ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 長妻昭著 「消えた年金を追って」 リヨン社

2008年06月02日 | 書評
「ミスター年金」衆議院議員長妻昭氏が国会で暴く 第2回

「年金は、国家の礎である。年金制度が信頼を得ている国は発展します。年金制度が信頼を失うと、国家の信頼も失墜し国力は衰退するのです。年金が消えてしまうのは欠陥国家です。生活者にとって安心な仕組みセーフティーネットは、規制緩和を推進する政府や業界にとって厳しい制度となり、いい加減な政府役所や企業は生き残れません。しかし、逆にまじめに生活者の立場に立つ政府や役所企業が出れば、評価され信頼され発展します。その結果国際競争力も高まるのです」と著者は本書の冒頭で宣言する。この論理は、かっての公害規制で非常に厳しい基準をクリアーした日本の自動車産業が世界を席巻したことを思えば、まじめに努力する企業が発展すると言う分りやすい論理です。年金問題は大きくは年金保険料浪費問題(約9兆円の累積無駄使い、これも年金から消えた)と現在の「5000万件の消えた年金」問題です。年金保険料浪費問題は社保庁の解体と年金支払い外使用禁止で解決しそうです。「5000万件の消えた年金」問題は前の問題とあわせ根の深い官僚機構との闘いです。すべて官僚機構が引き起こした問題で誰一人責任を取る人がいないのです。

読書ノート 国貞克則著 「財務三表一体理解法」  朝日新書

2008年06月02日 | 書評
損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書のつながり 第5回

財務三表の構造 (3) キャッシュフロー計算書 CS
 CSはまさに会社の家計簿です。2000年より有価証券報告書にはCS提出が求められています。営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローの3つに分かれていますが、これは下から「お金を集めて」ー財務キャッシュフロー、「お金を何かに投資し」-投資キャッシュフロー、「利益を上げる」ー営業キャッシュフローになるからである。中小企業の「資金繰り表」と基本的におなじです。営業キャッシュフローの下の小計には、分類の曖昧な利息受け取り支払い、法人税支払いなどを入れる約束である。直説法CSは分りやすいが、間接法CSでは営業キャッシュフローが税引き前当期純利益から始めるため、お金の動きがない場合でも利益が動くためいろいろな補正項目があって差し引きゼロに持ってゆく必要が出てくる。殆どの企業はこの間接法CSでやっている。三つの財務表には五つのつながりがある。①PLの当期利益がBSの繰越利益剰余金に入る。 ②BSの左右は一致する(集めたお金と投資したお金は一致) ③BSの現金及び預金はCSの現金残高に一致する。 ④PLの税引き前当期純利益は直接法CSの営業キャッシュフローの税引き前当期純利益に入る。 ⑤CSの直接法と間接法は一致する。今三表のBSを中心にすえて考えると、BSの「繰越利益剰余金」の内訳計算書がPLであり、BSの「現金及び預金」の内訳計算書がCSであると言う言い方も出来る。

文芸散歩 「平家物語」 佐藤謙三校註 角川古典文庫

2008年06月02日 | 書評
日本文学史上最大の叙事詩 勃興する武士、躍動する文章 第56回
平家物語 卷第九

忠度最後
薩摩守忠度卿は西の手の大将軍であったが、武蔵国岡部六弥太忠純に囲まれ奮戦していた。忠純は忠度の歯が鉄漿(おはぐろ)であったのでこれは公卿の大物だとばかり忠度の首を取った。箙には歌が結いつけてあり、忠度と書かれていた。武芸にも歌道にも優れた武将を失ったと惜しまれた。

重衡生捕
本三位中将重衡は生田の森の副将軍であった。主従二騎で濱に向かって逃げて行くところを、梶原源太景季・庄太朗高家が追いかけ弓を射ると重衡の馬に当った。重衡の従者後藤兵衛盛長は自分の馬を取られると思ったのかそのまま逃げ失せた。重衡は生け捕られた。後藤兵衛盛長は熊野法師のところに身を寄せた。

敦盛最後
熊谷次郎直実、渚にて船に向って泳いでいるよき公達を見つけ、返せと叫ぶとなんと取って返して来る。汀で組討になって首を掻こうとして良く見るとまだ若い美少年であった。直実は自分の息子のことを思ってこの若い将軍を助けようとしたが、味方の軍勢が押し寄せてきたのでやむなく首を落とした。敦盛十七歳であった。このことで直実は後日発心するのである。

自作漢詩 「初夏薫風」

2008年06月02日 | 漢詩・自由詩


緑樹薫風寂四     緑樹薫風 四隣寂たり

江楼望月断蓬     江楼月を望む 断蓬の身

子規聲過方迎夏     子規の聲過ぎて 方に夏を迎え
   
紅落魂迷已送     紅落ち魂迷い 已に春を送る

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(赤い字は韻:十一真 七言絶句仄起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)