晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

坂東眞砂子 『狗神』

2009-12-19 | 日本人作家 は
高知県の山奥にある村で、和紙を作っている女性、美希。
悲しく辛い過去を引きずり、四十を越えても独り身で、
兄夫婦と母と暮らします。

そんなある日のこと、村の学校に新しい男性教師が赴任
してくることに。美希はその教師の晃と出会い、やがて
お互い惹かれあいます。

一方、村では、村人たちが不気味な夢にうなされ具合を
悪くし、美希の母もどこか様子がおかしくなり、なにか
村全体が不穏な空気に包まれたかのよう。

そしてとうとう、美希に想いを寄せる男の母親が、美希
に対して暴言を吐いた直後に容態が悪くなり、死んでしま
います。
そこで美希は、自分の一族が「狗神筋」と呼ばれ、村人から
腫れ物に触るかのように扱われていたことを知り、ショック
を受けます。
母に問いただすと、一族の女にだけ、狗神の特殊な力がもた
らされ、そして母は娘の美希に、継承者になれと告げ、ある
壷を渡されるのですが・・・

たんにおどろおどろしくない、神秘的なホラーとでもいいま
しょうか。美しい文体、情景描写が、まるで文中に引きずり
込まれるかのようで、登場人物と同時に恐怖を味わっている
錯覚にとらわれます。

「狗神」とは、平安時代の昔に都を跋扈していた妖怪の足の
魂というか霊で、おお、そこにこの話を結びつけるか!と、
驚きいっぱいです。

さらに、冒頭の高知の山奥とは関係のない場所から話がはじまり、
村で起きた神秘的で恐怖、そして凄惨な事件が描かれ、終わりに
事件からしばらく後の話となるのですが、この構成が個人的には
大好きです。

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