晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

海堂尊 『ジェネラル・ルージュの凱旋』

2010-01-29 | 日本人作家 か
架空都市、桜宮市にある東城大付属病院の不定愁訴外来という、
ようは患者の愚痴の聞き役の担当である田口医師と、厚生労働省
の白鳥のコンビが活躍する「チーム・バチスタの栄光」からはじまる
シリーズもので、『ジェネラル・ルージュの凱旋』は、前作の「ナイチン
ゲールの沈黙」と時系列にほぼ同時刻に起きた、匿名の告発文書に
関して、田口医師が調査をはじめます。

救命救急センター部長で、「血まみれ将軍(ジェネラル・ルージュ)」
と呼ばれる速見医師が、ドクターヘリの導入に絡み、ある業者と癒着
している、との匿名の文章が、不定愁訴外来の田口医師のもとに届け
られます。

東城大学病院の院長に相談すると、田口が委員長を務める「リスクマネ
ジメント委員会」よりも、倫理問題審査委員会(エシックス・コミティ)」
に調査をしてほしいと言われます。
田口と速見は大学の同窓生で、速見をよく知る田口は、癒着などする
ような男ではないと確信しており、エシックスにこの問題を回されると
自分の管轄外になり手出しができません。
しかも、エシックスには田口憎しの委員がいて、おりあらば田口にも
攻撃してくる様子。

そして、エシックスの、速見の追求がはじまるのですが、またもや
厚生労働省から白鳥がやって来て、委員会は紛糾し・・・

はたして、速見は匿名文書の通り癒着を認めて追放となってしまう
のか、それとも田口、白鳥の一手はあるのか・・・

エシックスの委員長の田沼精神科学助教授は、院内でもすこぶる
評判の悪い医師で、何かにつけてエシックスで現場の医師からの
要求を却下、「泥沼倫理」と呼ばれています。
そして、アメリカ帰りで病院経営コンサルタントが東城大病院の
経営にあたっており、こちらも何かにつけて経費の抑制。

病院が経営を第一優先事項に挙げてしまうと、小児や救急などと
いった採算の難しい科はいの一番に削減あるいは廃止の方向に
向かってしまいます。しかし、物語の中で速水の主張する
「警察や消防が予算が厳しいからといって仕事をしなかったら
国民の命を守れない。病院の救急も国民の命を守る最前線なの
だから、本来は利益がどうのではなくて国の予算で運営される
べきなのに、独立採算制で利益の出ない小児や救急は廃止縮小
されて、挙句、問題が起こったら病院のせいになる」
というのは、まさしく現場と場外の考え方の差。

物語の後半、病院近くのバイパス道路で大規模事故が発生します。
現場から病院までの道は悪く、救急車での搬送では時間がかかって
しまいます。上空を見る速水、そこには報道ヘリが上空を舞って
いるのです。ドクターヘリさえあれば、より多くの救える命がある
はず。
しかし現実には、年間運営費2億円という金額は捻出するのに容易
ではありません。こういうところに予算をつぎ込めば、何かと批判
続出の今の与党にも追い風になるのになあ。


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