緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

三木稔作曲 箏 譚詩集 第二集より「里曲」を聴く

2015-10-17 23:32:04 | 邦人作曲家
久しぶりに箏の曲を聴いた。
聴いたのは、三木稔作曲、箏 譚詩集 第二集より第4曲目の「里曲(さとわ)」である(1976年作曲)。
演奏は野坂恵子。



秋の静かな夜に聴くのにふさわしい、日本的情緒を最も強く感じるような曲だ。
この曲を初めて聴いたのが15年くらい前だったか。この譚詩集第二集の中でも印象に残った曲で、その後何度か聴いていた。
日本古来から伝わる五音音階陰旋法による曲であるが、このような寂しいけれど何とも言えない美しさを持つ音楽は日本以外の国において聴くことは無く、日本独自のものと言える。
日本のクラシック音楽の創成期の作曲家として、伊福部昭、そして伊福部昭よりも前に生まれ活動していた鈴木静一などの作曲家は、この五音音階陰旋法のモチーフを自らの曲にふんだんに取り入れている。
彼らの時代から考えると、明治から昭和の初期まではこの五音音階陰旋法による曲が庶民の身近な存在として流れていたのではないかと思うのである。
この音階を用いた曲はシンプルなほど心に染み入る。
この「里曲」は鈴木静一の曲に見られるような次の基本的音型を取っている。



現代の西洋かぶれし過ぎた日本では決して生まれてこない音楽だ。
この日本独自の音楽は、日本人よりも外国人の方が高く評価している。Youtubeで箏や尺八、篠笛などの日本古来の伝統楽器を用いた演奏に対する評価を示すコメントは外国のものが多い。

陰旋法はどのような環境から生まれて来たのか。
恐らく静かな忍ぶような暗い夜から生まれたに違いにない。
島国で外国との交流を絶ち、閉鎖的な国の中で、封建制度による厳しい生活と、貧しい庶民の質素な暮らしの中から生まれたに違いない。華やかで優雅で楽しい要素はどこにも無い。

日本には箏、尺八、篠笛などの固有な伝統楽器があるが、他の国に比べて自国の伝統楽器や伝統音楽をさかに演奏したり、世界に伝える動きは少ないように感じる。
クラシックにしてもポピュラーにしても西洋の音楽を演奏したり聴く人が殆どであるが、たまにはこのような日本の伝統音楽に触れてみるのもいい。
この「里曲」のような曲は日本の古い時代の庶民の気持ちが伝わってくる。はっきりとは分からないが、何か強いものである。先に乗せた写真の一節のような音型だ。
この陰旋法は子守唄や、「とうりゃんせ」のような子供の遊び唄にも用いられている。

この「里曲」を録音した野坂恵子の箏の音は素晴らしい。全身全霊で弾いたような音を出す。
ギターでもこのような音を出したいと思うほどだ。芯のとても強い感情の伴った音だ。

畳のあまり広くない日本の昔ながらの部屋で、静かな秋の夜に電気の無かった時代の照明にしてこのような曲を聴いてみたいし、いつか篠笛もやってみたいと思う。

この「里曲」をYoutubeで探したが無かった。三木稔の曲で比較的知られているのは、尺八と二十弦箏のための「秋の曲」という曲がある。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
« 2015年度(第33回)ス... | トップ | ギターの塗装を考える »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Tommy)
2015-10-18 10:21:31
お琴演奏のご紹介ありがとうございます。

昨日、知人の女性3人が来週の日曜日に琴の合奏を
するので聴きに来て欲しいと連絡を受けたばかりで
何となく奇遇に感じています。

早速下記の演奏を聴いてみました。現役知人の演奏
を聴くのは初めてですが20年以上の経験があるとの
ことですので楽しみにしています。

https://www.youtube.com/watch?v=GFCLfYCXVR0

今年の弦楽器フェアーには井内氏より招待状を戴きましたので今年も緑陽さんおすすめの時間帯に行ってみようと思っています。
返信する
Unknown (緑陽)
2015-10-18 20:07:58
Tommyさん、こんにちは。いつもコメントありがとうございます。
近く箏の生演奏を聴く機会があるとのこと、うらやましいですね。
そもそも箏を演奏する方も少ないですし、箏の演奏会の情報も見たことがありません。
私もいつかは箏の生演奏を聴きたいと思っています。
この時期になると陰旋法の音楽を聴きたくなります。
弦楽器フェアは今年も行こうと思っております。
今年はマンドリンも試奏する予定です。
返信する

コメントを投稿

邦人作曲家」カテゴリの最新記事