ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

民主政治の混乱が続くと、専制政治・軍事クーデターが恐ろしい

2010年09月30日 | 時事問題
朝日新聞2010年9月30日1時42分
市長派立てこもり、反市長派は合鍵で突入 阿久根市議会
 市長と議会の対立が続く鹿児島県阿久根市で29日、久々に招集された定例議会。初日に市長派議員が1時間半も議場に立てこもる騒動が起きた。仙波氏の副市長選任取り消しなどを求める決議が可決された直後、市長派議員が、市長に対する浜之上大成議長の発言を問題視し、議長不信任の動議を宣言して休憩に。

毎度馬鹿馬鹿しい阿久根市長の専決騒動 今度は議会で反市長派と市長派の乱闘 
民主政治の混乱が続くと、専制政治・軍事クーデターが恐ろしい。戦前の悪夢が正夢にならないように民主党政権はがんばって欲しいものだ。



読書ノート 加藤周一著 「読書術」  岩波現代文庫

2010年09月30日 | 書評
博学強記の「日本の知性」が指南する、中高生むきの本の読み方 第3回

 テレビや映画を見るには何も必要がない。ただテレビの前や、映画館の座席に坐ればいい。ところが本を読むには机の前に坐るだけでは何も進まない。読もうとする気力や意志や目的がなければならないのである。テレビ・映画は受動的であるなら読書は能動的である。どちらも人生の楽しみであり、楽しみは多い方がいい。静かな環境で誰にも邪魔されずにその本の世界に浸れる、それが読書の醍醐味であり、また本を読む時の姿勢は自分一番楽な姿勢でいいのです。宗教では「座禅」、儒教には「端座書見」、礼儀には「正座」という言葉があるが、そんなことは読書の楽しみを奪うに過ぎない。著者は少年時より病弱であったため、何時も寝て本を読む習慣がついているので、一番リラックスできる姿勢は寝て読むことであるそうだ。本を読むには机・椅子はいらない、書き仕事をする時には資料をおくために机が必要になるという。図書館や研究所は環境が整えられているので、本を読むための施設である。ところが本はどこでも読めるのである。芥川龍之介は英国紳士がいつも傘をステッキ代わりに持ち歩くように、本を片手に持ち歩いたという。また旅は本を持ってゆく人も多い。旅に出かけるのと本を開くのは、未知の世界に踏み出すのと同じことである。片道1時間あまりの通勤電車の中で著者はラテン語文法の勉強を志し、1年間欠かさず本を読んでマスターしたらしい。通勤電車というのは、退屈で容易に読めない本を読むには格好の場所だそうだ。普通学生は通学電車の中で、英単語のカードを暗記したり、歴史年表を暗記した経験があるだろう。何のために読書をするのかというと、正しい意味では知識を得るのが目的である。必要に迫られて読む、ぼんやりした目的意識で読む、退屈しのぎに読む、色々な読み方はあっても、読む人に新しい世界、見方を教えてくれるのである。
(つづく)

読書ノート 河合康三著 「白楽天」 岩波新書

2010年09月30日 | 書評
中唐の流行詩人 生きることの喜びを歌う 第7回

諷論と閑適 (1)

 ここで初めて白楽天にも不幸が訪れる。811年母がなくなり、さらに娘もなくして3年間喪に服した。その間は無給であり生活は苦しかったようだ。814年朝廷に戻った白楽天は皇太子のお守役という閑職についた。翌年815年宰相武元衡が暗殺されるという事件が発生した。これは藩鎮討伐をめぐる主戦派と妥協派の争いで、よせばいいのに局外者白楽天は徹底捜査を主張し、政変後権力についた妥協派からにらまれて、江州司馬として(つまり罪人として)左遷された。江州への旅の詩「舟中雨夜」は暗澹たる白楽天の心象が表現されているが、「舟行」にはのんきな旅を楽しむ詩がある。これも「白氏文集」の「閑適」の部類に入れてある。この「舟行」は左遷という同じ事態を喜ばしい面から捉えなおす、詩の感情表現に「閑適」という新しい形を付け加えたのである。「琵琶引」という詩は左遷行の見である自分の心境を、数奇な運命を辿った女性の心情に重ねて哀切深く、情緒豊かに謳うのである。女性の人生を語る「物語詩」つまりストーリーテーラーである。民間の歌謡文芸を詩にまで高め、文学に取り込んだものである。
(つづく)