ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

日本の人口減少傾向明確  政府の少子化対策茶番

2009年01月31日 | 時事問題
朝日新聞 2009年1月31日0時30分
出生率、上位は九州・沖縄の島 最高で都心の3倍
 厚生労働省が30日発表した03~07年の人口動態統計で、1人の女性が生涯に産む子どもの数(合計特殊出生率)を市区町村別に見ると、最も高いのは2.42の鹿児島県伊仙町(奄美諸島の徳之島)だった。最も低かったのは東京都目黒区の0.74。  5年間の全国平均は1.31で、5年前より0.05ポイント低下した。

出生率の予測と人口推計
人口動態は過去数十年の動向で決まり、政府の数年の政策でどうこうなるものではない。将来人口推計とは、人口学で最も実用的意味を持ち、国や地方自治体の経済社会計画と関連した行財政施策決定の基礎資料となる。日本の人口の行方を「国社人研」の2006年度推計より結果だけ示す。1950年から2005年までが実測であり、それ以降2055年までは推計である。合計特殊出産率は2013年まで1.21まで下がり、2055年までに僅か1.264に上がるとと仮設している。2007年より日本の人口は減少傾向になり2055年には総人口は9000万人をきる。65歳以上の高齢化人口は2040年まで上昇し、14歳までの未就業人口は一貫して減少し続ける。100年後には日本の人口は4000万人以下となる。何らかの人口抑制策を講じて2025年にもし人口置き換え水準に恢復したとしても、2080年に人口は8000万人に一定化するが、2050年に人口置き換え水準に恢復した場合は2100年に人口は6000万人で一定化する。


読書ノート 高橋洋一著 「さらば財務省!」 講談社

2009年01月31日 | 書評
財務原理主義から増税・大きな政府を図る財務省 第5回

序(5)

 官僚からなる省庁の代理人たる各省大臣が集合する内閣である「官僚内閣制」は、分担管理原則に負うところが大きい。したがって閣議は省庁の根回しが終わった案件に形式的な追認を与える花押という特殊な署名をする「お習字教室」に変質している。会議としての閣議が機能していないという重大な問題を孕んでいる。閣議の前日に開かれる事務次官会議において反対のなかった案件のみが閣議の議題になるといういわば無責任体制の「官僚閣議」が全てを決めているという戦前の体制が引きずられている。大臣はポストであるので誰もが順番を待っている。大臣の任期は原則1年という慣行もできた。つまり素人大臣が入れ替わり、主体的に動ける経験も見識もない大臣が官僚のお膳立てに乗って言われるままに行動する大臣が出てくるのもやむをえない。議院内閣制の原則が逆転し、省庁官僚制の代理人となってしまうのである。官僚内閣制が省庁代表性を通じて独自の社会基盤を持っていたが、議員は別の形で官僚と内閣の行政権を統制する方法を見つけた。それは与党自民党本部機能の拡大と族議員の隆盛である。日本では「政府・与党連絡会議」というものがある。政府と与党は明確に区別されている。議院内閣制ではでは政府と政権党は一体化されるはずだが、日本では「政府・与党二元論体制」と呼ぶべき仕組みが成立した。自民党で与党活動の中心は政務調査会と税制調査会である。部会は省庁別に組織され法案の審査手続きは所轄官庁の完了が有力な議員に概要を伝え説明することから開始される。政調の部会は政府提出が予定される法案全てを審議する。国会の委員会での法案審議が形式的で実質審議がないのに比べて、自民党政調部会での法案審議は実質的である。官僚が与党に法案説明する国は何処にもない。

医療問題 本田宏 編著 「医療崩壊はこうすれば防げる」 洋泉社新書

2009年01月31日 | 書評
医療現場から再建の道を探る八人の医師の提言 第6回

5、「高齢者医療・介護病床削減に取り組む」 安藤高朗 (永生病院)

 厚生労働省は2006年に医療保険型・介護保険型病棟のベット数を削減する目標を立て、2012年度までに現在の療養病床38万床を15万床に削減するという政策を打ち出した。療養病床とは「主として長期にわたって療養を必要とする患者さんを入院させる病床」であって、不要不急の入院患者が何もしないで社会的入院をしているのでない。この社会的入院患者を追い出して老人保健施設・特別養護老人ホームの施設や、在宅介護を利用させれば、医療費が削減できると厚生労働省は期待した。これは医療費から介護への立て替えにすぎない。支払う保険が医療保険から介護保険に変わるだけである。同じ厚生労働省扱いである。担当者が違うだけだ。そして老人保健施設・特別養護老人ホームの入所待ちは3年以上は必要である。これでは追い出された老人は路頭に迷う。この発端は2005年度郵政選挙後に小泉純一郎政権が打ち出した医療制度改革にある。2006年には史上最大の診療報酬引き下げと医療制度改革関連法案をどさくさに紛れて殆ど無審議で衆参両院を通過させた。これについては民主党の取り組み姿勢にも大いに問題があった。厚生労働省には国民の健康と生活を守る使命・機能があるはずだが、財政諮問会議や財務省からの圧力に態もなく屈して、最初から「削減ありき」の財政至上主義で「医療改革」(改悪)を進めたのでは、国民の健康は守れない。

 療養病床38万床から15万床に削減するという政策は、最初からデーターを捻じ曲げて解釈し、医療の必要性はないのが50%、介護入院を必要としないを30%と強引に読み替えている。官僚の悪智恵にはいつも舌を巻く。白を黒と言い換える事を恥とは思わないらしい。この削減で厚生労働省は約3000億円削減できると見積もった。約33兆円の国民医療費を3000億円削減しても0.1%に過ぎない。効果の割合に対して被害は甚大である。官僚の頭にはイギリスのサッチャー首相の医療改革が下敷きにあるようだが、サッチャーの新保守主義政策により医療費削減と市場原理主義によって、医療は荒廃し医師不足と診察待ち時間が1年以上という事態は正常な医療制度ではない。日本の現医療制度こそ世界の先進国は見習うべきであるのに、なぜ悪例を真似するのだろうか。どこまで悪くすれば国民の怒りが爆発するかどうかを量っているようだ。2006年度からスタートした療養病床の削減で,介護型療養病床を退院させられた患者は何処に言ったかというと、40%は自宅療養へ戻され、43%は一般病棟、医療型療養病床など、15%は老健施設・特老施設などに転院した。病院の50%が療養病床を持つ「ケアミックス病院」であり、実は療養病床で経営は息をついで来たのである。この療養病床は削減されたら病院の経営は益々苦しくなる。介護難民を防ぐには一つに医療型療養病床を増やす事、第二に転換型老健施設の医療機能を高める事と必要な報酬が確保される事である。


自作漢詩 「寒江冬景」

2009年01月31日 | 漢詩・自由詩
渚煙白鷺泛寒     渚煙に白鷺 寒州に泛ぶ

沙岸蒼茫水自     沙岸は蒼茫として 水自から悠なり

短草疎疎随地合     短草は疎疎として 地に随って合し

長江漠漠著天     長江は漠漠として 天に著て流る

●○●●●○◎
○●○○●●◎
●●○○○●●
○○●●●○◎
(赤い字は韻:十一尤 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)