緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

木村麻耶演奏、バッハ:シャコンヌ(二十五弦箏編曲版)を聴く

2024-08-02 22:24:46 | 和楽器
Youtubeで木村麻耶氏が演奏した、二十五弦箏への編曲版によるバッハのシャコンヌ(無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番終曲)を聴いて、その超絶技巧、箏の特性を生かした表現力に少なからず感嘆した。
特記したいのは、恐らくオーストリアのギタリスト、カール・シャイト(1909-1993)のギター編曲版により演奏されているということだ。

カール・シャイトと言えば古い世代のギター愛好家であれば名前を聴いたことがあると思うが、バッハのギター編曲版、作曲家のシャラーとの共著によるギター教本の出版などで知られたギタリストである。
手持ちのレコードを調べてみたら、以下の3枚が見つかった。







そのうちの1枚の解説に次のようなことが書かれていた。

「彼はウィーン音楽アカデミーにギターと理論を学んだが、ギターの教授法にあきたらず、他の有名なギターの教師を訪問したが、ヴァイオリンの勉強法のようなものがギターにはなく失望していた折、スペインの大ギタリストのリョベートが来墺したので、すべての金を投じて、リョベートの演奏会を追って歩いた。
そして、遂にセゴヴィアに会えたことは彼に決定的な勇気を与えたことになった。
シャイトのバッハへの愛着は、必然的にリュートの作品の特別研究に興味を持つことになり、ウィーンのバッハ・サークルの演奏会に関係するようになった。
バッハの演奏を完成するために、有名なオーストリアの作曲家でバッハ研究家のダヴィットのもとで研究を重ねた。
24歳でシャイトはウィーン音楽アカデミーの教師となり、1952年に教授となった。」

カール・シャイトのギター編曲版によるシャコンヌの楽譜があったので見てみると、あくまで譜面をざっと見た限りではあるがオリジナルから逸脱、乖離することのない、シンプルで基本に忠実な編曲のように思われた。









木村氏が二十五弦箏でシャコンヌを演奏するにあたり、何故、カール・シャイトの編曲を選んだのか、興味深いところである。
二十五弦箏でギターのオリジナル曲を初めて弾いたのは二十五弦箏を開発したと言われる故、野坂恵子氏であった。
野坂恵子氏は伊福部昭作曲のギターオリジナル曲である、「古代日本旋法による蹈歌」、「箜篌歌」、「ギターのためのトッカータ」、またリュート曲「バロック・リュートのためのファンタジア」を二十五弦箏で演奏し録音した。
意外にもギター曲を二十五弦箏で弾くことは可能だと言うことだ。
しかし木村氏のシャコンヌの演奏を見ると、弦を弾いている最中に駒を頻繁に移動したり、指をかなり長い距離で移動するなど、超絶的な技法を強いられていることが動画で見てとれる。しかも、体勢を中腰で体を前のめりにしないと演奏できないほどで、非常に体力を消耗するのが伝わってくる。
にもかかわらず音間違えも無くこの長大な独奏曲を弾き切るというのは見事という他ない。

新しい境地を切り開く飽くなき挑戦意欲といったエネルギーを感じさせてくれた演奏であった。


Chaconne J.S.Bach transcribed by Karl Scheit,supplemented by Maya Kimura koto
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