ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

民主党政府の意思決定 政務三役(大臣、副大臣、政務官)

2009年12月31日 | 時事問題
朝日新聞 2009年12月31日11時41分
政務官、政治主導牽引 意思決定・指示「すごい緊張感」
 政権交代で最も変わったことの一つは、疑いなく副大臣や政務官の役割だ。自民党政権時代は盲腸と言われた存在が、今や政治主導の牽引(けんいん)役に。特に、中堅・若手が中心の政務官の活躍が目立つ。津村啓介・内閣府政務官、小川淳也・総務政務官、長島昭久・防衛政務官の3人に振り返ってもらった。
政務官制度
政治主導を強めるため、政務次官を廃止して、副大臣と政務官が新設された。政務官は特定の政策について大臣を補佐するとされている。鳩山内閣は大臣、副大臣、政務官を政務三役と位置づけて「政務三役会議」で各府省の意思決定を行っている。政務官は各府省1~3人で、現在は計25人。鳩山内閣の政務官の当選回数は衆院2~4回、参院は1~3回で、中堅・若手の議員が中心だ。
政務官の仕事
取締役会議 大臣が社長、副大臣が専務、政務官はヒラの取締役
事務次官との違い
大臣と事務次官の間に政務官が入って、次官が部下になっているから。意思決定のラインは明らかにシフトした。事務次官はどこまでいっても補助機関。取締役会の一員ではない。
政務三役会議の議論
内閣府は三役会議に事務方を絶対入れないが、その直後に事務方にブリーフする。内部的に記録を残そうと努力している.
政治主導
霞が関の通訳だと思っている。行政を国民目線に変えていくこと。
政治主導の弊害
官僚を抑え込む、たたくというのは、政治主導のメッセージだった。必罰はやったので、いい仕事をしている人には報いる信賞が必要だ。
民主党は政策調査会をなくした
政策決定の政府への一元化を踏まえた上で、党の勉強会や研究会は大いにやるべきだ
小沢一郎幹事長の国会の「革命的な改革」
新しい陳情ルールだと思う。これから国の出先機関をどんどん廃止していく。与党議員は、その代わりになっていくべきだ。
 

JAL 金借りられず年越せず

2009年12月31日 | 時事問題
朝日新聞 2009年12月30日21時24分
日航支援 政府、政投銀に融資枠拡大を要請へ
 日本航空の経営再建問題で、前原誠司国土交通相は30日、日本政策投資銀行に融資枠拡大を要請するなど、政府として日航の資金繰り支援策を強化する考えを明らかにした。前原国交相、菅直人副総理ら関係閣僚は同日、政府として日航の運航継続に万全を期す姿勢を改めて確認した。

朝日新聞 2009年12月30日19時45分
日航株急落、一時60円 上場以来最安値
 経営の先行き不透明感が高まっている日本航空の株価が30日の東京株式市場で急落し、一時、上場来最安値となる60円まで値を下げた。終値は前日よりも21円(23.86%)安い67円だった。 日航の再建策をめぐっては政府や金融機関などが調整中だが、株式市場では法的整理の可能性を織り込み始めたとみられる。

親方日の丸会社JAL 国が助けるのは当然という顔 GMと同じようにまず法的に整理し現経営者を一掃して一時国営化にしたら

医療問題 民主党政権の300日の医療政策を点検する

2009年12月31日 | 時事問題
JMM 第47回(2009年12月30日)「民主党の医療政策を採点する」  東京大学医科学研究所 上昌広 
より


 鳩山内閣が成立してから100日経ち、2009年も終ろうとしています。来年がよき年であるように、「コンクリートから人へ」の新政権の医療政策を点検したい。民主党はマニフェストで医療費の増額と医師の増加を掲げました。

1) 医療費:
予算案では診療報酬本体で5700億円の増額、薬価は5000億円の引き下げ、差し引き700億円(0.2%)の医療費の増額となった。これでも予算削減が一貫して続いた自民党政府より「画期的」な方向転換である。しかし「総医療費対GDP比をOECD諸国並みに引き上げる」ということは絵に描いた餅で、財政の無駄を削減することで、必要な財源を確保するという約束は幻想に過ぎなかった。やはり何らかの負担増の議論が必要であろう。
2) 薬価:
薬価を削り医療報酬にまわすという構造は自民党政府でもやっていることです。これにより日本の医薬品市場は今では世界の10%を切っている。ここまで製薬業界をいじめると、海外移転とドラッグラグ・ワクチンラグ・製薬崩壊も近い。
3) 中医協人事:
診療報酬をきめるのは、国、診療側、健康保険支払い側の三者委員で構成する中央医療審議会である。診療側のこれまでの代表は日本医師会で開業医の代表であった。足立政務官は医師会代表を一掃し、嘉山孝正氏と山形大医学部長や地域医師会代表に切り替えた。利益代表から国全体の政策を審議する中医協に生まれ変わる偉大な一歩と評価できる。
4) 医学部定員増加:
文部省鈴木副大臣は前内閣の舛添大臣の提言を踏襲して、360名の医学部募集枠増をきめた。そして180億円の予算化を行ったことはマイナスからプラスへの画期的な変化である。
5) 新型インフルエンザ対策:
厚労省政務三役は医療体制整備に41億円の予算をつけたが、新型インフルエンザ対策は予防接種法改正やワクチン免責補償法などの整備は喫緊の課題となっている。予防接種法の見直し審議会が立ち上がったが、その委員構成が従来の厚労官僚のいいなりになる旧態依然のメンバーであまり期待はできない。
6) がん対策(子宮頸ガンワクチン問題):
肝炎検査費用205億円を除いては、難病対策は充実していない。子宮頸ガンワクチン「サーバリックス」の任意接種促進では、公費負担打ち出さないと5万円の個人負担では普及しないであろう。それには約200億円の費用が必要である。
7) 高額医療費問題:
慢性骨髄性白血病新薬「グリベック」の経済負担数百億円は今回の予算では盛り込まれなかった。先月11月にがん患者の母・娘が医療費負担に苦しんで無理心中を図るという痛ましい事件が起きたばかりというのに、対応しなかった厚労省は残念なことである。

