世界の中心で吉熊が叫ぶ

体長15センチの「吉熊くん」と同居する独身OLの日常生活

こんな娘でごめんなさい。

2005年10月11日 22時56分34秒 | Weblog
昨日、実家から帰る際、母から土産をもらった。
土曜日に父が出席した結婚式の引き出物「バームクーヘン」。
甘いものが元々好きではなく、しかも胃の調子が悪い今の私にとってはあまり喜ばしいものではなかった。クリームとか油っぽいものは見たくもない。今は。

母は「会社の皆さんに分けてね」と言っていたが、バームクーヘンは円形の固まりであり、包丁を使用して均等に切断せねばならない。
普段、全く使用する機会がない包丁。
月に一回、芋子からもらった洗顔石鹸を切断するときのみ使用する包丁。
調理で使用したのは高校時代の家庭科の授業が最後だ。

それに、そもそも均等という概念が面倒だ。
包丁を使用して均等に物を切断する…考えただけで頭と胃が痛くなる作業である。
面倒臭さがあの甘い香りと共に胸を占拠する。

しかも使用後にママレモンで包丁を洗浄しなくてはならない。嫌だ。
昼休みに包丁を使うことを途方もなく狂おしいほど面倒に感じ、
また仕事以外であまり他人とは会話をしたくない気分だった。
「つまらないものですが…」みたいな会話。面倒臭い。

貴重な昼休みに包丁でバームクーヘン切断→「つまらないものですが…」で、煙草二本吸う時間が失われるのは、勿体無い気がした。

断ったら母が可愛そうな気がして「…ありがとう」と受け取ったものの、
内心「面倒だ。嗚呼、面倒、面倒、面倒、面倒、面倒、面倒…」とバームクーヘンが重く心にのしかかった。
面倒という文字がバームクーヘンを彩る模様のように、頭を回る…。
トグロを巻いた「面倒」という文字…。嫌だ。
4桁の割り切れない割り算を50問やるのと同じぐらい面倒だ。
「何で私がそんなことしなくっちゃならなくて?」という憤りさえも感じた。


本日、病院帰りに母に一日の様子を電話でホウレンソウ。

「バームクーヘンどうだった?」



ああ、あれね。今朝持っていくのも面倒で、まだ冷蔵庫の中だよ。


とは言えなかった。

亮子「ええ!?ああ、うん。…嗚呼、今朝少し食べたよ」ととんでもない嘘を吐いてしまった。

母 「皆さんで食べてって言ったでしょ!っていうか、持っていくのが面倒だったんでしょ?」

すごい剣幕である。
そしてすごい的中率。
相似とか合同の証明とか得意だったのかな、50%ぐらい私の心理を読みきっているよ、この人は…。

こういうのも面倒。放って置いて欲しい。

「ごめん。さっき嘘吐いた。包丁使うのが面倒なのと、他人と会話をするのが面倒で、意図的にわざと家に忘れてきました。」

泣きながら素直に弁解するも、電話は一方的に切れた。…面倒。
仕事帰りで疲れているんだよ、ゴルァ!とイライラする。
バームクーヘンごときで怒んなよ!
…いつの間にか路上で歩き煙草をしていた。

よく彼氏と電話で喧嘩して、こういうシチュエーションあるよなー…。
久しく殿方と付き合っていない私は、こういう面倒くさいことに免疫がないので、どうしていいか途方に暮れてしまう。
身内といえど、母には本当に気を使うんである。

仕方がないので謝罪をメールでしたら、電話がかかってきた。

「いらないんだったらいらないって、何ではっきりしないの?甘いもの好きな芋子にあげた方が良かった…。つまらない嘘まで吐いて!」


ごもっとも。
謝るだけ謝った。
胃がキリキリ痛むが、謝った。
クレーム処理の人みたく謝った。

今後、恐らく母は私に土産を持たせないだろう。

その切なさを感じると共に、母が私を思ってしてくれた恩を無情にもメチャクチャにしてしまった罪の大きさを感じ、ひたすら泣いた。

ママ、こんな娘でごめんなさい。

明日、ちゃんと皆さんに分けますから。
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