ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

ゴッホの黒猫のいる「ドービニーの庭」の絵のなぞ

2008年06月16日 | 時事問題
asahi.com 2008年6月16日8時44分
黒猫は消されたのか ゴッホの絵に放射線のメス 広島
 上の写真は左下に黒猫が描かれたスイスのバーゼル美術館寄託の「ドービニーの庭」を示す。同じ題名が付いたゴッホ(1853~90)の2枚の作品「ドービニーの庭」。スイスのバーゼル美術館にある絵には描かれた黒猫が、広島市中区のひろしま美術館所蔵の絵にはいないのはなぜか。吉備国際大学文化財総合研究センター下山教授はが15日、同美術館の調査に協力し、放射線を使った分析を始めた。 問題の部分に青色絵の具の成分となる鉄の元素が含まれていた。

ゴッホの「黒猫」は弟夫婦の家庭から離れるゴッホ自身だと云う。
「ゴッホの手紙」に書かれているように、ゴッホの生活の面倒を見たのは、弟夫婦であった。生涯1枚しか自作の絵が売れなかったゴッホは絵の具代から生活費、療養費まで全面的に画商であった弟夫婦に頼っていた。いわば寄生虫であったゴッホが己の生活を恥じて、弟夫婦の住む家(ドービニー)から逃げ出す猫に自分を例えた。一枚の絵の庭には猫(ゴッホ)がいるが、もう一枚の絵には猫(ゴッホ)はいない。形跡はあるように匂わせている。弟夫婦にとって厄介者であったゴッホが弟の庇護から消え去る事は現実には出来なかった。絵画としてはバーゼル美術館の絵のほうが、空や木の茂みにゴッホらしい渦巻状の筆の流が顕著である。

脱官僚 新政策集団を結成!

2008年06月16日 | 時事問題
asahi.com 2008年6月16日3時2分
「脱藩官僚」が政策点検集団 脱・官僚国家目指し発足へ
 中央省庁を退職し、官僚主導の政治に批判的な「脱藩官僚」が、政策集団を結成することになった。政府が打ち出す政策を点検し、官僚による「骨抜き」をあぶり出す狙い。近く発起人会を立ち上げてメンバーを公募し、8月下旬にも召集される臨時国会前に設立総会を開く予定だ。
 設立趣意書で「多くの政治家が官僚の手のひらの上で踊っている」と指摘。将来は霞が関と対抗するシンクタンクを目指す。 当面は消費者庁設置法案や、公務員の再就職を一括してあっせんするため秋に新設される「官民人材交流センター」(新人材バンク)に照準を合わせて点検する。
 ■「官僚国家日本を変える元官僚の会」の発起人
江田憲司 衆院議員(52)旧通産省=代表
寺脇研 京都造形芸術大教授(55)文科省
高橋洋一 東洋大教授(52)財務省
上山信一 慶大教授(50)旧運輸省
福井秀夫 政策研究大学院大教授(49)旧建設省
木下敏之 元佐賀市長(48)農水省
岸博幸 慶大教授(45)経産省
石川和男 新日本パブリック・アフェアーズ上級執行役員(42)経産省

面白い企画だが、自分達はエリートだとして官僚にこだわっている以上は官僚に吸収されるのではないか 国民的視野に立てないのか?

読書ノート 河野稠果著 「人口学への招待」  中公新書

2008年06月16日 | 書評
人口学は人口減少と少子・高齢化をどこまで解明したのか 第8回

出生率低下と社会経済的要因

現在の少子化問題を考えるには、社会経済の発展がなぜ出生率の低下になるのか理解しなければならない。社会経済的な出生力理論では、人口転換理論のほかに、五つの仮説がある。