読書ノート 兵藤祐己著 「琵琶法師ー異界を語る人びと」 岩波新書

2009年12月31日 | 書評
盲目の「琵琶法師」は異界の媒介者、宗教芸能者であった 第4回

序(4)
 山口県赤間関の阿弥陀寺に安徳天皇の陵墓がある。そこに伝わる「耳なし芳一」の話はあまりに有名である。琵琶法師の芳一が壇ノ浦に沈んだ平家の亡霊に毎夜誘われて、安徳天皇の墓の前で「平家物語」を演じさせられるという話である。この話はラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の怪談となっているので読まれた方も多いと思う。平家物語は平家一門の栄華と滅亡を描く語りの文学として成立し、琵琶法師はわが国における中世の声の文化の重要な担い手であった。各地の伝説・民話の多くが座頭(盲人芸能者)の伝えた物語が土地に根付いたという見方を柳田国男は始めて提唱した。「耳なし芳一」の話のヴァリエーションが各地に残っている。徳島県の「耳切れ団一」、高知県の「耳なし地蔵」は明らかに源をひとつにする話である。盲人にとって耳は残された重要なコミュニケーションの器官である。琵琶法師は普通は盲人であった。健人の場合、視覚と聴覚は密接に連動して、眼の焦点のあったところから発せられる音が選別され、不要なものは雑音として排除、抑制される。視覚がない場合、世界はざわめき(雑音)に満ちている。このざわめきは前近代にあっては異界と接触する方法であった。今も残る沖縄の女性シャーマンは精神変調者か、東北のイタコ、近畿のダイサンは盲目のシャーマンである。聴覚と皮膚感覚によって世界を体験する盲目のかれらは、自己の統一的イメージを視覚的(ミラーイメージ)に持たない。主体がこちらとあちらの間を行ったり来たりするという点で、前近代社会では物語や伝承の重要な担い手であった。死霊の祟りが恐れられる「平家物語」、「曽我兄弟」、「源義経物語」も、中世はおもに盲人芸能者によって担われた。盲目の琵琶法師は、たしかにあの世とこの世の媒介者であった。琵琶は法具の楽器として(鐘、木魚、拍子木などと同じ)中国・九州地方に伝統的に残っていたが、他の地方では16世紀以降しだいに三味線に取って代られた。座頭三味線の系譜である。浄瑠璃・文楽はもとは座頭三味線芸から出発した。盲目の琵琶法師はしだいに数が少なくなり1980年代に5名となり、さらに針灸按摩に転業され、最後まで残った熊本県の山鹿良之氏も1996年に他界された。本書の付録のDVDは山鹿氏の演唱を筆者が録画したものである。
(続く)

読書ノート 岩井克人著 「21世紀の資本主義論」  ちくま学芸文庫

2009年12月31日 | 漢詩・自由詩
グローバル市場経済の危機は貨幣経済資本主義の宿命 第8回

ギリシャ神話「パリスの審判」

 ギリシャ神話「パリスの審判」とは、三人の女神(へーラー、アテーナー、アプロディーテー)の美しさを判定する役目をするトロイの王子パリスが、美の女神アプロディーテーとの取引でスパルタ王の妻へレネーを奪って駆け落ちをするというホメロスによって歌われたトロイ戦争を描いた。なぜギリシャ神話が経済学の話題に出てくるのかというと、ケインズが「雇用・利子・貨幣の一般理論」において株式市場における投機家の行動モデルとして「美人コンテスト」を取り上げたからだ。人間の主体的な判断によって美しいとされる近代的な美の原理も取引対象にされ、美は「使用価値」も失った交換対象すなわち商品となった。だれが美人かという個人的価値基準(趣味)から離れ、コンテストで賞金を得ようとする人々は他人が誰に投票するかということの心を奪われる。他人の思惑の無限の連鎖が投機家の動機である。
(続く)