ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 長妻昭著 「消えた年金を追って」  リヨン社

2008年06月05日 | 書評
「ミスター年金」衆議院議員長妻昭氏が国会で暴く 第5回


問題の原因

 問題のある納付記録にはどのようなものがあるのだろうか。①統合されていない記録、これは本人が気付いて申告する必要がある ②入力ミスでデータが壊れている記録、これでは検索ができない ③コンピュータになくて紙台帳のみにある記録、紙からコンピュータ入力漏れか間違いがあるばあい  ④コンピューターに存在するが受給額を決定する情報(納付年月日、標準報酬月額)が未入力か間違いがあった記録 ⑤コンピューターや紙台帳から完全に消えている記録、本人の領収書以外に証明する手はありません。職員による横領のケースも含まれます。社会保険業務センター(三鷹)のNTTデータに記録されている納付記録は約三億件です。社保庁はあきらにしないが、本書では基礎年金番号のみの記録が1億件、基礎年金番号に統合された記録が1億5千万件、未統合記録は5000万件ですので、合計3億万件という数になる。すると6件に1件が未統合と云う比率となります。1億156万人の基礎年金番号通知のさい、未受給者に複数の年金番号を持っている人をアンケートしたところ916万人いたそうだ。だが既に受給している人にはこのアンケートは配られなかった。統合が進まない原因にはデータの入力ミスがあります。入力作業の杜撰さ、ダブルチェック体制不備、監督不十分のままの委託業務がミスを招いた大きな原因と思われます。厚生年金の場合。企業主が保険料を社会保険庁に納めていないケースもある。平成18年8月21日から12月28日までに社保事務所に記録に抜けがあると相談にきた人のうち10858人は証拠不十分で却下されたが、84人は領収書を持参したの記録訂正を求められた。なおこの84人について社保庁が紙台帳まであたった結果29名の記録が見つかった。平成18年8月21日から平成19年3月31日までの苦情相談で、記録が完全に消えてしまったケースが235人いました。この原因を社保庁は、20歳で自動的に国民年金資格取得になっていない人、厚生年金から国民年金の資格取得になっていない人、市町村から社保庁への通知漏れなどの原因を想定している。国民年金は領収書があるのが、厚生年金の場合は領収書はないので事態は一層深刻だ。平成18年8月21日から平成19年2月2日までの相談者で却下された人は13933人いるが、厚生年金者が10994件、国民年金者は2939人です。厚生年金者は国民年金者の3倍以上です。平成19年6月12日に野党の要請で実施された国民年金サンプル調査結果が出てきた。ランダム抽出で3091件のサンプル調査では9件の入力ミスがあった。これを国民年金3200万件に単純拡大すると41000件のミスがあることになる(データの恣意的却下がなければ)。

余りに数値が羅列されたので、分りやすいように数値をまとめる。
1)統合されていない納付記録   5095万件  国民年金:1128万件 厚生年金:3966万件
2)氏名欄が空欄          524万件
3)生年月日が特定できない    30万件
4)社保庁に記録がなかったが本人の領収書で訂正できた  235人
5)相談したが却下された      35786人(平成18年8月21日から平成19年6月30日まで)
6)受給額が受給途中で変更   21万件(平成13年から平成19年2月末まで6年間)
7)58歳通知で訂正要求をした人 41万人

読書ノート 国貞克則著 「財務三表一体理解法」  朝日新書

2008年06月05日 | 書評
損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書のつながり 第8回 最終回

財務分析指標 (2)

 キャッシュフロー計算書CSはなかなかの優れものらしい。ごまかしが難しいうえに、会社の状況や戦略的な立場がある程度分る効用がある。(営業CF,投資CF,財務CF)を各々(+-)でみると次のような会社の特徴の八つのパターンが見えてくる。ここで営業CFが+と言うことは本来業務で利益が出ていることで企業にとって一番重要なことである。投資CFが-ということは設備投資や有価証券を買っているこになり、+は固資産や有価証券を売却していることになる。財務CFが+と言うことはお金を借り入れていることで、-は借入金を返済していることである。

