晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ジェフリー・アーチャー 『十四の嘘と真実』

2009-12-09 | 海外作家 ア
『十四の嘘と真実』は、文庫サイズで30ページほどの短編と、
あとは数ページしかない短編の計14作が掲載されていて、ど
れも最後には「うーん」と唸るような、短かいながらも奥深く仕上
がっています。

なかでもこれがオススメというのが、「死神は語る」という、短編
と呼んでいいのか、わずか1ページの作品で、オリジナル作品
ではなく、古くは戯曲などで使われたことのある話だそうですが、
ちょっとした落語とも、いやいやこれは立派な短編小説だともと
れます。

バグダッドの商人が、召使いを市場に買い物に行かせます。
すると、召使いは顔が青ざめて震えながら戻り、
「だんな様、市場の人ごみの中で女にぶつかり、振り返って
みると、その女は死神でした。そして私を脅かしたのです。
馬を貸してください。死神から逃れたいので、サマラの町ま
で行けば死神に見つからないでしょう」
商人は馬を貸し、召使いは馬にまたがりバグダッドから逃げ
出します。
商人が市場に行くと人ごみのなかに死神がいるのを見つけ、
話しかけました。
「今朝、うちの召使いを脅かしたのはなぜですか」
すると死神は
「あれは脅かすつもりではなかったんです。わたしはただ
驚いただけなんです。じつは今夜、サマラの町で彼と会う
ことになっているので、バグダッドにいるのを見てびっくり
したんですよ」

ジェフリー・アーチャーをして「ストーリーテリングの技術とし
て、これ以上の好例にはお目にかかったことがない」と言わ
しめる、ちょっとぞくっとくるような、こんなに短いのに感動すら
おぼえます。

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