晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

北村薫 『玻璃の天』

2020-04-21 | 日本人作家 か
北村薫さんの「鷺と雪」が直木賞を受賞したときに「へえ、すでに売れっ子でベテランの作家さんも受賞するんだ」と思ったものでした。そしてさらに、「鷺と雪」がシリーズものであることを知り、いつか1作目と2作目を読もうかなあと思って幾年月。

この『玻璃の天』は2作目。1作目から読まないのかよ相変わらずひねくれてやがるなこのスットコドッコイという声も聞こえてきそうなものですが、売ってなかったものは仕方ありません。

(お車)で学校にお通いになる、とても好奇心旺盛な(お嬢様)と、女性運転手ベッキーさんというメインの登場人物が真相を解明していくといった、まあミステリといえばミステリなのですが、そこまでゴリゴリのミステリでもありません。

舞台設定は、昭和初期。世の中が(負のオーラ)に包まれはじめてきた、そんな状況。不思議なもので、企業でもスポーツチームでも優秀な人たちがいるであろう組織なのに一度(悪い流れ)に乗っかってしまったら、傍から見ると「あんたたち自滅しようとしてんの?」と思わずにはいられないような悪い判断をして、結果ますます悪い状況に陥ってしまう、といったようなことはよくあります。

不仲で有名な銀行と電気会社の創業者兄弟。その孫息子と孫娘が互いに惹かれ合い、それがきっかけかどうか、ある政財界の集まりにその兄弟がそろって出席をすることになったのですが、一枚の「絵」が紛失する騒ぎが・・・という「幻の橋」。

ある(ご学友)が家に帰ってこないということで、その母親が相談に来ます。そこには(六曜)の羅列した意味不明な文章の手紙が。これはなにかの暗号か。(ご学友)のお筝の先生と何か関係があるのか・・・という「想夫恋」。

「ある財閥の大番頭の息子」の新築披露パーティーで、ある活動家が転落死。この(新築)というのがとても奇妙な造りになっていて、はたしてそれが死亡した人物を殺害するための周到な計画だったのか、それともただの偶然か・・・という「玻璃の天」。

いちおう、この2作目で「ベッキーさん」の素性といいますか正体が判明するのですが、その彼女のミステリアスな人物設定のキーがシリーズ1作目を読まないとよくわからないようで、まあそりゃ3作目をはじめに読んで次に2作目を読むといったゴールからスタートすればわからないことになりますよね。

ですが、それぞれ単体でも、シリーズを通してじゃないと理解不能といったことはありません。

そして相変わらず北村薫さんの文章は、何といいますか、とてもふんわりとしていて優しいですね。

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