ブログ 「ごまめの歯軋り」

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医療問題  診察料の安い日本の医療制度の議論を

2010年05月31日 | 時事問題
JMM 医療に関する提言・レポートfrom MRIC(2010年5月30日)「医師より製薬メーカに優しい日本の医療制度」 多田智弘 武蔵浦和ただともはる胃腸科肛門科 より

 「明細書付き領収書」発行の義務が始まって1ヶ月半ほど過ぎた。アンケートでは「不必要」の声が高いのに、明細書では絶対見えてこないお金の流れがあります。一つは「診察料」と「調剤技術料」の差です。普通の診療では「診察料」は処方箋料を加えても1890円です。調剤薬局の「調剤技術料」は2570円です。日本の医療費に占めている診察料は10%未満であるのに較べて、薬剤代金は約30%です。そして薬剤の納入価格と販売価格の差は微々たるもので、約93%が納入価格で、消費税5%を加えると98%が薬の納入価格です。これでは医療機関にとって逆ザヤに転じかねません。医者は薬で儲けているというのは、過去の話でいまでは損をしかねない。製薬メーカの経常利益率は40-50%で、製造原価は10%以下です。「薬九層倍」ということわざは今も成り立っています。医療界全体でのお金の流れが議論されたことはありません。

読書ノート 小此木潔著 「消費税をどうするか」 岩波新書

2010年05月31日 | 書評
富の再分配と負担の視点より考える 第5回

1)世界経済危機と財政 (2)

 財政法は財政の健全化を維持するため「均衡財政主義」を掲げている。国の歳出は、公債または借入金以外の歳入をもってそ、その財源としなければならない」という。しかしその財政法4条で「公共事業費、出資金、貸付金の財源については国会の議決をへて公債を発行することが出来る」という建設国債の抜け穴を作った。その張本人が田中角栄氏であった。1972年以降は際限なく建設国債が発行された。公共事業は補助金とともに、自民党の政治的基盤を磐石なものとした。1980年以降日本の輸出の伸びによって財政赤字に悩む米国から日本の内需拡大を求められた。「日米構造協議」において1990年430兆円の公共投資計画を約束させられた。1990年の土地バブル崩壊によって、日本は1158兆円の資産を失った。追い討ちをかけるように1997年アジア通貨危機が襲い、橋本・小渕・森内閣で多額の公共事業が繰り返され、土建国家といわれる歪んだ資源配分が固定された。2001年より小泉内閣の予算抑制政策で、日本は20年にわたる長期のデフレに見舞われた。政府の失政がつづいて景気はふたたび悪化し、2001年実質的なゼロ金利政策に復帰した。政治と官僚が犯した経済運営の失敗が近年の在性赤字の主犯であった。この長期デフレによって税収は大きく減少した。1990年に60兆円の税収入があったが、2003年には45兆円に低下し、景気回復によって2008年には税収入は53兆円まで回復した。所得税は1990年26兆円が2003年に18兆円に落ち込み、法人税は1990年16兆円が2003年には8兆円に落ち込んだ。

 財政赤字を決定的にした失政は小泉内閣の法人税、所得税率の税制改革(改悪)であった。法人税の標準税率の引き下げ(43.3%から30%へ)、所得税の最高税率の引き下げ(50%から37%へ)により、1997年の税収入53.9兆円が2004年度に45.6兆円と8.3兆円も減少したのは税制改革による減収である。「小さな政府」は税収を減少させてまで企業と金持ちを優遇したのだ。2008年度には53兆円まで税収入が回復したのに、なお財政が黒字化しない理由は、デフレと税制改革である。この税収入減少による財政赤字を埋め合わせるために消費税の増化が政府と財界で叫ばれたのである。高齢化による福祉費自然増加は主たる要因ではなく、消費税増額のためのアドバルーンである。政府はさらに「税の直間比率の是正」をいう。企業や商店主から取る直接税より、一般から確実に取れる間接税に期待したいのだ。経団連は繰り返し、「規制緩和」と「法人税減税」を求め、その一方で消費税の税率引き上げを求め続けた。外国からグローバル資本を誘致しようとして税制の優遇措置を競うために、国民に消費税の負担を求める図式である。
(つづく)

読書ノート ダーウイン著 八杉龍一訳 「種の起源」 岩波文庫 上・下

2010年05月31日 | 書評
生物の変異が自然淘汰されて優勢な種となる原理 第8回

3)自然選択 (1)


 生存闘争が変異の自然選択に対してどのように作用するかが本章の記述である。有利な変異が保存され、有害な変異が棄てられることを「自然選択」という。ダーウインは「生活条件の変化が、特に生殖系統に作用することによって変異性を生じせしめる」というが、今日ここは多少問題がある。生活条件と生殖器官がダイレクトには結びつかない。生殖系統が変化することが遺伝学の本質(無限大の遺伝子組み換えを可能とする)であって、生活条件がそれを選択しているというべきではなかろうか。ある生物の体の構造や習性において軽微な変化でもそれがその生物にとって有利ならば他の生物より優位に立てるのである。自然選択は役にたつ変異を集積し遺伝することでその生物を変化させるのである。
 生存闘争に関係するものではないが、「雌雄選択」(性選択)は強い雄を残す意味(強力な武器、雌を誘引する美的な体)で重要である。ある動物の雄と雌が一般的な生活習性は同じだが、構造、体色、装飾性において差異を示すのはこの雌雄選択によって生じたと信じられる。

 動物でも植物でも違った変種間あるいは変種は同じだが祖先を異にする個体間の交雑では、強壮で多産な子孫が生じること、および近親間の同系勾配ではそれらの力が弱まることは事実である。便利さからすれば自家受精が一番であるが、子孫を残す方法として自家受精だけではなく、雌雄同体株でも他の個体との交雑は起きるのである。植物では、自然種に近接して栽培すると純粋種を維持することが不可能なくらい、交雑が起きる(違った種間では不稔であるが)。植物界でも動物界でも交雑するのが自然の法則である。
(つづく)

月次自作漢詩 「沙羅初夏」

2010年05月31日 | 漢詩・自由詩
江東五月麦秋城     江東五月 麦秋の城

晴午傷春戴酒行     晴午春を傷んで 酒を戴せて行く

幾日残花蝴蝶恨     幾の日か残花 蝴蝶は恨み
  
沙羅初夏杜鵑聲     沙羅の初夏 杜鵑の聲

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(韻:八庚 七言絶句仄起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)