晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ケン・フォレット 『大聖堂 上』

2012-11-02 | 海外作家 ハ
はじめてケン・フォレットという作家の名前を耳にしたのは、故・児玉清さん
が何かのテレビ番組で、この『大聖堂』をものすごく面白いと熱くご推薦され
ていたのを見て、と記憶しています。

なんでも、翻訳される前に原文(アメリカ版)を読んでのめりこんでしまい、
仕事でイギリスに行くことになって、本を持っていこうとしたのですが、原文
の本はぶ厚くて、荷物になるからと置いていったのに、現地で気になって、な
んとイギリス版を買って途中から読んで、今度はドイツに行くことになって、
また日本に置いていったのですが、現地でドイツ語版(児玉さんは大学のドイツ語
学科卒なんだそうです)を買ってしまい、家に3冊もあるんです、なんて笑い話
をされていて、こんな読書家をハマらせるのはさぞかし傑作なんだろうと思い、
いつか読もう、いつか読もうとココロにとどめておいて、先にフォレットの他の
作品を読んだりして、ようやっと読むことになりました。

舞台は12世紀のイングランド。プロローグで、どこかの小さな街で、ある罪人の
処刑シーンからはじまります。
わらわらと住民が処刑台のまわりに集まってきて、いよいよ罪人が台に登ったとき、
男はフランス語で歌いだしたのです。
当時のイングランドでは、一般庶民は英語、上流階級はフランス語を話していて、
その歌詞を理解できるのは、死刑執行に関わった僧侶や騎士、役人たちと、民衆の
中にいたひとりの娘だけ。
その娘は怒りに打ち震えていて、僧侶、州長官らに向かって呪いの言葉を浴びせ
かけて人ごみの中に消えてゆきます。

とまあ、こんな剣呑なところからはじまるわけですが、話は変わって、建築職人
のトムと一家(奥さん、息子、娘)が登場。
トムはいつの日か教会の大聖堂を作ってみたいという夢を持っていますが、現在
は流れの職人といった状態。
とある町の役人の息子が婚約し、その新居を作っていたところ、いきなり工事の
中止を告げられます。噂によれば、役人の息子は、婚約者にフラれたそうで、まあ
それは別に仕事を失ってしまったトムは、その息子に、今までの給料をくれ、と
お願いします。

この息子、名前をウィリアム・ハムレイというのですが、のちのちまでトムやその
周りに関わってきて、はっきり言ってしまえば、いやなヤツ。

さて、仕事を失ったトムは一家を引き連れて、どこかの建築現場を(できれば教会
か大聖堂の)探す旅に出ます。
しかし、どこでも断られ、持っていたお金も無くなります。身重の奥さんのためにも
懸命に仕事を探しますが見つからず、とうとう大工道具まで売ることになります。
そんなときに奥さんが産気づき、男の子の出産と引き換えに妻は息を引き取ります。
とても赤ちゃんを育てることのできないトムは、仕方なく、奥さんを埋めた近くに
赤ちゃんを置いていくのです。

しかし、この赤ちゃんは、修道士に拾われて一命をとりとめ、ジョナサンと名づけて
もらい、すくすくと成長します。

赤ちゃんを拾ったのは、フランシスという修道士で、兄のフィリップ(もまた修道士)
のいる教会に向かう途中で泣き声に気づいたのです。
このフィリップも、のちのちトムと深く関わることになってきます。

が、フランシスが見つける前に、じつはもう一人、赤ちゃんを見つけていたのでした。
それは、住むところも無く、森の中に住んでいる少年で名をジャックといい、母親と
ふたりで洞窟住まい。

この母親はエリンといい、じつはトム一家が森を移動中、盗賊に襲われそうになって
いたところを助けたことがあって、妻を亡くし(子どもたちにとっては母を失って)
とぼとぼとさまよっていたところ、再会します。
たちまち惹かれあうトムとエリン。
教会の許しがなければ結婚できず、ふたりは仮の夫婦として、トムの息子アルフレッド、
娘マーサ、エリンのひとり息子のジャックと5人で旅をすることに。

ところでフィリップですが、小さな教会での働きが認められて、キングズブリッジという
修道院に呼ばれます。その教会内部は腐りきってきて、その腐敗の根源であった院長死去
にともなって行われた選挙で、フィリップは新しい修道院長になります。
しかし、その裏では、この教区を取り仕切る、野心あふれる副司教との取引があり、その
副司教、ウォールラン・バイゴッドはのちに司教に昇進します。

このキングズブリッジとその周囲はシャーリング伯が統治していて、城にたどりついた
トム一家は、城の補修工事をすることに。
ところが、そこに豪族が襲ってきたのです。豪族の名前はハムレイ。そして、その息子
ウィリアムと婚約破棄をしたアリエナは、シャーリング伯爵令嬢だったのです。
そんな遺恨もあって、ハムレイは城を攻め落とし、なんとウィリアムは城に残っていた
アリエナを暴行し、弟の耳たぶを切り落とし・・・

キングズブリッジを立て直すためにいろいろ改革をはじめるフィリップ。そんな中、命
からがら城から脱走したトム一家が修道院に来て、シャーリングが襲われたと報告します。
さらに、フィリップに、ここの修道院の修復をさせてくれ、とお願いするのですが・・・

権謀術数うずまく世界の中で、純粋な信仰心の持ち主であるフィリップはどうなるのか。
アリエナと弟は、そしてトム一家は・・・

とにかく政治的に不安定で、それこそ今日の味方は明日の敵(逆もしかり)になったり、
日本で言えば戦国時代みたいな状態でしょうかね。
そんな時代に翻弄される庶民はたまったもんではありませんが、そんな中世イングランド
の政治的な部分、市井の人々の部分がバランスよく描かれています。

石工や大工などの専門用語(基礎知識的な)も出てきますが、ちゃんと説明もあって
少なくとも”ちんぷんかんぷん”にはなりませんでした。
コメント
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