晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

リチャード・ノース パタースン 『子供の眼』

2009-06-05 | 海外作家 ハ
法廷闘争ものといえばジョン・グリシャムを浮かべるのですが、
適度なライトさを持つグリシャムの作品とは違い、はじまりから
終わりまで重厚感漂う作品となっております。

まずオープニングで、ある男が侵入者に遺書を無理やり書かさ
れて、自殺に見えるように銃を口に咥えさせられて発砲。
話はさかのぼり、のちに殺されることになる男の妻が、彼女の
勤める弁護士事務所の上司と関係を持ってしまいます。
男は働かず、妻の収入に頼りきりで、別居を切り出されると、
一人娘の養育権を主張します。

そして、妻と上司がイタリア旅行に出かけている最中に夫が
家で自殺しているのが発見されます。
しかし警察は初期捜査の時点で自殺に見せかけた他殺であ
るとにらみ、娘の養育権を巡って現在係争中の妻とその恋人
である上司が疑われます。
警察は目撃情報をもとにこの上司を逮捕。上司は信頼のおけ
る知人の弁護士に弁護を依頼、裁判が始まります。

日本でも裁判員制度がはじまり、法曹資格の無い一般国民が
裁判に参加することになりますが、アメリカでは「陪審員」とい
う、市民が有罪無罪の判断を下すシステムがあり、これには、
さまざまな人種がいて、さまざまな思想的背景を持つ市民がい
るために、誰を選ぶかによって判決が左右されるという問題が
あります。被告原告双方が自分の主張に有利にはたらくよう、
陪審員の候補者の中からある程度希望を通すことができます。

この陪審員選びから裁判中のやりとりが実にスリリングに描か
れていて、読んでいて手に汗握るくらい。
判決は驚きの結果となり、さらにオープニングで男を自殺に見せ
かけて殺した犯人が分かるのですが、それにビックリするととも
に、なぜ男が殺されることになったのか、その理由に怒りと悲し
さが込み上げてきます。

作品中の主テーマのひとつである「家庭内虐待は受け継がれる」
というものがあるのですが、悲劇の連鎖はどこかで断ち切れる
希望があるのが救い。

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