世界の中心で吉熊が叫ぶ

体長15センチの「吉熊くん」と同居する独身OLの日常生活

シナプスによって運ばれた、あの街の匂い

2010年10月04日 22時14分16秒 | Weblog
一瞬、ニューヨークの匂いが脳内で蘇った。
他の建物に書類を渡しにいくときに、FedExのトラックを見かけた。
あの街ではやたら見掛けたFedExのトラックだ。


ジョン・F・ケネディ国際空港からホテルに向かう途中。
夕方5時の高速道路は所々で渋滞していた。
日はまだ残っていて、遠くに霞む摩天楼を浮かび上がらせていた。

時差ぼけで半分意識が無い助手席の私に、運転手のSさんは前を走っているFedExのトラックを指差して言った。
「あのロゴマークの意味をご存知でしょうか?」
と。

FedExね。
たまに会社の前に止まっているよね、あのトラック。
物流大手の会社だよね。たしか。
え?
その意味?
FedExはFedExでしょ?
どう見てもFedEx。

「よく見て下さい。見えますでしょ?矢印が」



あ…!
Eとxの間に矢印がある!
「ルビンの壺」みたいに。

この矢印にはFedExの2つの売りであるスピードと正確さを表現しているとのこと。
感心している私の反応が面白かったのか、彼は他にもニューヨークのヒミツを教えてくれた。

日常のふとした瞬間に、彼が教えてくれたことや、あの街で見たもの聞いたものなどの匂いを感じることがある。
脳内にあるシナプスという流通ルートに乗って。

今日のようにあの街の匂いを嗅いだ日は、きっとこれからも私はあの街を恋しがるに違いない。
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心のシートベルト

2010年10月04日 22時08分54秒 | Weblog
店舗のスタッフからは毎日のように制服の交換申請書が上がってくる。
今日、平均着用年数の半分の月日しか着用していないのに申請書を出してきた人がいた(台帳で管理しているので、いつ誰に送付したか分かる)。
交換してもらう気満々だったのだろうか、破損した制服まで送られてきた。
ジャケットの前の部分が擦り切れている。吉熊上司の指示のもと、電話で「どうしたら短期間でこんなふうになるのか」ということを確認。

のっけから、
「破けたんだから仕方ないじゃないですか」
と言われた。
こういう時に頭ごなしに注意すると切れてしまう人がいる。
たまに、いる。
慎重にならなければならない。

「私さー、デブだからさー、ケースの縁にお腹が当たっちゃうのよぉー。だからここだけいつも擦り切れちゃうワケ。あっはっは」
と自虐的に攻めてきて、ついには
「太っている私がいけないんだわよね…」
って、泣き落としかよ!?
擦りきれた制服をそのまま着てもらうわけにもいかず、制服はまた送りますから大切に着てくださいね、と懇願しておいた。
すると手のひらを返したかのように、
「この制服の生地、弱いのよね。正直」
とアドバイスをしてくる始末。

何なんだ?
何なんだよぉ~ッ!

うぉぉぉ~!
ドラマ「もう誰も愛さない」の吉田栄作状態寸前。


帰りに母ヨーコたんに電話。今日一日を報連相。

父が昨日、呟いていたそうだ。
なんでも、妹・芋子の入った後の風呂場の桶はきちんと伏せてあるんだそうな。
私の入った後の風呂場は使用したタオルはだらりんと干してあり、桶もそのまんまというような惨状だと。

「芋子は躾がなってる」
と言っていたそうだ。

それを聞いて激しく動揺してしまった。
昔からそう。
私は出来の良い妹に比べられていた。
学芸会だって芋子はいつも主役でスタアだったのに、私はいつもその他大勢。
成績も芋子が上だった。
無愛想な私と違い、芋子は空気を読めるし利発であるし、色白だし、なんてったって酒が強い。

私なんて。
私なんて…。

まるで思春期時代の自分に回帰したかのように、ひどく苛つ。
たかが風呂桶ひとつでガタガタ言ってんなよ、うるせーな、と心の中で生まれた呟きを煙にしてボーボーと吐き出す。

「だらしがないのは、ママとパパが私を作ったときに『だらし』というプログラムを怠り、組み込まなかったからだからね」
と母に言った(『だらし』のプログラミングって何だよ?)。

後になって、私のこの一連の気持ちの変化や考え方って、先述の制服のスタッフと似ていることに気づき、ぞっとした。

嫌だわ。私ったら。
気持ちを切り替えて「本音を言ってくれるのは親だけだしなあ」と、優しい気持ちになる。

情緒が安定しない。
季節の変わり目という乱気流に突入したみたいなので、心のシートベルトをきちんと締めなければ。

カチャッ。
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