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京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

「あの頃の大騒ぎはなんだったのか?」という検証作業が必要(久々に神戸の教員間いじめ問題関連)

2021-08-12 18:55:53 | 受験・学校

忘れないうちに、今日は続けてブログ記事を書いておきます。今度は2年前(2019年)の秋に「大騒ぎ」になった神戸の教員間いじめ問題関連のことです。

このブログでも、2年前の10~11月頃の記事を見てもらえれば、何度もこの問題を取り上げて論じていたことがわかると思います。

また、2020年に入って「新型コロナ禍」がはじまるまで、私はくり返しこのブログで、この件での「激辛カレー」を食べさせられている映像を流して「大騒ぎ」をつくったマスメディアのあり方や、その「大騒ぎ」を鎮めるための神戸市長や市教委の事務方がとってきた対応に問題があることも書いてきました。

その上で、私は2019年10月のこの事件がマスメディアで取り上げられた当時から、ほんとうにこの学校で暮らし続ける子どもや、そこに子どもを預ける保護者、今後もそこで働き続ける教職員の意見などを聴きながら、学校の再建策と加害教員への対応、被害にあった教員へのケア等々をバランスよく考えていくような調査・検証作業を行って、再発防止策を着実に実施していくことが必要であること。また、そのためには、加害教員の処分問題に特化しているような弁護士ら法律の専門家だけの調査・検証作業ではダメで(=だから神戸市長や市教委事務方の対応ではダメということ)、いじめの重大事態の対応を参考例として、教育学や心理学・精神医学等の研究者・専門職なども交えたチームで検証すべきだということ。そういうことも、このブログで書いてきました。

さて、あれから2年近くたちましたが、先週、こんな記事がでていたこと、ご存知でしょうか?

神戸教員間暴行、加害側2人の「給与差し止め違法」 神戸市人事委(神戸新聞、2021年8月5日付け)

https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/202108/0014565439.shtml

元教諭2人の休職取り消し 教員間いじめで神戸市人事委(時事通信、2021年8月4日付け)

https://www.jiji.com/jc/article?k=2021080401292&g=soc

「えっ、なんのこと????」と思われる方もいるかもしれませんが…。

2019年10月はじめに、この教員間いじめ問題がマスメディアで報道され「大騒ぎ」になったとき、当初、神戸市教委は加害教員とされた教員4人を「自宅待機」にしました。その対応に際して、「こんな教員らに給与払うな!」等々の世論のバッシングが起こり、慌てて神戸市長・市教委らが加害教員らの休職処分と給与支給停止等に関する条例制定(実際は既存の条例の改正手続き)を行い、当時開会中の市議会にかけました。

でも、この条例制定については、市長がいろんな言い訳をするものの…。その時点でも市議会でも異論がでましたし、労働法の専門家などからも批判がありました。それでも市議会でこの休職処分と給与支給停止等に関する条例は、その月末に可決。さっそく加害教員とされた4人の教員にこの休職処分、給与支給停止が行われました。

ところが、その時点で加害教員とされた4人のうち、2人から人事委員会に対して異議申立てが行われました。その異議申し立てが2年かかりでやっと、このとき、神戸市教委が行った休職処分や給与支給停止等に手続き上の問題があったと、人事委員会によって認められたわけです。

ということは・・・。「あのとき、マスメディアでの大騒ぎに便乗して、『早くこの教員らを処分しろ!』だの『給料払うな!』だの言ってきた人々は、いったい、何を考えていたのか? 本当にそこまでする必要があったのか? あらためて検証が必要なのでは?」ということですね。なにしろ神戸市教委の行った2019年10月末時点での4人の教員への休職処分等のうち、少なくとも2人に対しては手続き上の「問題があった」と、人事委員会が認めたわけですから。

いかかですか? 今、冷静にふりかえれば、この人事委員会の判断のとおり、私がこのブログでいろいろ書いてきたことのほうが、当時の「早くこの教員らを処分しろ!」みたいな「大騒ぎ」「熱狂」の方よりも、「妥当なこと」だったと思いませんか?

どれだけ加害教員の行為に問題があったとしても、マスメディアで大騒ぎをして「早く処分しろ」などという論調を煽って、結果的に市長や市教委、そして市議会などに法的に誤った対応をさせた人々がいたのであれば…。やはり、そういう点は神戸の教育世論のあり方の問題として、批判的に議論すべきではないかと思います。

ただし、この人事委員会の判断についても、私は「ほんとうにあのときの市長・市教委らが行った、泥縄式の条例制定自体「問題なし」といえるのか?」という点で、疑義が残るものではあるのですが。

というような次第で、私はあらためて2年前、2019年10月の時点に立ち返って、もう一度この「教員間いじめ問題」での神戸市長・市教委事務方などの対応の問題などを冷静に検証すべきではないか・・・と考えています。



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