晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ジェイムズ・エルロイ 『ブラックダリア』

2012-11-14 | 海外作家 ア
まあ、そんなに好き好んで読むわけではないですが、ノワールと呼ばれる
暗黒小説ですか、たまに読んだりします。
日本だと馳星周さんが有名ですが、あとがきや解説でよく目にしてきたのが
このジェイムズ・エルロイという作家名。

”暗黒のLA4部作”というのがあって、この『ブラックダリア』は第1作。

舞台は、大2次大戦終了間もないロサンゼルス。

主人公のバッキーは、元ボクサーで、友人だった日系人を戦時中に密告して
収容所送りにして、警官になったという、まあ「いいヤツ」ではありません。

そんなバッキーに、運命の出会いが。こちらも元ボクサー(バッキーよりも
重い階級)のリーが、ロスで起こった暴動の最中に、いっしょに犯人を逮捕
します。
もともと、面識はなかったのですがお互いを知っていて、世間や同僚たちは
ボクシングスタイルからバッキーを「アイス」、リーを「ファイア」と呼び、
なんとこの二人は後日、ボクシングの試合をすることに。

そこで、りーの彼女を紹介されるバッキー。ケイという女性は、かつてリー
が逮捕した銀行強盗犯の愛人というから驚き。

さて、ロサンゼルス市警の企画した「アイス」対「ファイア」のボクシング
はりーの勝利で、大盛況だったことで市警の予算アップに貢献したとして、
バッキーは特別捜査課に移ります。そこで、リーとパートナーに。

とある事件の捜査をしているときに一件の通報が。現場は近く、駆けつけた
バッキーとリーは、凄惨な女性死体を見ることに。
上半身と下半身は切断され、内蔵はくり抜かれ、体中にあざや絞められた痕
がついていて、顔は口が耳まで切られていて、まるで笑っているよう。

被害者の身元は、アメリカ東部出身のエリザベス・ショートで、ハリウッド
女優を夢見てロサンゼルスにやって来たのはいいのですが、そういう人間は
ごまんといるわけで、エリザベスに出番が回ってくることはなく、お金もなく、
夜な夜な、軍人たちの”一夜の相手”をしていたというのです。
しかも、彼女は嘘や大言壮語を吹聴しまくっていて、あまり評判は良くなかった
ようです。
彼女はよく黒い服を身につけていて、美しい顔立ちと黒い衣装から、「ブラック・
ダリア」と呼ばれていて・・・
住処も転々とし、異性関係も激しく、ときには同性愛関係もあったりして、捜査
は難航。

バッキーとリーは別件の捜査があったのですが、リーはこの事件に執着します。
というのも、りーの幼い頃、妹が誘拐されていまだ解決していないという過去
の忌まわしい記憶があり、「おそらく妹は犯人に惨殺されたにちがいない」と、
エリザベスに妹を重ね合わせてしまい、精神安定剤の服用も日に日に増えて、
時には常軌を逸したような言動に。

そんな中、ケイの元”恋人”の銀行強盗犯が出所するという知らせが。もうこう
なったらりーの精神状態は崩壊寸前。
出所してメキシコに行ったと聞いたリーもメキシコへ飛びます。

さて、バッキーは「ブラック・ダリア事件」の捜査をしていて、マデリンという
女性と知り合います。
彼女は大手不動産会社社長の娘で、何よりもバッキーが惹きつけられたのは、
エリザベスに似ているということだったのです。
なんとマデリンは生前のエリザベスを知っていたというのですが・・・

リーはメキシコに行ったまま連絡が取れず、傷心のケイの話し相手をしている
うちに二人は恋仲になり・・・

いちおう本筋は「ブラック・ダリア事件」なのですが、織り混ざるようにして
ロス市警内部の複雑に入り組んだ人間関係、1940年代のロスの状況、そしてリー
の過去が描かれていって、疾走感もあって分かり易い、そんな印象。

話の序盤、リーとバッキーが出会ったとき、リーは「シェルシェ・ラ・ファム」
(女を捜せ)と言うのですが、この言葉がラストに引用されて、この演出には
ぶったまげました。

コメント
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