ここのところ、「プチツイていない現象」が多発していた。
・上野駅でよそ見していた外国人(不良ちっく)に正面からぶつかられた。しかも睨まれた。睨み返したけど。
・ガストに行ったが喫煙席が満席。
・社長に見せなくて良いと思っていた資料がけっこう重要だった。
・まさかの貧血宣告。
・不動産会社の人の応対が悪かった。クレームのメールを送ったが返信なし。
・今日、昼休みに自販機でジュースを買おうと思ったら詰まった。
と、そんな「プチツイていない現象」が続いて、ちょっち落ち込んでいた。
その極め付けが、今日の昼休みの最後に勃発。
昼休み終了前、会社の階段を登っていたところ、まるで漫画のように前のめりで転んだ。
節電で階段が薄暗く、前々から危ないと思っていた。
最初に思ったのは転倒した時に落としたスマホの無事。…OK。
「痛いなあ」と思い、左足の膝を見たら、黒のストッキングが豪快に破けている。しかも血が出ているではないか。切り口がけっこう深くね?
当社の階段は石でできていて、縁取りは御影石製であるからに、スパッと切れてしまった模様。
あまりの痛さにうずくまっていたら、他部署の男性マネージャーが通りかかって私の部署に言ってくれた。
その間、足から吹き出した血が滴り落ちていて、ちょっとした事件の現場っぽくなっていた。
火曜サスペンス劇場@当社。聖母たちのララバイ。
「これは大ごとになるかも」と考えながら、後輩女子に支えられながら着席。
後輩女子2名に手当してもらい、その間、吉熊上司が人事課長に会社周辺のの外科について聞いてくれた。
その間、社長から電話がかかってきてその問い合わせに答えたり、日経平均株価が前日比194円高だったことが気になってしょうがなかったり、脳内パニック。
傷口は貯金箱の穴にように自らを主張し、中から肉っぽいものが「こんにちは」している。
34年生きていて、こんな怪我は初めてだ。激しく動揺してしまう。
「よし、行くぞ」と吉熊上司の運転する車になんとか乗り込み、近くの病院へ。
しかし、外科医がオペに入っていて、ダメだった。
後輩女子Cちゃんが調べてくれたA病院に行くことになった。
「あそこに搬送されると、みんな死んじゃうんだよ!人気が無い病院だからすぐに診てもらえるよ」
とクスクス笑いながら運転する吉熊上司。
…大丈夫なのか?ただでさえも「プチツイていない現象」が続いている私。なんだか、すげー嫌な予感がするんだが。
着いた病院は十仁病院さながらのレトロ感溢れる外観。嫌な予感MAX。
しかも遺体搬送車らしき車が出口から今まさに出て行くところだった。
受付に言ったら、すぐに診てもらえるらしい。…やっぱり!人気ないんだな。
吉熊上司が「終わったら電話しろよ」と言いながら去って行った。超心細い。
待つこと15分。名前を呼ばれて診察室へ。目の前には豪快なオッサン医師。
「転んで傷って言っていたから大したことが無いと思っていたら、けっこうすごいじゃん!!縫わないとな!!」
と、ビニールシートが敷いてあるベッドに促された。
枕の位置が通常とは逆じゃね?と医師が看護師に言っていた。
「そうでしたっけ?」
と看護師。
「まあいいか」
と医師。
素敵なやり取り。
縫合手術の準備をする医師と看護師たちのアットホームな会話を聞きながら、緊張。
私、これからどうなっちゃうんだろう…。まな板の鯉状態で目を白黒させる。
ライトがやけに眩しい。THE手術っていう感じである。
「手術するなんて初めてなんでドキドキしちゃうのですが」
と私。
「僕もドキドキしちゃうよ!!」
と医師。…医師、ドキドキすんな!!!
麻酔は激マジ痛かった。隣の壁に爪を立ててしまう勢いの痛さだ。
縫合手術自体は麻酔がかかっているせいか痛くなかった。ただ、時々太もも辺りの皮膚までも引っ張られる感じがして不快。
しかも
「あひゃ、これさ、筋膜も切れているよ」
と実況する医師。嗚呼、筋膜切れているなう…なのか。
頭上にいる看護師さんに必死でどうでもいいことを語りかけて、気を逸らしていた。
看護師さんによると、後輩女子たちが行ってくれた応急処置が良かったとのこと。
傷口が密着した状態で固定されていたので、傷が広がらずに済んだらしい。ありがとう。後輩女子たち。
手術後、医師に破傷風の注射をしろと言われたが、幼いころ、三種混合をしたので断った。
医師は信じてくれなかったが、母ヨーコたんに電話で確認したら、やはり打っていた。
会計時、吉熊上司に確認したら、休憩時間中の労災は下りないとのこと。
健康保険で賄った。まあ数千円で済んだので良かったのかも…。
吉熊上司の運転する車で帰社。
彼には本当、迷惑をかけてしまった。
社長に報告、周囲に迷惑を掛けてしまったことを謝罪し、仕事続行。経費分析が終わらない。
生足はまずいだろということで替えのストッキングを履いた。痛みはあまり無いが、怖いので痛み止めを飲んだ。
膝が曲げられないので不便。
定時で上がっても良いとのことだったので、上がった。
社長に「もう帰るんデスカ」という表情をされたのだが、見ないふりをした。
他部署の人たちが帰り際、「大丈夫?」とぞろぞろとやってきて、声をかけてくれた。
階段を下ると、石の床には私の血の跡がくっきりと…。
拭いても落ちなかったらしい。
帰りにロビーでI江姐さんに遭遇。一緒に駅まで帰ることになった。ぴょこぴょこ歩く私に速度を合せながら歩くI江姐さん。「もう、亮子ちゃんたらドジなんだから~。心配しちゃったよ~」とか言われた。
家の最寄りの駅から自宅まで、普段の3倍の時間を掛けて帰った。
不便すぎる…。
帰宅後、精神的なショックから布団にうずくまっていたら、そのまま寝てしまったらしい。
今、起きた。
痛みはあまりないが、膝がやけに火照るし脈を打っている。薬を飲んだ。
多くの人に迷惑を掛けてしまったという気持ち、抜糸もきっと痛いのだろうなという不安、土日にどこにも出かけられないという絶望、お風呂はどうしようという面倒臭さ…様々なことが沸々と湧き出でる深夜。
とりあえず、疲れてしまった。
プチツイていない現象がこれで終了すればよいのだが。