晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

山本一力 『お神酒徳利』

2012-11-06 | 日本人作家 や
元・臥煙(がえん。火事のときに誰よりも早く現場に駆けつける)の新太郎
と、房州勝浦の出身で、元相撲取りの尚平というコンビの駕籠屋さんの活躍を
描く「深川駕籠」のシリーズ第2弾ということで、楽しみにしてました。

前作では、速足自慢のいろんな職業の人がレースを行うのですが、そこに金に
汚い役人の邪魔が入ったり、賭けを仕切るヤクザが入ったり、なんとしてでも
勝ちたい新太郎と尚平のライバルの駕籠屋との駆け引き、の途中で終わってい
て、その続きが読みたかったのですが、まったく違う話から始まっています。

あのレースの行方はどうなったんだろう・・・山本さん忘れちゃったのかな、
と思いつつも、まあそれはいいとして、『お神酒徳利』は、表題作と「紅蓮
退治」の2作品となっています。

態度の悪い女性客を駕籠に乗せて、時間がかかって、しかも不味い蕎麦を食べ
て、イライラのつのる新太郎と尚平。
そんなところに、お腹の大きな女性が土手にうずくまっています。
その女性を助けようと、さっきの蕎麦屋に連れて行きます。奥の座敷を借りて、
急いで産婆さんを呼びに行きます。
無事、赤ちゃんが産まれてよかったよかったと喜んでいるところに、火事を
知らせる半鐘の音が・・・

しかし、どこから煙が上がっているのか。当時の江戸では、半鐘職人という
火事をいの一番に知らせる役目があったのですが、それとは別に、江戸に住む
大名屋敷もそれぞれ独自の火消し集団を持っていて、広大な敷地に火の見やぐら
を建てていたりします。
そこの火の見担当が、ごくたまに、イタズラで鐘を鳴らす時があるのです。

確かに煙があがっているのに、火元が分からないでいらいらする新太郎。
そのうち、田安という大名屋敷がさっきの半鐘の元と見て、訪ねますが、はねつけ
られます。

そのうち、小網町から火の手が。慎太郎は臥煙でしたが、生まれは小網町にある
両替屋の息子だったのです。実家が燃えないように、地元の火消しに協力し、田安
の大名屋敷の火消しにもお願いを・・・

もうひとつの「お神酒徳利」は、尚平と良い仲のおゆきが、なかなか進展しない
ことに、いらいらする新太郎、といったところからスタート。
ある日、尚平とおゆきは浅草でデートをするのですが、相方の新太郎がいなくて
気もそぞろの尚平を見かねて、おゆきはひとりで帰ってしまいます。
ところが、その帰り道におゆきが何者かにさらわれて・・・

おゆきは、今では飯屋で働いているのですが、かつては賭場の胴元、芳三郎にも
可愛がられた、有名な壺振りだったのです。
誘拐の手紙を芳三郎親分に見せる新太郎と尚平。すると、この筆跡はアイツに
違いない、と見抜きます。
その渡世人、弥之助は、字の上手さでかつては芳三郎のもとにいたのですが、
根が腐っていたので放り出されて、その後は知らない、というのです。

はたして、何のために弥之助はおゆきをさらったのか・・・

いろいろと調べていくうちに、他の賭場で弥之助が目撃されていて、そこで、
ある若旦那とつるんでいるというのですが・・・

そして、ひょんなことから身投げをしようとしている男を助けた新太郎と尚平。
その男は賭場での借金に首が回らなくなったというのですが、この男がどう関係
してくるのか。

それにしても、山本一力作品に出てくる女性は、おゆきといい、江戸屋の女将の
秀弥といい、女性にはふさわしい形容ではありませんが「カッコイイ」ですね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする