ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

厚生労働大臣「日雇い派遣の禁止」  是非実現してください

2008年06月13日 | 時事問題
asahi.com 2008年6月13日13時15分
日雇い派遣、「やめる方向で」 厚労相が法改正を表明
 舛添厚生労働相は13日の閣議後会見で、批判の強い日雇い派遣労働について、「気持ちから言えば、やめる方向で行くべきだと思っている」と述べ、臨時国会に日雇い派遣を原則禁止とする労働者派遣法改正案の提出を目指す考えを明らかにした。
舛添氏は「労使の意見も聞かなければならないが、日雇い派遣はあまりに問題が多い。かなり厳しい形で考え直すべきだ」と指摘。通訳などの専門的な職種を除いては禁止すべきだとの考えを示した。

「スポット派遣」
2007年1月の調査では全国のホームレスの数は18564人で減少気味である。2007年8月「ネットカフェ難民」が全国で約5400人に上ることが、厚生労働省の調査で明らかになった。ネットカフェ難民になる人の多くは「ワンコールワーカー」である。「ワンコールワーカー」とは一日単位で派遣先を紹介される人である。いわば「日雇い労働者」である。賃金は非常に低い。月収は13万円から15万円程度にしかならない。生活保護世帯以下である。日本には年収が200万円に満たない「ワーキングプア-」と呼ばれる人が550万人いる。この「ワーキングプア-」にさらに下落圧力をかけているのが、団塊世代の派遣化である。2007年から2009年にかけて678万人が退職して、継続社員として65歳まで働ける人の平均年収は160万円(月13万円)なので、そのまま雇っていたほうが新人を採用するより安く付く。団塊世代が若年派遣社員の職を奪うとか賃金低下の要因になりかねない。
昨日テレビで「科学捜査研の女」をみた。ネットカフェで寝泊りする地方での若者が、偽装請負で低賃金で働いて、将来這い上がる夢を持ちながら事件に巻き込まれて殺害されるというストーリーであった。これが実情をどれだけ反映しているのかは知らないが、就職氷河期の若者も30歳を越え、生活もままならないようである。実家から通って働いているうちは家族の援助もあって生活状態は悪くは無いが、問題は地方から出てきた青年が、派遣の低賃金で難民化して定住するアパートも持たない状態である。派遣を見直すことは規制強化ではない、規制を元に戻すだけの事である。会社側の無法略奪を許さないということに過ぎない。セーフティネットの構築がなければ、健康保険、年金、失業保険が揃ってなければ安心して働けない。

民主党前原氏 自民党へ転入すれば?

2008年06月13日 | 時事問題
asahi.com 2008年6月13日3時3分
民主内紛?党政策批判の前原氏に身内から「退場勧告」
 民主党の前原誠司副代表が月刊誌の対談で同党の政策批判を展開したことに対して、筒井信隆「次の内閣」農水相らが12日、「前原副代表の妄言を糾弾し、その『退場』を勧告する」とした文書を党所属議員にメールで送った。
 前原氏は10日発売の中央公論で自民党の与謝野馨・前官房長官と対談。農家の戸別所得補償や子ども手当など昨年の参院選のマニフェストについて「行革だけで財源を捻出(ねんしゅつ)するのは絶対無理」と指摘し、「このまま民主党が政権を取っても、まともな政権運営はできない」と批判した

どうも胡散臭い 前原氏の政治的立場
どうも前原氏の言動には胡散臭さが付きまとう。前原氏が民主党代表に当選した時、自民党から「前原氏は組みやすい」とエールが送られた。前原氏は自民党防衛族議員の米国軍需産業輸入業者の会である「日米文化交流協会に名を連ねている。前原氏は「首相問責決議案」に反対してきた。メール問題で引責した時、あのお粗末なスタンドプレーは芸能週刊誌記者以下であった。などなど、彼の政治的立場は民主党の中では最右翼で、自民党側に民主党を傾けることにあるのではないか。

読書ノート 河野稠果著 「人口学への招待」  中公新書

2008年06月13日 | 書評
人口学は人口減少と少子・高齢化をどこまで解明したのか 第7回

出生力要因と結婚の人口学ー生物行動的近接要因

 人口学では出生力の要因として、一つは人間の生殖をめぐる生物的・行動的要因を「近接要因」と呼び、二つはその背景にある「社会経済的環境的変数」要因である。この章では出生力に直接つながる「近接要因」を取り上げる。死亡は生物的要因で決まるが、出生の過程は死亡と異なり、人間の意志的要素が加わって行われるのである。したがってさまざまな影響を受けやすい。人間は生物学的には妊娠をしている期間と母乳保育期間は受胎しない。したがって最低1年半ぐらいのサイクルで女性は15歳くらいから49歳ごろまで子供を生むことは理論上可能である。伝統的途上国社会が20歳から40歳まではそのタイプである。日本では30歳前後で二人生んで終了と云うパターンである。受精しても20%くらいは流産となるし、生涯不妊率は5%くらいはある。又避妊薬の開発で避妊が100%確実になった。日本人は性的行為が少なすぎるとかセックスレス夫婦が増えているとか、出生力抑制因子が多い。