1)合理的選択ー新古典派経済学的アプローチ
子供を持つコストベネフィット原理から経済合理性の枠内で説明する仮説である。新家政学派とも言われる。途上国から先進国の転換過程をよく説明するようだ。子供を生むことで働く機会を失う「機会費用」、「時間の経済学」で議論される。この考えは先進国の少子化対策の根拠となっている。子供の養育コストの引き下げ・補助、女性の育児と就業の両立援助などである。しかし「機会費用」などを定量化することが困難である。心理的、社会的圧力は定量化できないのである。
2)総体的所得仮説
夫婦の世代が子供時代に置かれた経済状況と将来の生活の見通しとの比較が、家族計画を決定すると云う論である。相対的なコーホート規模(世代)での経済生活の落差が子供を生むことへの不安、安心を決めると云う。出生力決定要因モデルがいろいろ構築されたが、過去を説明しても将来の予測にならないことがわかった。
3)リスク回避論
現状では将来が不透明で良く分からないために、そのようなリスクは負いたくないので産み控える。リスク回避の行動が晩婚化・非婚化、晩産化につながると云う。政策としては「母親に優しい社会」を整備することになる。
4)価値観の変化と低出生率規範の伝播・拡散論
第二の人口転換論では、個人の権利の獲得と自己実現が最も重要な価値として強調される。もはや親は子供の犠牲になる必要はないと云う価値観が共通の社会構造間で伝達し広まることが急速な少子化につながったと云う論を、英国・米国・オーストラリアのアングロサクソン族の共通認識から説明した論である。しかし価値観の伝達が主要な要因とはいえない。
5)ジェンダー間不公平論
伝統的な家族制度と男女間分業制が残っている国ほど出生率が低いと云う論である。女性が自由と権利を主張すれば、女性は結婚を忌避し、結婚しても子供を生まない傾向になると云う。自由な女性像が確立している北西ヨーロッパではそれ以外の欧州各国と比べて合計特殊出産率が高いと云う調査結果に基づいた論である。英国,フランス、スウェーデンなど北西ヨーロッパでは合計特殊出産率が1.8ー2.0、ドイツ、イタリア、スペイン、東欧などでは合計特殊出産率は1.2-1.5であった。しかしこの見解への対応政策は一切が効果はなかった。自由とか権利意識はどうもいい加減で判定に苦しむからだ。

文芸散歩 「平家物語」 佐藤謙三校註 角川古典文庫

2008年06月16日 | 書評
日本文学史上最大の叙事詩 勃興する武士、躍動する文章  第70回

平家物語 卷第十二

重衡被斬
伊豆にとどめ置かれた本三位中将重衡卿を南都の衆がしきりに要請するので、ついに伊豆蔵人大夫頼兼を警護にして奈良に送られた。大津からは都へ入らず、山科から醍醐寺を経由して日野の地に通りかかった。そこには壇ノ浦で生け捕りにされた北の方が旧里に帰って姉の大夫三位とともに住まわれていた。重衡は日野で北の方と最後の尽きせぬ別れを惜しまれてたと云うことが、二首の歌物語に涙とともに記されている。奈良の衆徒側では焼く討ちの張本人を南都に入れず、木津川で切り捨て、首を般若寺の門の前に曝した。北の方は東大寺の重源にいって首を貰い受け、骸を木津河原から引き上げて、法界寺にて荼毘にふし、墓を日野にもうけられた。

大地震
こうして平家が滅び、源氏の世の中になった安堵していた矢先、七月九日うしの刻に大地震がおきた。都人はこれを平家の怨霊のなせるわざと恐れた。付に紺掻の沙汰がある。頼朝に平家打倒の蜂起を勧めた高尾の文覚上人が、父の左馬頭義朝の召使紺掻と云う男が東山円覚寺に深く隠しておいた義朝の首をその男と二人して鎌倉に運んだ。源二位頼朝は父の首を喪服で迎え勝長寿院を建てて源氏一族の氏寺とされた。そして勅使左少弁兼忠より、父の墓に内大臣正二位を受けられた。

自作漢詩 「江村水漲」

2008年06月16日 | 漢詩・自由詩


梅肥四面碧田     梅肥え四面 碧田田

麦熟連陰雨沛     麦熟し連陰 雨沛然

乳燕高低雲似墨     乳燕高低 雲墨に似る
 
鳴蛙遠近水如     鳴蛙遠近 水天の如し

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(赤い字は韻:一先 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)