晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

髙田郁 『出世花』

2021-07-01 | 日本人作家 た
もともとインドア派ですし、ひとりで過ごすことのほうがむしろ気が楽なので、「遊びに行きたい!」とか「友達と会って飲み食いしたい!」みたいな欲求は特にありません。ですが、お買い物は好きでして、お買い物に行けないのでもっぱらネットショッピング。海外のサイトで国外(日本)発送可のところからお買い物して商品が届くと当然ながら伝票はすべて英語で、梱包を開けるとその国のニオイがするといいますか、なんとなく海外に住んでる気分が味わえます。輸送料とか関税が高いですけどね。
潰した段ボールを廃品回収にだすためにビニールひもで縛ってるときに(なんか段ボールが多いなあ)と気付いて「あ、今月買い過ぎた」と軽く後悔。いかんですね。でもまだ中毒とまではいってません。自制はできてます。

以上、「だれでも陥る!ネットに潜むワナ」。

さて、高田郁さんです。この作品はデビュー作だそうでして、つまり「みをつくし料理帖」の前。

九歳の女の子、お艶(えん)は、江戸の田舎にいます。いっしょにいるのは父親。母親はいません。というのも、母は父の同僚と不義密通のうえ藩から逃げてしまいます。敵討ちはだいたいは父が殺されたら息子が、息子が殺されたら父が、あるいは兄弟が、というように「侍」のルールなのですが、お艶のお父さんのケースは「妻敵(めがたき)討ち」といって、これもいちおうはオフィシャルだったらしいのですが、(男の肉親)の敵討ちは周囲の応援(金銭的援助など)はありますが、妻敵討ちは「アイツ寝取られてやんの・・・」といった冷笑もあったりで周囲は協力的ではありません。

さて、そんなお父さんと娘、とうとう行き倒れてしまいます。お艶は目を覚ますと、そこはお寺。住職によると、父は死ぬ間際に「どうか娘に別なよい人生を送るように名前をつけてやってくれ」と頼んで息絶えます。そこで住職は読みは同じの「お縁(えん)」と名付けます。

という壮絶なシーンからスタート。

ところでこのお寺は、江戸府内から西、下落合村にある青泉寺。この寺は火葬ができる寺。江戸には公設の火葬ができる寺が五か所しかなく、それらはすべて寺社奉行の管轄。ですが青泉寺は江戸の外ですのでうるさい縛りなどはなく、かえってそれが人気。
青泉寺には、住職の正真、修行中の正念、それと(毛坊主)と呼ばれる寺男が三人が生活しています。そこにお縁が加わります。

和菓子屋「桜花堂」の主人夫婦が「お縁を養女に迎えたい」と申し出が。ですが、息子から「ぶっちゃけどこの馬の骨ともわからぬ娘だし、いきなり養女ではなく(通い)扱いということで様子を見ては」と提案。それから二年、桜花堂の女将はお縁に早く娘になってほしいとお願いします。ところが、お縁は寺にいるときは手伝い、つまり葬式の手伝いをしていて、それを女将はあまり歓迎をしていません。お縁は葬式の手伝いをするうちに青泉寺で正式に働かせてほしいというと、それを聞いた女将は・・・という表題作の「出世花」。

棺桶を作る職人、岩吉は身長六尺(百八十センチ超)で顔は痘痕だらけ、おまけに無口で岩吉が棺を青泉寺に運んできたときにお縁が挨拶してもそっぽをむかれます。寺にちょくちょく顔を出す同心から、最近、女の髪をバッサリと切るといった事件が多発していると教えてもらいます。巷では(髪切り魔)などと妖怪の仕業と噂されています。
それはさておき、新宿に「新宿小町」と呼ばれる美人で有名なお紋という娘がいるのですが、どこぞの武家に嫁ぐという噂が。このお紋が(髪切り魔)の被害に遭います。すると岩吉が役人に連れていかれたというのですが・・・という「落合蛍」。

青泉寺にお縁に用があると来た女が。聞けば女は神田の女郎屋の遊女で名前はてまり、おみのという遊女が病気でもう長くはなく、おみのに世話になったてまりはおみのが亡くなったらぜひともお縁に湯灌をしてあげてほしい、というのです。お縁は承諾し、寺に許可をもらっておみのの長屋へ。てまりから「おみの姉さんは武家の娘だったらしい」と聞いていましたが、なるほど寝たきりでも話し方や表情などどこか品があります。ですが、お縁が湯屋に行った帰り、おみのから思いがけない告白が・・・という「偽り時雨」。

青泉寺に初老の武士が訪ねて来て、正念に向かって「若、お久しゅうございます」というのです。正念は「拙僧は正念と申します。人違いでは」とつれない態度。すると初老の武士が「いくら隠居の身とはいえ、長年お世話させていただいた宜則(のぶのり)さまのお顔を忘れることなど決してござりません」と言い、続けて「お母さまがご危篤です」といって正念の腕を引っ張ります。ところが正念は「人違いです」と。
翌日、こんどは若い女が正念を訪ねて来ます。正念にとっては異父妹にあたりますが、説得もむなしく正念は「行きません」とつっぱねます。そして、正念の母親が亡くなったとの知らせが来て、湯灌を頼まれていたお縁は正念を無理やりいっしょに連れて行こうとしますが、そこに住職の正真が「正念、行ってきなさい」と・・・という「見返り坂暮色」。

時代小説版「おくりびと」、納棺師あるいは死化粧師ともいうそうですが、そういうお話ですので、あまりハッピーなお話ではありませんが、とても「優しい」お話。

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