緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

安倍圭子演奏、伊福部昭作曲「ラウダ・コンチェルタータ」ライブ録画を見る

2024-03-09 23:12:11 | 邦人作曲家
20代~30代の頃、それは伊福部昭の曲をよく聴いていた頃であるが、「ラウダ・コンチェルタータ」という曲に出会った。

マリンバ独奏:安部圭子
指揮:山田一雄
演奏:新星日本交響楽団
録音:1979年9月 東京文化会館大ホール ライブ演奏

このライブ演奏はフォンテックからレコードで発売され、あとにCDにもなった。
この曲をずっと後になってから聴きなおしたときの感想をブログに記してあった。
ちょっと長いけど全文を下記に再掲することにした。

2012年5月26日22:26

「こんにちは。
だいぶ暑くなってきましたね。
最近、20代~30代の頃よく聴いていた伊福部昭の曲を聴き直しているのですが、マリンバと管弦楽との一楽章の協奏曲「ラウダ・コンチェルタータ」という曲があります。
ラウダ・コンチェルタータとは、レコードの解説文によると「司伴楽風な頌歌(しょうか)」を意味するらしい。頌歌とは壮麗で手の込んだ抒情詩(韻律)の形式をとる音楽のことを言う(ウィキペディア参照)。
頌歌の意味はともかく、レコードを聴いてみると、冒頭から暗く不安感を抱かせる3拍子のオーケストラが奏でる旋律が流れます。
次にマリンバの独奏に移りますが、マリンバの打ち付ける音が強烈でありながら、不思議と心地よいですね。マリンバは今まで殆ど聴いたことがなかったのですが、意外に自然界に溶け込むようないい音です。逆に言うと自然から生まれたものかもしれません。古代人がさまざまな木片と木片がぶつかる音を聴いて楽器にし、音楽に発展させたに違いありません。
マリンバの起源はアフリカだと言われていますが、現在の楽器の形になったのは、中南米のグアテマラやメキシコが最初だそうだ。
マリンバの独奏が終わると、再び冒頭の不安なオーケストラの旋律が再現され、4拍子に変化するとマリンバの独奏となりオーケストラは伴奏に回る。
この4拍子の刻みはこの曲の根幹をなすもので、最も重要なテーマを感じさせます。この4拍子の刻みに作曲者は聴き手に何を喚起させたいと意図したのであろうか。
中間部に移ると穏やかな南国的雰囲気の漂う曲想に変化します。
作曲者が南国を意識しているかわかりませんが、私には、戦時中に日本が出兵した南の島の土着の音楽を連想されるのです。芥川也寸志の「交響三章」や「弦楽のためのトリプティーク」の第二楽章子守歌でかすかに感じ取れる南国の雰囲気も、戦時中に南の島で兵役に就いた人々が経験した現地の音楽が曲の深いところで存在しているからではないかと思う。
それにしてもマリンバの木と木が打ち合う音は何とも自然な美しい響きで、音そのものに集中させられます。この中間部のマリンバの独奏は南の島の夜の静けさを思わせる。
後半部は、再び冒頭の暗い不安を感じさせるフレーズで始まります。
そしてリズムが4拍子に移ると、マリンバの独奏とオーケストラの掛け合いとなり、次第に生命感のあふれる演奏となっていく。
マリンバの躍動するリズムと人間の根源的な魂を揺さぶるような音が素晴らしいです。
このあたりから、聴き手の心の奥底に眠っていたものが湧き出てくるのが感じられます。4拍子の鼓動がマリンバの超絶技巧と共に聴き手の心を前へ前へと進ませていきます。
最後のマリンバの打つ音の強烈なエネルギーとオーケストラとの盛り上がりは凄いです。
まさに聴き手の心の呪縛を解放させようとするようなエネルギーに満ちた音楽と演奏ですね。人間の根源的なものに回帰させる音楽だと思います。
この曲と演奏はクラシック愛好家だけでなく、ロックやジャズを聴く人にも聴いて欲しいですね。必ず得るものはあると思いますよ。
さてこの曲の録音ですが、私が聴いたのは以下のものですが、この録音が最も推薦できるものだと思います。

マリンバ独奏:安部圭子
指揮:山田一雄
演奏:新星日本交響楽団
録音:1979年9月 東京文化会館大ホール ライブ演奏

録音はLPの方が鮮明で優れています。CDは劣化したマスターテープから録音したと思われ、鮮明さがなくややボケた感じです。
これはよくあることで、例えばギターのセゴビアの録音もCD化されたときには古いマスターテープの音源を使用しているため、LPの音よりも悪くなっているものもあります。」


今日、同じ安倍圭子氏の演奏で、1993年9月7日、ベルリンのフィルハーモニーホールで演奏されたライブ演奏の録画をYoutubeで見つけた。

マリンバ独奏:安倍圭子
指揮:石井眞木
オーケストラ:新交響楽団

LAUDA CONCERTATA


1979年の演奏に比べると、やや衰えはあるものの素晴らしいマリンバの演奏だ。
後半を過ぎたあたりから、聴き手の魂を震わせるような伊福部昭独特の土俗的音楽に移り変わる。
この部分から体の芯から熱いものが沸き起こってくるのを感じるに違いない。
それは「生きる」力を与えてくれるもの、長い間、人間が忘れ去り、心の奥底に眠らせたままにしていた根源的感情に違いない。
恐らく、原始の時代には、人間誰もが生きるために必要とし、持ち合わせていたものなのかもしれない。

指揮者の石井眞木氏は伊福部門下の作曲家であり、指揮者としての伊福部作品の演奏としては「シンフォニア・タプカーラ」(新星日本交響楽団、1991年12月13日)がCD化されている。

【追記】

残念ながら、マリンバ独奏:安部圭子、指揮:山田一雄1979年9月 東京文化会館大ホールのライブ演奏はYoutubeで見つけることは出来なかった。
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