晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

藤本ひとみ 『聖戦ヴァンデ』

2009-12-27 | 日本人作家 は
1789年の7月、パリのバスティーユ監獄が市民たちの手に
落ち、これをただの「暴動」とするか「革命」とするか、結果
これは革命ということになり、ヴェルサイユの王侯貴族たちは
こぞって亡命、近衛兵たちは王政を守るために戦います。

パリ市内の修道院寄宿学校の生徒ジュリアンは、「バスティーユ
陥落は取るに足らない、王座を打倒すべき」というビラを書き
ます。そのビラは、市民の中で演説をうつロベスピエールのもと
へ届き、ロベスピエールはこのビラに感銘を受け、書き主を探そう
とします。

一方そのころ、国王近衛騎兵隊将校の貴族アンリは、腹心の部下
二コラと袂を分かちます。兵隊たちは国王や貴族のためではなく
市民のために戦うと意気込み、ニコラも誘いますが、ニコラは
アンリに恩義があり、板挟みとなりますが、アンリはそれを察して
ニコラに市民兵側に行けと命令。そのとき、ニコラはアンリの家宝
の刀の鞘をアンリに渡し、ニコラはその刀を受け取ります。

パリでは、市民側に政治の主役が移り、ジャコバン修道院に集まる
ジャコバンクラブと、豪華な部屋(サロン)に集まるジロンド党の
2大派閥が主導権を握ろうとしており、ジャコバンクラブはロベス
ピエール、ジロンドはロラン夫人が台頭します。
ついに国王ルイ16世と王妃マリー・アントワネットは国外に逃亡
を企て、その際に近隣諸国に革命運動を潰すよう要請。
国内は革命軍と王政復活を望む貴族が対立、国境では隣国が攻めて
きて政治は紛糾。

アンリは、故郷のヴァンデ地方にある城に戻り、王政復活を望む
農民たちを連れて、反革命軍を結成。ヴァンデ地方では次々に
反革命ののろしが上がります。

政治の中心は、ジロンド派が駆逐され、ジャコバンクラブが実権
を握り、国王ルイ16世と王妃アントワネットをパリに連れ戻し、
ギロチンにかけて処刑。さらにジロンド派の人たちも処刑。ここに
恐怖政治がはじまります。

ジュリアンはイギリスに渡り、帰国後ジャコバンクラブ党員となり、
足早に出世。ロベスピエールの腹心となるべく動きますが、その思い
はロベスピエールには届きません。

革命軍として、隣国プロイセンと戦っていたニコラは、その戦果を
買われ、ヴァンデの反革命軍と戦うことに・・・

もはや大河ドラマです。ものすごい重厚感。
物語の重要人物ロベスピエールは、はじめこそ革命に燃え、市民が
主役の政治、民主政治を実行しようとしますが、その実、裏切りや
意見の合わない側を次々と断頭台送りにします。
挙句、自分を敬愛するジュリアンに、ダークでマイナスなイメージ
をおっ被せようとする始末。

物語は革命の途中で終わり、その後革命軍の若手砲兵だったナポレオン
・ボナパルトが実権を握り、周辺諸国と戦争。
しかしフランスの快進撃はロシアでの敗戦で尻すぼみとなり、やがて
ウィーン会議で、フランス革命は「無かったことに」して、革命以前
のフランスに戻すことを約束。王政は復活します。
そのフランス全権団の中心人物は、この物語でちょい役として登場
する、ジュリアンがイギリス留学中に出会うタレーランという人物。
タレーランははじめジロンド派、次にジャコバンクラブに入り、
恐怖政治をなんとか生き延びます。
革命側は大量虐殺、恐怖政治というフランス史に残る暗部となりま
すが、タレーランのような抜け目ない、機を見て敏な人が最終的に
勝つ、なんだか現代の政治模様と変わらないような気がします。

コメント
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