晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

森絵都 『永遠の出口』

2009-06-07 | 日本人作家 ま
「男子」と「女子」では、同じような経歴を過ごしたとしても、
性別によってずいぶんとその思い出や記憶が違うというの
は、ある程度成長してから気付くのですが、『永遠の出口』
は、女の子の小学生から20代になるまでの思い出を描いた
作品で、「男子」との違いがたいへん興味深い。

小さい頃から見たり聞いたり食べたりするチャンスを逃して
それが後悔するものであれば、「もうそれには永遠に出会え
ない」「一生ムリ」といういわば恐怖心というか強迫観念のよ
うなものにとらわれる、そんな女の子が、小学生時代のクラス
内におけるグループ行動の難しさに悩み、そして漠然と進路
に悩み、中学生になると恋や家族に苦悩し、ちょっとグレたり
もします。
そして高校生になり、バイトでの人間関係、家庭問題、進路に
振り回されるようになります。これは自分自身が定まっていな
い段階で定まっているように振舞うので結果あたふたしてしま
う、「10代症候群」とでもいっていいものなのですが、この背伸
びしている時期がなんとも甘酸っぱくそしてほろ苦く、どこか痛
痒い。

人格形成期に得たものと失ったものの得失点差が必ずしも大人
になったときの有利不利に働くわけではありません。
この時期を過ごす彼ら彼女らは、自分たちなりに精いっぱい無我
夢中に生きて、悩み、苦しみ、笑い、怒ります。
そんなことを、「男子」と「女子」の差こそあれ、思い出させてくれる
作品でした。

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