(+、+、+):利益を出してなお借り入れを行い現金を増やしている。固定資産や有価証券を売却している。将来さらに大きな投資のため金を集めているようだ。
(+、+、-):利益を出して、固定資産や有価証券を売却して現金を生み出し、借入金を返済している。財務体質の強化の段階にある会社だ。
(+、-、+):営業活動で利益を出した上に借入金で現金を増やし、投資を盛んに行っている。将来戦略も明確な優良企業のパターン。
(+、-、-):営業で上げた利益を投資に当て、借入金を返済している。潤沢な剰余利益のある企業である。
(-、+、+):営業赤字を借り入れや固定資産や有価証券の売却でまかなっている。問題企業の一般的なパターンである。
(-、+、-):営業赤字を借入金返済と固定資産や有価証券の売却で切り抜けようとしている。過去の大きな蓄積を切り売りして事業を継続するパターン。
(-、-、+):営業赤字だがさらに借り入れと株発行によって、設備投資をおこなっている。よほど魅力的な将来計画があるのだろうか。
(-、-、-):営業赤字だが設備投資を行い、借入金を返済している。信じられないほどの過去の自己資本蓄積がある会社のやれること。

文芸散歩 「平家物語」 佐藤謙三校註 角川古典文庫

2008年06月05日 | 書評
日本文学史上最大の叙事詩 勃興する武士、躍動する文章 第59回
平家物語 卷第十

屋島院宣
院宣の使い御坪の召次花方は二月二十八日に屋島に到着した。平家の歴歴が院宣を聞かれた。人質中将重衡と三種の神器との交換条件であった。

請文
大臣平宗盛と二位殿および新中納言知盛は、このような交換条件は受け入れられないとして、二月二十八日付けの返書(請文)を書いた。請文の文面はそれなりに筋が通っており、少しも臆することなく堂々と思うところを述べている。結局は武力が決することになるのだが、丁々発止の受け答えが凛凛しい。

戒文
院宣の結末は推し量られる所であったが、中将重衡は出家を土肥次郎に伺い出た。九郎判官義経は兄頼朝の許可なしには出来ないとこの要請を拒否した。そこで黒谷の法然坊に形だけの戒を受けた。奈良炎上は中将重衡一人の罪業といえど浄土に向うことは出来るのだろうかと法然坊に問うた所、称名一筋で救われる(念頭称名常懺悔)往生疑いなしと云うありがたいお話を頂き、出家しなくとも戒を保つことはできるので形ばかりの剃刀を当てて十戒を授かった。中将重衡はお布施に清盛公の硯「松陰」を法然坊に渡した。

自作漢詩 「梅雨到来」

2008年06月05日 | 漢詩・自由詩


村村水漲大江     村村水漲る 大江の隈

橋畔蓮花香暗     橋畔の蓮花 香暗に催す

南北東西梅雨裡     南北東西 梅雨の裡 

不知柳渚杜鵑     知ず柳渚に 杜鵑悲しむ

○○●●●○◎
○●○○●●◎
○●●○○●●
●○●●●○◎
(赤い字は韻:十灰 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)

CD 今日の一枚 オルフ 「カルミナ・ブラーナ」

2008年06月05日 | 音楽
オルフ 「カルミナ・ブラーナ」
小沢征爾指揮 ベルリン・フィルハーモニー ベルリンシュターツ&ドム少年合唱団 晋友会合唱団 
エディタ・グルベローバ(ソプラノ)エイラー(テノール)ハンプソン(バス)
DDD 1988 PHILIPS

昨日と同じ曲で、演奏者が異なるだけ。この曲は中世の歌曲というよりは、素材をカルミナブラーナにとった現代管弦楽曲である