欧州の通貨ユーロの将来を展望する 第11回
3) ユーロの仕組み (2)
銀行間の資金取引の金利(インターバンク金利)は資金の需給関係によって変動するが、中央銀行は物価安定や雇用政策のために適切と思われる政策金利を設定する。資金の供給・吸い上げによって中央銀行は、銀行間市場金利を政策金利へと誘導する。金利を調節する方法として、上限として「限界貸し出し金利」、下限として「預金金利」を見て、「市場介入金利」を上限と下限の±1%内に設定するのである。リーマンショック後にこの貸付残高が500億ユーロから8000億ユーロと桁違いに増加した。世界金融危機の中でECBは巨額のユーロ資金を供給して銀行の流動性危機を回避した。一般に政策金利は不況時には景気刺激のため引き下げられ、好況期には部羽化上昇と景気過熱を抑えるため政策金利は引き上げられる。ユーロは市場介入金利を1998年3%でスタートした。2000年以降原油価格高騰やユーロ相場下落のため政策金利は引き上げられ2001年に4.75%となった。アメリカのITバブル崩壊による深刻な不況になったので、金利は引き下げられ2003年半ばより2%という低金利になった。この低金利は2006年初めまでの2年半維持された。2006年より景気過熱と不動産バブルが懸念されたので金利は4.25%まで引き上げられた。2008年末にはリーマンショック後の世界不況で急速に金利は引き下げられ2009年初めには1%(実質0.25%に誘導)となった。経済危機のため日米はゼロ金利政策を取った。いまなお金利は危機管理に全力を投入している段階である。ユーロ圏の金融政策は本質的にジレンマを抱えている。先進国6カ国だけでユーロ圏を作ったなら単一金利政策で問題はなかったはずだが、南欧や東欧が加盟したため域内格差が顕在した。ある国にとっては金利が高すぎ手不況を深刻化させる一方、他の国では低すぎて景気刺激やバブルの膨張を助長することが同時に起こりうるのである。2001年から成長率の高いアイルランドやスペイン、フランス、イタリアでは消費者物価指数が金利を上回り(逆さや)実質金利はマイナスなった。やがて住宅バブルが発生した。2005年までの長い経済停滞は先進国を低成長に巻き込み、スペイン、アイルランドでは不動産バブルが蓄積した。これを「ジレンマケース」といい、金融政策ではどうしょうもなかった。
(つづく)
3) ユーロの仕組み (2)
銀行間の資金取引の金利(インターバンク金利)は資金の需給関係によって変動するが、中央銀行は物価安定や雇用政策のために適切と思われる政策金利を設定する。資金の供給・吸い上げによって中央銀行は、銀行間市場金利を政策金利へと誘導する。金利を調節する方法として、上限として「限界貸し出し金利」、下限として「預金金利」を見て、「市場介入金利」を上限と下限の±1%内に設定するのである。リーマンショック後にこの貸付残高が500億ユーロから8000億ユーロと桁違いに増加した。世界金融危機の中でECBは巨額のユーロ資金を供給して銀行の流動性危機を回避した。一般に政策金利は不況時には景気刺激のため引き下げられ、好況期には部羽化上昇と景気過熱を抑えるため政策金利は引き上げられる。ユーロは市場介入金利を1998年3%でスタートした。2000年以降原油価格高騰やユーロ相場下落のため政策金利は引き上げられ2001年に4.75%となった。アメリカのITバブル崩壊による深刻な不況になったので、金利は引き下げられ2003年半ばより2%という低金利になった。この低金利は2006年初めまでの2年半維持された。2006年より景気過熱と不動産バブルが懸念されたので金利は4.25%まで引き上げられた。2008年末にはリーマンショック後の世界不況で急速に金利は引き下げられ2009年初めには1%(実質0.25%に誘導)となった。経済危機のため日米はゼロ金利政策を取った。いまなお金利は危機管理に全力を投入している段階である。ユーロ圏の金融政策は本質的にジレンマを抱えている。先進国6カ国だけでユーロ圏を作ったなら単一金利政策で問題はなかったはずだが、南欧や東欧が加盟したため域内格差が顕在した。ある国にとっては金利が高すぎ手不況を深刻化させる一方、他の国では低すぎて景気刺激やバブルの膨張を助長することが同時に起こりうるのである。2001年から成長率の高いアイルランドやスペイン、フランス、イタリアでは消費者物価指数が金利を上回り(逆さや)実質金利はマイナスなった。やがて住宅バブルが発生した。2005年までの長い経済停滞は先進国を低成長に巻き込み、スペイン、アイルランドでは不動産バブルが蓄積した。これを「ジレンマケース」といい、金融政策ではどうしょうもなかった。
(つづく)