晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

A・J・クィネル 『メッカを撃て』

2012-11-12 | 海外作家 カ
クィネルの作品には、派手なアクションや、リアルな(当人にとっては
耳の痛い)政治スキャンダルなどの合い間に、ほどよくロマンスが織り
込まれていて、決して本筋の邪魔になることなく、話の奥行きといいま
すか、幅が拡がって読み応えがあるように仕上げていて、そこらへんが
上手いなあ、と思って最近ハマっております。

さて『メッカを撃て』ですが、メッカとはイスラム教の聖地でイスラム
教徒なら一生に一度は訪れるべき場所で、シーズンともなれば世界中から
わんさか人が集まりますね。
そんな聖地に、アメリカの”ひも付き”である預言者(マハディ)を送り
こもう、という計画が立ち上がります。
CIAのある人物が、今は引退してマレーシアの山奥の豪邸に暮らしている
元スパイのもとを訪ねます。
そこで、老スパイは、混乱を極める中東をコントロールしようと、預言者を
”こちら側で作り上げる”計画を提案。
この話にイギリスの諜報組織MI6が加わって、”ミラージュ計画”が実行
されます。

まわりから、ちょっと頭の弱いと思われていますが、本人はいたって敬虔な
イスラム教徒で、数日、洞窟に入って瞑想をして町に戻って、を繰り返して
いるアブ・カディルという男がいます。
彼に、特殊効果で”神の声”を聞かせて、預言者にさせようというのです。

それを、アラブ人の実業家が「預言者が現れた」と口コミで話を徐々に拡げて
いきます。
というのも、イスラム教国家では、「自分は預言者」だと言いふらすと罪に
なるのです。
そこで、本人(預言者)が特定されないように、でも預言者が現れて、しかも
イスラム暦のキリの良い年にメッカに登場し、政府が止めようもない状況にまで
持っていこうとします。

さて、この「隠密行動」を嗅ぎつけたソ連のKGB。アメリカとイギリスが
サウジアラビアで何かを計画しているところまでは分かったのですが、中東
情勢では西側よりもリードしていたいソ連。そこで、イギリスにスパイを
送り込むことに。

ソ連の名門バレエ団のプリマドンナ、マヤを、バレエ鑑賞が趣味というMI6
の人間に近づけさせ、「自分は亡命したい」と話を持ちかけ・・・

いわば「仲間外れ」状態だったKGBも”ミラージュ計画”を知ってしまい、
これからどうなるのか。マハディはメッカまでたどり着けるのか・・・

アメリカ、イギリスの諜報にソ連まで加わって預言者を「でっちあげる」
という、まあなんとも小説というか映画の世界といいますか、突飛なアイデア
ですが、話の元は、あとがきによると1979年に「ネオ・マハディ主義」を標榜
する原理主義がメッカのモスク襲撃事件を起こし、これをもとに描かれたと
いうのです。

翻訳者の解説には、ほぼ全部「これが最高傑作」と褒め称えています。まあ
それだけインパクトが大きくて、前に読んだ作品を凌駕してしまう、純粋な感想
なんでしょうね。ものすごく同意。ほんとにそう思いますね。

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