晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

A・J・クィネル 『燃える男』

2012-09-04 | 海外作家 カ
この作品はクィネルのデビュー作で、元傭兵の謎のアメリカ人
クリーシィが主人公の、その後シリーズになる作品なのですが、
先にシリーズ第3弾「ブルー・リング」を読んでしまっていて、
そこで語られていた妻と娘に関することが、この『燃える男』を
読んで「ああ、なるほど」と。

フランス外人部隊で凄腕の傭兵として有名だったクリーシィも、
その後アフリカやベトナムなど戦地を渡り歩き、今では酒浸りの
毎日。
そして、フラフラと船に乗り、南イタリアのペンションへと向かう
のです。このペンションのオーナー、グィドーもまた元フランス外人
部隊で、クリーシィとは親友でした。
数年ぶりに再開するふたりでしたが、かつての凄腕の傭兵の姿は見る
影もなく、ヨレヨレのアル中のおじいさん。

このままではいかんと、グィドーはミラノに住む弟に仕事を相談します。

さて、話は変わり、ミラノの実業家、バレット家では、深刻な問題が。
紡績業で財をなしたバレット家は、ここ近年、外国産の安価な生地に
市場を奪われて、会社がピンチで社長のエットレは資金繰りに奔走。
しかし妻のリカは、名門バレット家の妻たるべく、浪費をやめようとは
しません。あげく、ひとり娘のピンタをスイスの学校に転校させようと
いうのです。スイスの学校は無理としても、ミラノの学校に通わせるの
なら、ボディーガードを付けてほしい、と。

というのも、最近ミラノでは誘拐事件が多発しており、この前ピンタの
学校の生徒も誘拐されたばかり。しかし父エットレは、そもそも誘拐とは
プロの犯行で、火の車の状態である会社の社長の娘なんぞ誘拐なんてされ
ないと妻の心配を一蹴。
しかし、それでは妻の機嫌がおわまるはずもなく、とりあえず期間限定で
ボディーガードを雇って、何もなければお払い箱にする、ということで、
この求人を聞いたグィドーの弟が兄に話をして、クリーシィはミラノへ。

女の子のボディーガードなんて、と嫌々でしたが、とりあえずバレット家に
行くと、採用されます。
無口で、ナポリ訛りのイタリア語をしゃべる(外人部隊の時代にグィドーから
教わった)アメリカ人は、はじめリカとピンタに警戒されます。
そしてクリーシィもまた、必要以上に関わりあいを持ちたくないと無愛想。

しかしある日、リカの買い物に付き添ったクリーシィは、市内で銃撃戦に
巻き込まれます。とっさにリカをかばう元傭兵。
しかし、かつての機敏な動きはなりをひそめ、クリーシィは自己嫌悪に
陥ります。
そして、ピンタにも徐々に心を開きはじめ、ようやくクリーシィは自分で
このままではいけないと酒を控え、トレーニング(広大な敷地のバレット家の
庭の手入れや柵の取り付け)をはじめます。

ところが、いつものように車で迎えに行くと、ちょうどピンタが何者かに車に
押し込まれているところで、クリーシィはすぐ銃で男を撃ちますが、残りの犯人
に連れ去られてしまいます。
そしてクリーシィは犯人に撃たれて重体。

そして数日後、聡明で魅力的だった少女は無残な姿で発見されるのです。

クリーシィは、グィドーの亡くなった妻の実家のあるマルタのゴッツォ島で
リハビリとトレーニングを開始。
ピンタの誘拐、殺害に関わったミラノのマフィアへの復讐心を燃やします。

そこで、ナディアという女性に出会い、クリーシィは、今は女にうつつを
抜かしている状態ではいと分かっていながらも、その事情をナディアも知って、
ふたりは結ばれます。

フランスの武器商人から大量の兵器を買って、いよいよイタリアに戻ることに
なるクリーシィ。
巨大な組織であるマフィアにひとりで戦いを挑むのですが・・・

シリーズ3作目「ブルー・リング」に出てくるイタリア憲兵隊の大佐(警察官)
マリオ・サッタが登場します。腐敗、汚職にまみれきったイタリアの役人の中
にあって正義感のある男。サッタはミラノで立て続けに起きているマフィアの
連続殺人事件の実行犯を探します。
そこで、数ヶ月前にあったバレット家の娘の誘拐殺人事件を思い出し、その時に
銃で撃たれて重体だったボディーガードの名前が浮上してきます。

同じくマフィアの間でも、あの時のボディーガードの犯行と分かり、独自の
情報網で、クリーシィという名前までバレてしまい・・・

はたしてクリーシィは、最終的にマフィアのボスのところまで行けるのか。
そして、復讐は遂げることができるのか。

ゴッツォの美しい自然、そして島の魅力のひとつでもある素晴らしい住民たちの
描写部分は、その後に起こる復讐劇とは対照的に清涼感あふれています。

久しぶりに「痛快!」と心の底から思える作品。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 浅田次郎 『霞町物語』 | トップ | 東川篤哉 『謎解きはディナ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

海外作家 カ」カテゴリの最新記事