晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

山本一力 『あかね空』

2011-05-24 | 日本人作家 や
山本一力の作品を読むのはこれがはじめてで、たまにNHK
の歴史関連、江戸風俗の番組でゲスト出演されているのを見
かけることが多く、読んでみようかなあと興味はあったので
すが、悪いクセで先延ばし先延ばし。

というわけで、第126回直木賞受賞作品『あかね空』を
読んでみました。

舞台は江戸、深川。時代は宝暦十二(1762)年八月から
はじまります。
京都で豆腐作りの修行をして、江戸へ出てきた永吉は、紹介
により、深川の長屋に住むことに。
それまでの江戸で一般に食べられていた豆腐は、現代でいう
ところの木綿豆腐をさらに固くしたような、「ゴワッと」した
感じだったそうで、一方、永吉の作る豆腐は絹ごしでフンワリ
とした食感。
しかも、江戸で多く流通している大豆では永吉の求める味は出
せず、商屋に頼み込んで、わざわざ上方から取り寄せてもらう
ことに。
同じ長屋にすむ桶職人のひとり娘の“おふみ”は、そんな永吉を
応援します。

なんとかかんとか「京や」という店名で開店。初日こそご近所が
祝いも兼ねて買ってくれて、売り上げ目標の分は売り切れます。
ところが、次の日、その次の日と、豆腐は売れ残ります。

味には絶対の自信がある永吉は、今さら江戸スタイルである、固くて
ゴワゴワした豆腐を作る気はなく、心配したおふみは、方々駆けまわ
って、地元にある名刹、永代寺に売れ残った豆腐を喜捨させてもらう
許しを得ることに。

あまり人間が上等でない平田屋の主人、庄六は、そんな京から来た
男の豆腐が評判になることを嫌います。

やがて、なんとか売り上げもそこそこ順調になってきて、永吉とおふみ
は夫婦になることに。

・・・と、ここから「京や」はさらに売り上げも伸び、二男一女ももう
けて幸せ、という永吉一家の話となるところが、話は永吉おふみの3人
の子ども達へと引き継がれる二代記となってゆくのです。

というのも、軽いネタバレですが、永吉はアッサリと、コロリと死んで
しまいます。さらに話は戻りますが、おふみの両親も、これまたアッサ
リと相次いでこの世を去ります。
まあ、だからといってアッサリ死んでその後の展開には関わってこない
なんてことはありませんけど。

永吉一家はもちろんのこと、他の登場人物の描き方も細かいところまで
かといって目立たせ過ぎずにバランス配分が素晴らしいですね。
物語全体として、この当時の実際に起きた事件などが市井に生きる人々
とうまく織り込まれています。

なぜ今まで読まずにいたのかと反省させられてしまうくらいに面白い
作品です。読み終わったあとに、美味しい豆腐が食べたくなること
請け合いです。
コメント (4)
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