ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 長妻昭著 「消えた年金を追って」  リヨン社

2008年06月04日 | 書評
「ミスター年金」衆議院議員長妻昭氏が国会で暴く 第4回


問題追求ー官僚の隠蔽体質 (2)

平成9年1月よりすべての年金保険加入者に一人ひとつの番号である基礎年金番号がつけられました。職を変えた場合複数の番号を持っていた人の統合漏れが先ず考えられます。議員の調査要求に対して社保庁は最初統合漏れはないとの一辺倒で寄り付く島もなかった。ところが平成18年6月16日、国会の衆議院厚生労働委員会で「消えた年金」問題を追及する機会がやってきた。質問に立ったのが長妻昭氏であった。65歳以上で基礎年金番号に統合されていない記録は約2300万件であることがわかった。未統合記録全体数を要求して平成18年8月11月20日にやっと数字が出た。65歳未満の未統合記録数は約2700万件、さきの65歳以上の未統合記録数2300万件とあわせて、約5000万件と言う数値を社保庁は認識したことになる。平成19年1月29日の衆議院本会議で民主党松本氏の質問には、安倍前首相は悠長な姿勢でまだ事態の深刻さには気がついていないような感じであった。平成19年2月14日の衆議院予算委員会での緊急事態宣言を要求する長妻氏の質問に、安倍前首相は「緊急事態宣言をすべての被保険者にだす、これは年金制度そのものに対する不安をあおる結果になる危険性がある」と官僚特有の愚民政策答弁を繰り返した。平成19年2月17日、日経新聞朝刊一面に5000万件の数値が始めて報道された。社保庁の官僚は火消しに躍起となり「問題はない」と説明に走り回ったようである。平成19年五月8日衆議院本会議で長妻氏の質問にたいして安倍前首相は「すべての保保険者、年金受給者に納付記録を点検してもらうことは、大部分の記録が真正であるので非効率的だ」と対策は不要といわんばかりの官僚答弁書を丸呑みしていたようだ。慌てた政府は5月25日「年金時効撤廃法案」を強行可決した。ところがこの強行可決で幕引きを図ろうとしたにもかかわらず、毎日新聞が5月27日に内閣支持率調査結果「内閣支持率11%急落、最低の32%」で安倍内閣を動かした。この間の安倍内閣の態度は批判をする者は敵とするような自信のない攻撃的なものであった。既に問題提起から1年たって「年金記録問題検証委員会」が設置された。

読書ノート 国貞克則著 「財務三表一体理解法」  朝日新書

2008年06月04日 | 書評
損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書のつながり 第7回

財務分析指標(1)

 よく利用される主要な財務分析指標は大きく分けて、「成長性」、「収益性」、「安定性」である。
「成長性」指標はPLの数値を期間比較すれば分る。会計は前期と後期の分けられるので、比較は前年度同期比較となる。売上高や利益が±%で書かれる。
「収益性」指標:売上高経常利益率、総資本経常利益率、ROA=営業利益/平均総資本(6%以上なら優良)、ROE=当期純利益/自己資本が用いられる。
「安定性」指標:流動比率=流動資産/流動負債(150%以上なら適正、100%未満は危険)、当座比率=当座資産/流動負債(80%未満は危険)、自己資本比率=自己資本/総資本、固定比率=固定資産/自己資本(100%以内が理想、200%以上は危険)、固定長期適合率=固定資産/(自己資本+固定負債)(120%以上は要注意)、有利子負債倍率=有利子負債/自己資本(0.4以下が優良、2倍以上は危険)、債務償還年数=有利子負債/(営業利益+減価償却費)(1.5年以下は優良、10年以上は危険)
上場会社の有価証券報告書はEDINET(https://info.edinet.go.jp/EdiHtml/main.htm)で見ることが出来る。各業界の財務分析指標標準値はTKC(http://www.tkcnf.or.jp/)で見ることが出来る。是を使って会社の経営分析の演習をしてみよう。

文芸散歩 「平家物語」 佐藤謙三校註 角川古典文庫

2008年06月04日 | 書評
日本文学史上最大の叙事詩 勃興する武士、躍動する文章 第58回

平家物語 卷第十

首渡
寿永三年二月七日の一の谷出の戦いで討たれた平家の首が、十二日に都に入った。六条河原にて大夫判官仲頼ら検非違使たちは平家の首を受け取り、獄門にかけた。小松の三位中将維盛卿の北の方と六代御前の隠れ住む大覚寺では、その首の中にわが殿がいないかどうか心配でならなかった。従者斉藤五・斉藤六に確認させたが三位中将の首はないとのことであった。風の便りには三位中将維盛卿は讃岐の屋島に逃げられたということであった。三位中将維盛卿は都の残した妻子のことが気がかりでいても立っても居られず、手紙を妻子に宛てて送った。返事の手紙を見ては又涙のことではあった。

内裏女房
十四日生け捕りの本三位中将重衡が都に入った。警護は土肥次郎実平三十騎で八条堀川の御堂に入れた。法皇より蔵人左衛門権佐定長を使いとして「屋島に帰りたければ、三種の神器を都に返すように屋島の平家に手紙を書け」と云うことであった。中将重衡は院の宣旨をむげに退けることも出来なく、無駄とは思いながら前内大臣平宗盛と二位殿(清盛の妻、重衡らの母親)に手紙を書いて院の意志を伝えた。院宣の屋島への使いは御坪召次花方、三位中将の使いは平三左衛門重国であった。ここで話が本三位中将重衡と昔通った内裏の女房との恋歌物語に変わる。昔本三位中将重衡の侍従で今は八条女院の仕えている木工右馬知時を仲介にして、土肥次郎の許可を得て手紙を内裏の女房(民部卿入道親範の娘)に送った。更に恋心はエスカレートして女房が中将重衡に車で会いに来て別れを惜しむと云う濡れ場を四首の歌を挿み恋物語風に語られるのである。無骨だけの源氏に対して平家の公達は優雅な人が多いとでもいいたいのだろうか。こういうところに平家物語の文学性が出てくる。

自作漢詩 「雨過夏景」

2008年06月04日 | 漢詩・自由詩


冷雨初過爽気     冷雨初めて過ぎ 爽気清に

玉波蕩漾一江     玉波蕩漾 一江平なり

青苗郁郁野田潤     青苗は郁郁と 野田潤い 
  
首夏西風村墅     首夏西風 村墅晴る


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(赤い字は韻:八庚 七言絶句仄起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)

CD 今日の一枚 オルフ「カルミナ・ブラーナ」

2008年06月04日 | 音楽
オルフ「カルミナ・ブラーナ」
ガンゼンバウザー指揮チェコスロバキア交響楽団 スロバキア合唱団 
E.エニソヴァ(ソプラノ)ドレザル(テノール)クズニエル(バリトン) 
DDD 1988 NAXOS

11世紀から13世紀にかけて、ゴリヤードといわれる放浪の下級聖職者や学生が横行していたという。彼らは反体制派で既成の道徳秩序を無視したアウトローであったが、愛の歌や酒の歌などをラテン語で高唱し騒ぐのが常であった。それらゴリヤードの歌曲の幾つかは「カルミナ・ブラーナ」という歌曲集によって今日に残っている。それらの歌曲の旋律を書き記したネウマ譜は解読不明で、現代では再現不可能である。しかしドイツの作曲家カルル・オルフ(1895-1982)は、独特のリズムと管弦楽法によって、このカルミナ・ブラーナの再現?創作を試みた。さていかがかな