晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

宮部みゆき 『おそろし』

2012-11-17 | 日本人作家 ま
時代小説を読みたいんだけど、昔の話だから言葉遣いとか所作とか
地名とか古くて難しいんじゃないか・・・と心配して時代小説を読む
のに二の足を踏んでる方がいらっしゃったら、宮部みゆきの作品は
ものすごく読みやすくてオススメ。

江戸、神田に「三島屋」という袋物屋さんがあって、そこの主人の
伊兵衛の姪にあたるおちかが三島屋に住むことになり・・・

というところからはじまる、この話。

おちかの実家は川崎の宿屋で、そこであるトラブルというか、恐ろしい
体験をしたせいで心を閉ざしてしまい、家にいられなくなり、親は娘を
江戸にやって気分転換でもさせようとします。

おちかは三島屋の主人と奥さん、女中や番頭からお客さん扱いされること
をきらい、積極的に家の仕事を手伝います。

そんなある日、主人が外出することになり、留守中にお客さんが来ること
のなっているので、おちか、お前がお客さんの相手をしなさい、と告げられ
て、おちかは、さあ困ります。

さっそくお客さんを招き入れますが、そのお客さんは、庭を見るなり、具合
が悪くなります。聞けば、庭に咲いている曼珠沙華を見て、というのです・・・

このお客さんは、罪人の兄を疎ましく思い、島流しから江戸に戻ってきても
一切の接触を拒み、しかしそうこうしているうちに兄は死んでしまい、兄は
死ぬ数日前に、曼珠沙華を指差し、あそこに弟の顔が見える、と話していた
のです。その時、弟は兄に「死んでほしい」と呪っていて・・・

こんな、いわば「トラウマ」を話していたお客さんは、おちかを見るや、
あなたもお辛い体験をしたでしょう、と気づくのです・・・

そこでおちかは、川崎宿で起こった悲しい出来事を、初めて会ったお客さん
に話しはじめるのですが・・・

その「恐ろしい体験」は、別におちかに落ち度というか非があったわけでは
ないのですが、おちかは自分を責めて、他人の辛い体験を聞くことで自分も
過去の忌まわしさと向き合うことによって、少しずつ快復できるようになる
のでは、と感じた伊兵衛は、ちょっと変わった「百物語」をしよう、と決め
ます。
「百物語」とは、怪談を話して1本ずつろうそくの火を消していく、というやつ。
この話を聞きつけた町の人びとが、三島屋を訪ねてきて、おちかに自分の体験
した不思議な恐ろしい話を聞かせ、やがてそれらの話がどこかでリンクしはじめて、
おちかは、あるお屋敷に向かうことになり・・・

たんなる「江戸怪談話」ではなく、そこには人間の絆や心の大切さも訴え、
現代に置き換えてもいいようなテーマを、敢えて時代小説にしている意味というか
意義を深く考えさせられます。
コメント
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