晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

宮部みゆき 『荒神』

2021-05-05 | 日本人作家 ま
早いものでもう5月ですね。1年の3分の1が終わってしまったということですか。去年の今頃でしたっけ、店から小麦粉やホットケーキミックス、イーストが消えたのは。その前はトイレットペーパー、ティッシュ、マスクでしたっけ。トイレットペーパーは確かデマかなにかありましたよね。

そんな思い出に浸ったところで。

宮部みゆきさんの『荒神』です。ドラマ化しましたっけ。本編は見てないのですが、前宣伝はよく見まして、江戸時代に怪獣?ゴジラみたいな話かな?うーん、まあとりあえず原作を読んでみましょうということでだいぶ時間が経って読みました。

時代的には江戸の元禄のころ。「陸奥の南端、下野との国境の山また山のなか」という場所にある大平良山(おおたらやま)と小平良山(こたらやま)。その山沿いに隣り合ってるのが、永津野藩と香山藩。戦国時代、香山はもともと永津野の領地で、天下分け目の関ヶ原の後に香山が分離します。もと主藩と支藩で隣り合っていて仲が悪いのでにらみ合ってる、というだけならよかったのですが、数年前から永津野に曽谷弾正という男が藩主の側近になってからというもの、圧制に苦しむ農民たちが国境を超えて香山に逃げてくると追っ手が国境を超えて来て逃げた農民を連れ戻すばかりか彼らを助けたり匿ったりした香山の人たちも連れ去るという所業をするので、「人狩り」と恐れられています。

ある日のこと。永津野にある名賀村の村人が山の中で怪我をして動けない少年を見つけて村に連れてきます。しかしこの少年、永津野ではなくどうやら隣国の香山から来た様子。朱音という女性はこの少年を助けることに。じつは朱音、藩主側近の曽谷弾正の妹。朱音は兄が命じている「人狩り」という非道な行為に心を痛めています。この少年も人狩りに追われて逃げてきたのではないか・・・

さっそく少年の治療にかかろうとしますが、原因不明の皮膚のただれ、そして魚の腐ったような奇妙な臭い。熊でも山犬でもないし、何に襲われたのか。そのうちに意識を取り戻して、名を訪ねると「・・・みのきち」と名乗り、そして「お山が、お山ががんずいとる」と話します。「がんずいとる」というのは香山の方言なのか意味が分からず、村の老人に聞くと、あまり良い意味ではなく「飢えて怒りに燃えて恨みがこもっている」というのです。山が(がんずく)とは、いったいどういうことなのか。それ以降、この少年(蓑吉)はよほどのショックを受けたのか話そうとしません。

一方、香山では、小平良山のふもとにある仁谷村が焼かれて村人が消えたという事件が起き、番士が確認しに仁谷村に向かったままなんの音沙汰も無く、小姓の小日向直弥が仁谷村に行くことに。

蓑吉は状態も良くなってきて歩けるほど回復。そして、自分が受けた怪我の原因、山のように大きな(かいぶつ)が村を襲って村人を飲み込み、村が燃えてしまった、そのときに蓑吉も(かいぶつ)に飲み込まれたのですが、消化されず吐き出されたようなのです。あの魚の腐ったような臭いは(かいぶつ)の体液なのか。

小日向直弥は山に詳しい従者とともに仁谷村に着きますが、そこに人気はなく、家々はすべて壊され焼け落ちています。この先にある本庄村もすでにやられているのか、直弥と従者は向かいます。村人は岩山の洞窟に隠れていて無事でしたが、藩の番士たちは(かいぶつ)にやられてしまった、というのです。その(かいぶつ)を見た者がいうには「大きな蜥蜴のような、蛇のような、蝦蟇のような、それでいて吼えたてる声は熊のようで」と説明しますが、いったいなんなのか。とにかく、山を下りて応援を寄越さなければと町に向かうとしますが町は封鎖されていて・・・

蓑吉の話した(かいぶつ)の正体がよくわからないままではありますが、朱音には気がかりなことが。もし蓑吉の言う通り香山の村が(かいぶつ)によって全滅させられたとして、次に向かうのは永津野の国境を守っている砦ではないのか。朱音は(曽谷弾正の妹)として砦に向かうのですが・・・

この怪物の正体に隠された、永津野と香山のいがみ合いの歴史の中で起きた(あること)とは。それに曽谷弾正と朱音の兄妹も関係してくるのですが、怪物と兄妹の関係とは。

冒頭でちらりと触れたゴジラですが、ゴジラの誕生は人間が「生み出してしまった」ものでしたね。『荒神』の怪物も、まあいわば人間が生み出してしまったもの。人間が自然をコントロールしようとすると手痛いしっぺ返しを食らいますよ、という警鐘があるにはあるのですが、そこまで説教じみてはいません。久しぶりに重厚感といいますか肉厚な小説を読んだな、という思いがしました。

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