ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 北岡伸一著 「国連の政治力学」  中公新書

2008年06月22日 | 書評
国連活動は国際政治の場ー日本常任理事国入り失敗をふまえて 第2回

 日本には建前として「国連中心主義」と云う言葉があるが、実際はアメリカ中心主義であって、国連を第一に考えたことは一度もなかった。自国の利益より国連の理想を第一に考える国はいない。そう云う意味では、国連では外務省の国連代表部は短期・長期の国益を第一に行動する国家主義者の集団である。ある意味では旧ソ連や中国といった共産圏国家は国連の金と総会の場をうまく利用して国連中主義活動をしていた。アメリカは伝統的なモンロー主義から国際連盟にも参加せず、第二次世界大戦後は無傷のまま世界一の覇権国家となったので、アメリカシステムと国連活動のジレンマに悩んでいた。常任理事国ながら国連軽視主義的態度はここから出ている。国連負担金は22%と一番多いが(日本は二位の16.6%)が、世界の憲兵といわれながらPKO派遣人数は少ない。アメリカの意向を無視しては国連は何一つ出来ないが、総会の決議は一国一票で極めて平等である。はたして国連は理想主義的存在で無力なのか。確かに安全保障では無力かもしれないが、平和維持、貧困の撲滅、人権の向上などでは国連は重要な役割を果たしており、国連活動そのものが外交と云う一つの国際政治の場である。

 本書は二年半の国連代表部での著者の活動記録である。大きくは四つの内容を記している。一つはアメリカと国連の関係、二つは日本政府国連代表部の活動、三つは任期中の代表部の最大の問題であった安保理改革(日本の常任理事国入り運動)、4つは北朝鮮核実験をめぐる日本の国連活動である。なを本文で出てくる数値は年度を言わなければ2007年度現在のものである。


文芸散歩 「宇治拾遺物語・十訓抄」 小林保治・増古和子・浅見和彦[校訂・訳] 小学館

2008年06月22日 | 書評
日本の中世に生きた人間の多様な人生模様 人生色々・男も色々・女も色々 第1回

初めに(1)

「宇治拾遺物語」と「十訓抄」は説話文学と呼ばれ、説話集のなかでもとりわけ人に親しまれてきた。説話という言葉は近代以降の術語で昔は「物語」として表現されていた。物語には「源氏物語」、「伊勢物語」といった近代の小説に位置する純文学から、単に「お話」といった週刊誌的な小話が古くから集積していたのである。「説話」は創作された小説ではなく、実際にあった出来事、言い伝えの話である。現在の科学に時代からみれば荒唐無稽な事実があったわけではなく、当時の人が思い込んでいただけのことかもしれない話が多い。しかし出来事が書いたり口伝えで伝わっていたのが「説話」である。「宇治拾遺物語」も「十訓抄」も集められた話は大変幅広く、人間ドラマのあれこれが展開する。概して短い話が多いが、話題の豊富さ、多様さが醍醐味になっている。話は平安時代・鎌倉時代初期を舞台にしているので、登場人物は天皇、貴族、武士、商人、僧、農民など身分も多様だ。この説話集の著者は不明であるが、読み手は恐らく徒然草と同じような、和歌・漢詩に通じる教養を身につけた、没落貴族や僧、武士階級であっただろう。制作年代の校証では「宇治拾遺物語」は1210-1242年、「十訓抄」は1252年頃とされている。

自作漢詩 「日午冥冥」

2008年06月22日 | 漢詩・自由詩


日午冥冥雲不     日午冥冥 雲開かず

庭陰草露長青     庭陰草露 青苔長ず

荷薫含湿微風起     荷薫湿を含んで 微風起り
   
梅熟園林細雨     梅は園林に熟して 細雨来る

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(赤い字は韻:十灰 七言絶句仄起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)