ブログ 「ごまめの歯軋り」

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原油価格高騰の前に、気候変動問題すぼむ  根は同じなのに

2008年06月08日 | 時事問題
asahi.com 2008年06月07日21時25分
「原油価格、異常な水準」 消費5カ国エネ相が声明
主要8カ国(G8)エネルギー相会合が7日、青森市内で開幕した。この日はG8の日米に、中印韓を加えた5カ国によるエネルギー相会合が「現在の原油価格水準は異常で、消費国・産油国双方の利益に反する。我々は深刻な懸念を共有する」とする共同声明を発表した。
8日はG8会合と、中印韓が加わった11カ国会合がある。原油高対策に加え、気候変動問題が主要議題になる。5カ国会合の共同声明も含め、四つの声明を発表。「青森宣言」として採択する。

原油価格を吊り上げている手は地球温暖化の元凶でもある
ヘッジファンドのサブプライムローン問題でアメリカ金融界のお粗末さが世界に曝露された。同時にヘッジファンドは原油先物取引になだれ込んで現在1バレル137ドルを突破するような高騰を引き起こしている。地球温暖化を論じる前に石油メジャーの動きが問題である。

読書ノート 河野稠果著 「人口学への招待」 中公新書

2008年06月08日 | 書評
人口学は人口減少と少子・高齢化をどこまで解明したのか  第1回

2005年から始まった日本の人口減少は、100年後には人口は半減すると予測される。欧州に端を発し、いまや世界の半分の国で少子化が進行している。急速な人口減少が社会問題化するなか、人口減少は日本の将来にとって良いことなのか、懸念すべきことなのかは、賛否両論があって決着を見たわけではないが、政府は少子化問題担当大臣を設けて人口減少を食止める策を講じている。人口爆発に対する人類の危機感が人口増加の抑止力として働いているのか、限られた資源で少人口で豊かな生活を維持したいのか理由は色々考えられる。この人口減少と云う世界的潮流に棹をさすことが可能なのかどうかは別にして、戦前の「産めよ増やせよ」という論調に嫌悪感を持つ人は多い。人口が増え続けることで日本国家の活力・国力・経済力・安全保障・軍事力が維持されるといった「自転車操業」的な考えが今の政府にありありと見える。何時までも右上がり志向は経済ではありえないことは実証済みではなかったのか。アメリカのように何時までも覇権国家でありたいと願うことは、他の国にとってえらい迷惑なことである。人口学はかってヒットラーの優生学や民族政策に利用された経験から、近年まで胡散臭い学問と考えられていた。しかし近い将来の人口推計には確実な数値を与える人口学の力はすごい。しかしまだ社会経済動向や社会行動心理学などを人口理論に組み込んで計算することはできない。

文芸散歩 「平家物語」 高橋貞一校注 講談社文庫

2008年06月08日 | 書評
日本文学史上最大の叙事詩 勃興する武士、躍動する文章 第62回
平家物語 卷第十

維盛出家
興三兵衛重景は父景康が平治の乱で源氏に討たれて以降は、重盛卿が実の子のように養って維盛卿とは義兄弟の間柄であった。高野山の東禅院の知覚上人によって三位の中将維盛と興三兵衛重景、石童丸は出家した。維盛と重景は二十七歳、石童丸は十八歳であった。舎人武里には屋島への報告と京の六代御前に「子烏」という刀を届ける役目を与えて出家は許さなかった。瀧口入道を道案内人として、熊野権現に向った。

熊野参詣
熊野の海は三位の中将維盛の父、小松の大臣重盛卿が祖父清盛入道を諫るため入水された場所である。親子二代で熊野灘で入水自殺を遂げることになる。一行は新宮から那智の瀧を参詣した。

維盛入水
浜の宮から船を出し、山なりの島に上がって松の木に「清盛浄海、重盛浄蓮、維盛浄円」と三代の名を書いて三月二十八日、那智の沖にて入水すと書き付けた。沖に出て入水の場になっても維盛は「あわれ人の身に、妻子と云うものをば、持つまじかりける」と未練が止まなかったので、瀧口入道は延々と道理を諭して未練を断ち切ると中将らは念仏百回唱えて「南無」と海へぞ入り給われた。重景、石童丸が続いた。

自作漢詩 「雨歇蛙鳴」

2008年06月08日 | 漢詩・自由詩


六月熟梅蛙乱     六月熟梅 蛙乱れ鳴き

林間靄靄緑煙     林間靄靄と 緑煙を生ず

江村雨歇自然楽     江村雨歇んで 自然の楽しみ 
  
水殿西風無限     水殿西風 無限の情

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(赤い字は韻:八庚 七言絶句仄起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)

CD 今日の一枚 テレマン「無伴奏フルートのための12の幻想曲」

2008年06月08日 | 音楽
テレマン「無伴奏フルートのための12の幻想曲」
フルート:ジャン・ピエール・ランパル 
ADD 1972 DENON

昨日紹介した「無伴奏ヴァイオリンのための12の幻想曲」とおなじジャンルである。高音用メロディー楽器なら何で演奏しても良いはず。「無伴奏・・・幻想曲」とは通奏低音(チェンバロ、チェロ、リュートなど)を伴わない「即興的な小器楽曲」という意味である。今で云う「幻想的」という意味は無い。平易で分りやすい曲である。演奏者ジャン・ピエール・ランパル(1922-2000)はフランスのフルート演奏の第1人者である。曲風はもはやバロックではなく、典雅なフランスロココ趣味に満ちている。