緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

三善晃さんを悼む

2013-10-06 19:25:24 | 邦人作曲家
こんにちは。
今日の朝刊に作曲家の三善晃さんの死去を知らせる記事が載っていました。
三善さんの名前を初めて知ったのは高校生が大学生の頃だったと思います。
当時全音楽譜からクラシックギターのピースが出版されており、そのピースの裏表紙のカタログに「エピターズ」とか「プロターズ」という一風変わった名前のギター曲がのっており、作曲者が「三善晃」と書かれてあったのを見たのが最初だと思います
このタイトルからして恐らく現代音楽に違いないと想像していたのですが、1990年代の初め頃に、惜しくも若くして亡くなったギタリストの芳志戸幹雄さんが録音したCDで初めてこの曲を聴くことができた。この曲を聴いたのが三善晃の音楽を聴いた最初だったと思う。







この2つのギター曲はまさしく現代音楽でした。1970年代の半ばに当時日本のギター界をリードしていた若きホープの荘村清志さんや芳志戸幹雄さんのために作曲されたのですね。プロターズは2台のギターのための曲、エピターズはソロのための曲です。
エピターズは今年の東京国際ギターコンクール本選の課題曲に選出されています。
三善さんはこの東京国際ギターコンクールで長い間審査委員長を務めてきました。
今日、彼の曲が録音されているCDを探し出し、エピターズと彼の初期の代表作である「交響三章」(1960年作曲)を聴きました。
エピターズは無調の現代音楽ですが、難解な曲です。しかし不協和音でありながらその和音の響きが、これまでの伝統的なギター曲には見られなかった新鮮さを感じることができます。音楽は美しく聴くものにとって心地よくあるべきだとする考え方とは次元の異なる方向性のもとに作られた音楽ではないかと思います。恐らく伝統的なギターという楽器から、今まで耳にしたことのない響きや音を引き出そうとしたのではないかと思う。
この時代にはギターから様々な音の響きを表現する試みがなされていたと思います。
1960年代から70年代に作曲された日本人のギターの現代音楽を聴くと、この時代は今よりもずっと、作曲家のギターに対する思いが強かったのではないか。実際多くの日本の作曲家がこの時代にギター曲を書いた。しかし今、それらの曲は埋没し、コンサート等で弾かれることはない。
最近のクラシックギター界がポピュラー音楽とクラシック音楽との境界が崩れ、中途半端な音楽活動になってきているのは残念に思う。やはり作曲家が真剣にギター曲を取り組めるような演奏活動になって欲しいと思う。
このような意味で今から40年近く前に書かれたこの三善晃の曲は貴重であり、決して安易さを伴わない新鮮な感覚と熟考を要求される構成力を持つ優れた曲だと思います。
三善さんは交響曲を始め様々なクラシック音楽を作曲したが合唱曲も数多く作曲しています。
私が初めて三善晃の合唱曲を聴いたのが今から10年くらい前で、邦人作曲家の曲を探していた頃で、立ち寄ったCDショップで偶然見つけたNHK合唱コンクール平成13年度全国大会の録音を聴いたときです。
このCDで北海道のある高校が演奏する三善晃の曲に惹き込まれました。この曲は混声合唱のための「やさしさは愛じゃない」から、「さびしいと思ってしまう」という曲だったのですが、題名のとおり暗く、ものすごく寂しい調子の曲でした。



驚いたのは、三善晃が現代音楽の作曲家だと思っていたのが、こんな曲も作曲していたのかということです。無調の音楽を書き続ける作曲家が同時に、こんな純粋な曲を作ることに少なからず驚嘆したのです。
それからしばらく合唱曲とは無縁の年月が過ぎましたが、今から3年ほどまえにあるきっかけから合唱曲の鑑賞にのめりこみ、2年くらい前に出会ったのが、三善晃が作曲した、混声合唱のための「地球へのバラード」から「沈黙の名」という曲でした。
この曲、最高の合唱曲です。私が最も好きな合唱曲のうちの1つですが、ものすごく感動します。
この曲との出会いは、先のNHK合唱コンクールの過去の録音を聴く為に上野の音楽資料室で聴かせてもらったときで、平成12年度全国大会で学校名は控えさせてもらいますが、ある高校の演奏を聴いた時です。
この演奏を聴いたときは衝撃でした。合唱曲でこれほど心の奥の感情が引き出される音楽、演奏は極くわずかしかありませんが、この時以来、東京へ用事で出てきた時はこの資料室に立ち寄り、何度も連続して聴いたものです。この演奏が収録されたCDは現在廃盤です。
最近音楽療法などという言葉を聞くが、この「沈黙の名」のような曲は聴くものの心を浄化する強いエネルギーを持っていることは間違いないと思う。少なくても私にとってはこの曲はそのような存在である。
三善晃の合唱曲は数多くあり、CDは買ったはいいけど、ピアノ曲なども聴いているので、なかなか聴く時間がとれません。



他にも三善さんの曲を聴こうと思って、買っておいたCDがあり、下の写真(ピアノ独奏曲)がそうですが、いずれ時間をかけてたんねんに聴こうと思っています。



三善さんは私に大きな影響を与えてくれた作曲家。
どうかやすらかにお眠り下さい。

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