ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

BSE(狂牛病)リスク問題

2006年06月14日 | 時事問題
6月14日 日経ネット 米産牛肉の輸入再開、来週にも決定

「日米両政府は来週にも、米国産牛肉の輸入再開の具体的な手続きを詰める協議に入り、輸入再開を決める見通しだ。全国10カ所で予定した消費者らとの意見交換会は14日の東京を最後に終わるが、米施設の事前査察など日米で大筋合意した再発防止策に、政府は一定の理解を得ているとみている。米国産牛肉が国内に入るのは早ければ7月下旬になりそうだ」

[ごまめコメント]
米国牛肉輸入問題を考える上で重要なことはリスク論である。日本人は潔癖主義者が多いせいかファジーなリスク論は理解されない。しかし亡霊のような杞憂におびえていても仕方ない。
日本では本年17頭目のBSE牛が発見されたということであるが、今後はさらに増え続けるのだろうか。それを予測するのがリスク論である。私のホームページの環境問題書評コーナーでかって池田正行著「食のリスクを問い直す-BSEパニックの真実」ちくま新書(2002年8月初版)の書評を行った。日本での牛海綿状脳症(BSE)と変異クロイツフェルトヤコブ病(vCJD)のリスクを以下のように纏めた
BSE,vCJDの発生件数各国統計とBSEに関する行政対応から、日本での発生件数点推定を計算する。人口7500万人の英国でこれまで18万頭のBSEが発生し、英国での患者数(死亡者数)は117人である。東大吉川教授は日本のBSE発生予測値を20~26頭とした。日本の人口は12700万人であるので、潜伏期間を10年とした最悪のシナリオでは2.8人のvCJD発生が予測される。
しかし機械的回収肉(MRM)と呼ばれる脳脊髄混入の危険性が高い処理法が英国で採用されていた事実を考えると、英国在住経験のない日本人にBSEを原因とするvCJDが発生する確率は実質的にゼロに等しい。ハイリスク群は1990年代前半英国在住経験者のみである。
ハイリスク群は1990年代前半英国在住経験者のみであるとされるので、政府は1990年代前に一日でも英国に滞在したことのある人からの献血を禁止した。この期間私も数週間英国に滞在したので当然献血はできない(年齢からしてもできないのではあるが)。
アメリカ、オーストラリアにおけるリスクは日本と同等である。問題はリスク対応策のセンスであろう。そこを米国政府は日本のヒステリックな対応を非科学的と主張している。米国産はあぶなくてオーストラリア産は安全というような線引きはない。全数検査を義務つける対応策は後手後手に回った日本農水省と厚生労働省のBSE対応策の最後の手でしかなかった。米国は牛肉加工工程を日本側にオープンにすることで決着したかのように見えた矢先に、あのような無神経な骨混入事件が発生した。今度こそは日本側も主体性を持って米国加工工場への立ち入りを強化し、安心を確保すべきであろう。すると日本の全数検査は無駄な出費になり、これが益々牛肉生産業者のコストを圧迫する。冷却期間をおいて、ここで全数検査などということは見直すべきではないか。

「グーグル明解検索術」(宝島社新書) 面白いよ!

2006年06月14日 | 書評
最近「WEB進化論」を読んで新しいWEBの潮流を作ったグーグル革命に関心を持った。既に読まれている方も多いとは思いますが、梅田望夫著「WEB進化論」(ちくま新書)は私のホームページの書評欄で取り上げているので参考までにみてください。検索サイトはヤフーなどのサーバーはディレクトリー型で人の判断で関連付けられる。これに対してグーグルは検索エンジンがロボット型で相互リンクを重視した関連付けを行っている。(学術文献の価値を論文引用回数で決めるのと同じやり方)&、orやコマンド検索などの検索テクニックなどはいうに及ばず、特に面白いのはグーグルアースというローカル地図情報を抜け出して衛星画像から関心のある地域の3次元写真がみられることだ。これで世界は丸見えだ。最後にグーグルツールバーをインストールしておくといつでも作業中に検索できるので極めて便利。これでWEB2時代へ移行だ

シンドラー社エレベータ事故

2006年06月14日 | 時事問題
6月13日朝日.com ブレーキのボルトに緩み 死亡事故エレベーター
「東京都港区の公共住宅で、都立高校2年の男子生徒(16)がエレベーターに挟まれ死亡した事故で、事故機のブレーキの部品を留めるボルトの締め付けが緩んでいたことが、警視庁の調べで分かった。同庁はこの緩みが事故につながった可能性もあるとみて、慎重に鑑定を進めている。」
6月14日朝日.com シンドラー社、住民説明会に出席 本部責任者は姿見せず
「東京都港区の公共住宅で起きたエレベーター死亡事故で、製造元のシンドラーエレベータ(東京都江東区)幹部が13日夜、初めて住民説明会に出席。2時間半以上にわたって住民への対応の遅れについて謝罪を繰り返した。だが、来日している本部の責任者は姿を見せず、「責任のある立場の人が謝罪すべきだ」といった不満の声も出た。」
6月14日朝日.com シ社、入札「より安く」で浸透 自治体は困惑
「東京都港区で高校生が挟まれて死亡したエレベーターの製造元・シンドラー社は、官公庁の入札で同業他社に比べて安値を提示して実績を伸ばしてきた。国内シェアは1%程度とされるが、官公庁に限ればその割合を大きく上回る。「税金を使う以上、より安い方を選ぶのは当然」としてきた自治体は、今回の事故に戸惑いを隠せない。」

[ごまめのコメント]
今、シンドラー社のエレベータによる高校生死亡事故報道が盛んに同社を攻めているが、ここで一息ついで他のエレベータはどうなんだと問いたい。シンドラー社のエレベータ販売シェアーは世界第2位といわれるので、納入と稼動数は大変な数に昇るだろう。安かろう悪かろう(石原都知事発言)ではシェアートップにはなれない。それなりの技術力があっての実績と受け止めるのが常識であろう。そしてかつ公共機関への納入に談合らしきものはないというのも実力の現れであろうか。談合の馴れ合いで利益を上げてきた日本企業の体質に比べれば立派な態度である。日本のエレベータメーカーとして三菱電機、東芝、日立の事故暦調査は現在国交省がやっていることであろうが、恐らく公表はされないだろう。統計を取ってみれば歴然とするであろうが、シンドラー社の事故数が断然高いことは恐らくありえない。ただ死亡事故に繋がったことは残念である。メディアもこの際総合的な事故統計を公表するよう国に働きかけることを私は提言したい。なぜ高校生が後ろ向きのまま出ようとしたのか、前を向いて出ようとすればドアーや上下関係の異常に気付いて回避できたのではなかろうか、返す返すも残念だ。シンドラー社を叩くのは簡単だ。しかしその後に官が待ってましたと躍り出て、官主導の国産メーカ談合が再開され、もっと悪い情況になるのが目に見えているだけにメディアに慎重さを要求したい。