渡良瀬遊水地
近世合理主義哲学・科学思想の祖デカルトの「方法論序説」入門書 第3回
第3講) 学生時代
「方法序説」の最初に「良識はこの世で最も公平に分配されている」と書いている。良識とは判断力であり、真と偽を見分ける能力である理性である。しかし記憶力や想像力には各自かならばらつきがあるが、良識という点では人間に生まれつきの相違はないというのである。しかし現代ではデカルトほど楽観的には見ていない、真偽はそれほど単純ではなく誘導されて全員が一斉に間違うこともありうるのである。デカルトの定義では人間は本来「理性的動物」で、理性は人間の本質に属するという。ただし理性の使用法で間違うことがある。理性のの使い方、真理を知る方法が人の資質を決めている。その理性を正しく導く方法が本書なのだという。デカルトは貴族の下層である「法服の貴族」の生まれです。デカルトをはじめ、パスカル、フエルマ、コルネーユ、コルベールなどは皆「法服の貴族出身です。生まれつき体の弱かったデカルトは10歳の時ラフレーシのイエス会士の学校に入学した。そこでギリシャ・ローマの古典文学、アリストテレス哲学をキリスト神学に統合した「スコラ哲学」を学んだ。イエス会の神学は、ルターやカルヴィン派の宗教改革に対抗して、神の摂理に対する人間の自由を大幅に認める考え、キリスト教を世俗的道徳に妥協する傾向がありました。学校ではスコラ哲学ですが、ギリシャ・ローマのルネッサンス人文学を大幅に取り入れていました。ラフレーシ学院の8年いて、ポアチエの大学で2年間法律と医学を学んだ。20歳になってデカルトは学問の世界に見切りをつけ、パリという世の中に出ました。遊んで暮らしたようですが数学だけはいろいろな学問のうち最も明白な真理を示すと考えて研究に打ち込んだそうです。当時の哲学の議論がいかに不正確でいい加減な議論だと判断したようです。
( つづく)