陸地殻の3-4倍の量になり、マントルの底に200Kmの厚さで堆積していると考えられる。下部マントルの底部のD"層を構成するポストペロブスカイト相が出現するのである。この層が、マントルの対流であり、「スーパーホットプルーム」によって一気に地上に噴き上げるホットスポット火山を見てゆこう。地球上の火山活動は海嶺などのプレート発散境界、沈み込み帯などのプレート収束境界、それとプレート内部のホットスポット火山で起こる。ホットスポット火山はハワイ島のようにその起源が地球内部の熱い点にあると考えられている。プレート運動に沿った海山列をなす事、プレート運動と無関係なことが特徴である。海域のホットスポット火山で産する玄武岩の化学組成分析によると、ストロンチウムと鉛の「同位体比」をパラメーターにして分類すると、始原的マントルのほかに、4種類の成分がマントルに存在し、これらをブレンドしたものがホットスポットマグマの起源物質となっていた。Pbの同位体比206/204を横軸に、Srの同位体比87/86を縦軸にとって、火山マグマをプロットすると、始原的マグマPMを中心として、山地によって分類される火山マグマの4種類としてDM(始原的マントル)のほか,EM1,EM2,HIMUがちょうど星形に点在する図が描ける。同位体の年代測定から46億年前にマントルが形成され、25億年前にマントルが分化したことが分かった。マントルが深いところのマグマほど親成分が多く、最上部マントルマグマには娘成分(同位体分解成分)が多いことが分かる。

(つづく)

読書ノート 巽 好幸著 「なぜ地球だけに陸と海があるのかー地球進化の謎に迫る」 岩波科学ライブラリー

2018年09月28日 | 書評
地球内部密度と圧力 

太陽起源から地球進化の謎に迫る、陸と海の関係から読み解く 第11回

4) サブダクションファクトリーーその地球進化における役割 (その2)

マントルの密度を推定する標準的な方法は、地震波の伝播する速度が媒体の密度に依存することを利用して計算することである。この計算モデルをPREMという。地球内部構図と地震波伝播速度から計算した結果、上図に地球内部密度プロフィル(PREM)を示す。地球内部で密度と地震波伝播速度は連動して不連続に変化する。これは構成する鉱物の相変化が原因である。海洋地殻の代表的構成物質である海嶺玄武岩について、マントルの全圧力範囲についてその密度が高温・高圧実験によって別途求められている。観測船で地震波伝播速度プロフィルを測定し、その速度から実験によって求めた密度を対応させ、地球内部密度プロフィル(PREM)を推定する手法である。上部マントルでは海洋地殻は周囲のマントルに比べて重いので、プレートは落下する。海洋地殻は高密度ザクロ石が含まれているためである。ところが670Kmの不連続面である下部マントル境界で状況は一変する。図-12の地球内部物質で示したように、スピネル相がペロブスカイト相に変化することにより密度が一挙に増加するためである。地震波トモグラフィーによると沈み込んだプレートは670Km不連続面あたりで停滞している。相転移しないプレートは周囲のマントルのペロブスカイト相より軽くなって停滞する、つまり下部マントルへ一気に落ち込んでいないのです。この「停滞プレート」が海洋地殻とマントルの密度逆転であります。

(つづく)


読書ノート 巽 好幸著 「なぜ地球だけに陸と海があるのかー地球進化の謎に迫る」 岩波科学ライブラリー

2018年09月27日 | 書評
地球内部物質

太陽起源から地球進化の謎に迫る、陸と海の関係から読み解く 第10回

4) サブダクションファクトリーーその地球進化における役割 (その1)

プレートテクトニクスが始まったのは38億年前と言われる。それ以来沈み込み帯ではずっと大陸を作り続けてきた。この沈み込みによる大陸地殻生産過程を「サブダクションファクトリー」と筆者は呼んでいる。地球内部温度温度に示すように、地表と核の間には3500度の温度差があり、そのためマントルは対流し、熱と物質を運ぶ。海洋プレートが移動することにより、水の他に海底堆積物、海洋地殻、海洋マントルが運ばれる。上図に地球内部物質とその力学的性質を示した。プレートは剛体として動き、地殻やマントルは化学組成が異なる。地殻の玄武岩や花崗岩は高剛性でリソスフェア、その下のマントルはカンラン岩で剛性であるが、マントル上部はアセノスフェアの流動性である。上部マントル層がスピネル層になるとメソスフェアという剛性に変わり、下部マントル層も剛性である。外核は合金の液体で、内核は合金の固体である。大陸の製造工程は第3章の大4段階モデルで示した通りである。

(つづく)

読書ノート 巽 好幸著 「なぜ地球だけに陸と海があるのかー地球進化の謎に迫る」 岩波科学ライブラリー

2018年09月26日 | 書評
地下構造組成探索計画(IBM1-5) 

太陽起源から地球進化の謎に迫る、陸と海の関係から読み解く 第9回

3) プロジェクトIBM-海で生まれる大陸(その3)

こうした結果から筆者らは地殻の進化モデルを次の4段階論で構成した。上図を参考にしながらモデルを説明する。
①島弧玄武岩質マグマの生成と海洋地殻の変質: プレートの沈み込みによってマントルで発生した玄武岩質マグマが固結し、既存の海洋地殻を置き換えながら玄武岩質初期島弧地殻を作り出す。
②玄武岩質マグマの底付と貫入: マントルで発生したマグマが、島弧地殻直下まで上昇し、地殻の底から地殻内へ貫入する。
③島弧地殻の融解と流紋岩質マグマと融解残渣の形成: 弧のマグマはマントルヘッジにおいて、地殻物質のソリダスより高温(1300度)であるため、玄武岩質地殻は部分溶解し、二酸化ケイ素が75%の流紋岩質マグマと約47%の融解残渣に分離する。
④流紋岩質マグマと玄武岩質マグマの混合による安山岩質中部地殻の形成: この流紋岩マグマとマントルから供給される玄武質マグマが混合・固結して代表的な大陸地殻(二酸化ケイ素約60%、深成岩の名は閃緑岩)が作られる。
 このモデルで重要なことは、玄武岩質初期地殻が部分融解して安山岩質の中部地殻を作る過程で、多量の融解残渣が発生することである。生み出された融解残渣は地殻の中に納まっているのではなく、ホモ面を落ちて最上部マントル層に吸収されるのである。IBM弧の地殻構成組成の分析によって、マントルで作られた玄武岩質マグマの固結や再融解とマグマの混合によって、IBM弧では安山岩質の地殻が成長することが分かった。ホモ面は一般に玄武岩質の地殻とカンラン岩質のマントルの境界をなすリジッドな境界である。しかし融解残渣はリークする性質がある。島弧地殻全体は次第に二酸化ケイ素量が増えて、大陸地殻へ進化するのである。この段階では二酸化ケイ素量が少ない溶融残渣が島弧地殻の底に大量に付着している。この層はP波伝播速度の低い層で、まだ大陸地殻とは言えない。この層が剥落して(デラミネーション)、マントルに吸収されなければならない。島弧がさらに大陸を作るには、大陸地殻との合体が必要である。図-1に見るようにIBM弧を乗せたフィリッピン海プレートは、南海トラフからユーラシアプレートの下に沈み込んでいる。これによる歪みが近未来的に巨大地震の原因である。このプレート境界は伊豆半島の北の陸域にぶつかっている。IBM弧が四国海盆に比べて軽いため「本州伊豆衝突帯」で滑り込めずに衝突している。この様子を図―11に示した。衝突帯にある丹沢山地マグマは500年前に作られ、IBM弧は丹沢岩帯に接着されたのである。

(つづく)