 日本人は殆ど結婚を通じて出産をする。結婚をしたカップルの出生率は安定している。すると過去25年の出生率の低下は男女が結婚をしなくなったからだと言える。日本人の晩婚・非婚は男性の場合1980年から始まり、女性の場合1990年から始まった。2005年時点での30歳から34歳の未婚率は男性で47%、女性で32%である。初婚年齢は男性で平均30歳、女性は28歳である。ベッカーの理論では先進国の晩婚・未婚化は、結婚のもたらす経済的利益が減少したことである。国連でも結婚要因モデルとして、社会的要因、人口学的要因、結婚規範、個人的要因、結婚市場を挙げている。男性の結婚相手の選択幅(年齢や条件)は狭く、女性の選択幅は広いといわれる。このミスマッチが男性結婚率の低下につながっている。結婚市場としての「見合い結婚」、「社内結婚」、「恋愛結婚」、「地縁結婚」が減少し「友縁結婚」、「紹介業結婚」に移ってきているといわれる。この男女の出会い機会が狭くなっている事も重大である。晩婚化は受胎年齢・リスクの上昇となり、子供を生まないと決意する夫婦も多くなっている。「Two Income No Children」という子供なしで夫婦共稼ぎで豊かな生活というのも新人類の理想かもしれない。

文芸散歩 「平家物語」 佐藤謙三校註 角川古典文庫

2008年06月13日 | 書評
日本文学史上最大の叙事詩 勃興する武士、躍動する文章 第67回

平家物語 卷第十一

遠矢
壇ノ浦では平家の船は汐に流され、源氏の船には追手となった。平家は千艘を三手に分け、山賀兵藤次秀遠が先陣五百艘を、松浦塔が三百艘で第二陣、平家の公達らが二百艘で三陣を組んだ。山賀兵藤次秀遠、和田小太郎義盛、仁井紀四郎親清、開源氏浅利与一らの遠矢合戦をして、ここを一途に源平死力を尽くした戦いとなった。

先帝御入水
ここで平家方の戦線脱落・裏切りが開始され平家は総崩れとなった。阿波の民部重能は教能が人質になっていたので源氏へ寝返った。四国鎮西の兵は皆平家を背いて源氏についた。はやここまでと感じ取った二位殿は、神璽を脇に挟み、宝剣を腰にさし、主上を抱いて「極楽往生と云う都にゆこう」と海に入られた。

能登殿最後
建礼門院は主上と二位殿の入水をみて、覚悟を決め懐に石や硯を入れて入水された。源氏の渡邊源五右馬允昵は小船で近づいて熊手にかけて女院を引き上げた。大納言典侍局は内侍所の入った唐櫃とともに入水しようとしたが、けつまずいて倒れた所を侍に取り留められた。門脇の平中納言教盛、修理大夫経盛兄弟、小松の新三位中将資盛、少将有盛、従兄弟の左馬頭行盛は鎧に碇をつけて入水された。大臣平宗盛と息子右衛門親子は海に身を投げずにうろうろしているので見苦しいとばかりに侍が蹴落としたが、泳ぎがうまいので沈まないところを伊勢三郎義盛が熊手で引き上げた。大臣を救おうとした飛騨三郎左衛門景経が船に討ち入ったが堀弥太朗親経に首をとられた。強力の能登殿教経に向う敵はいなかった。義経めがけて船に討ちいったが、義経はひょっと隣の船に逃げ移って難を逃れた。五条の橋で弁慶の長刀をかわしたように。能登殿の船に安芸太郎実光兄弟と郎党が攻め入ったが、能登殿騒がず安芸実光兄弟を両脇にむずっと締め上げて、「おのれら、死出の山の供せよ」と海へ入られた。能登殿教経二十六歳であった。

自作漢詩 「梅雨雷聲」

2008年06月13日 | 漢詩・自由詩


寂寂桐陰蒼翠     寂寂たる桐陰 蒼翠堆し

幽窓橘柚暗香     幽窓の橘柚 暗香来る

昼昏冷透風吹筍     昼昏く冷透り 風筍を吹き 
  
旦暮雷聲雨熟     旦暮雷聲 雨梅を熟す

●●○○●●◎
○○●●●○◎
●○●●○○●
●●○○●●◎
(赤い字は韻:十灰 七言絶句仄起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)