晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ジュディス・クランツ 『スクループルズ』

2009-11-09 | 海外作家 カ
小説のジャンルによっては、面白い面白くないは別にして、
向き不向きがあって、ようやく読み終えた『スクループルズ』
という、ロマンス系は自分には向いてないのかなあと。
というのも、上下巻あわせて800ページ弱の文庫本だったら
せいぜい2,3日もあれば読み終わるのですが、遅々として
進まず、途中で「読むのやめようかな」と脳裏によぎること数
回。
しかし、読了のスッキリ感こそちょっと物足りないものの、なん
だかんだいって、けっこう面白かったのです。

ボストンの旧家、といっても名前だけで末端の家系で、裕福と
は縁のない家に生まれたウィルヘルミーナ・ハンネンウェル・
ウィンスロップ(幼少時のあだ名はハニー)は、幼くして母を失
い、父は医学の研究者でほとんど家には帰らず、家政婦に思
いきり甘やかされて、醜く太ってしまいます。
一応、名門ウィンスロップ家の一員ということもあり、世話焼き
の叔母は親戚と合わせますが、内気で会話のすべを知らない
ハニーは浮いてしまいます。
やがてはニーは18歳になり、フランスに渡ります。伯爵夫人
の家にホームステイしますが、はじめは言葉も通じず、食事も
貧相。しかしそれが功を奏しハニーはみるみる痩せてゆき、も
ともと得意だったフランス語はみるみる上達し、それまで内気
だった性格も積極的になり、醜いカバ(フランスの伯爵夫人が
ハニーを見た第一印象)が、どこにでも連れて歩きたいスタイル
の良い美人へと変貌を遂げたのです。

ハニーはそれまでの過去の自分を捨てて、ビリーと名乗ることに。
ニューヨークの秘書養成学校に通い、ある大企業の秘書として
働きはじめます。そこで最初の夫となる社長エリス・アイクホーン
と出会います。
年の差50歳近くのエリスと結婚したビリーは大金持ちの社長夫人
となり、世界中に別荘を持ち、何不自由なく暮らしますが、突然エリ
スが病気になり、長年の介護もむなしく死んでしまうのです。

未亡人となったビリーは、はじめ暇つぶしの道楽的にはじめた
「スクループルズ」という名のブティックをビバリーヒルズに開店
させますが、まったく流行らず、ある日、スパイダーという男と、
ヴァレンタインという女を雇うことになるのですが、スパイダーの
大規模なイメージチェンジとヴァレンタインの注文服が評判となり
スクループルズはビバリーヒルズで流行のブティックとなります。

そしてビリーは2番目の伴侶となる映画プロデューサーのヴィトー・
オルシー二と出会うのですが・・・

とりあえずビリーの半生だけを紹介しましたが、物語はスパイダー
とヴァレンタイン、その他登場人物の背景もしっかりと描いていて、
さながら大河ドラマのよう。
ファッション業界、さらに映画業界に渦巻くさまざまな人間模様が
とても興味深く、金や複雑な恋愛事情(ファッション業界はゲイの
巣窟とのこと)が絡んできて、なんとも混沌とした世界は、渦中に
はいたくないですが他人事としては面白いですね。

ラストはオルシー二の映画がアカデミー賞にノミネートされ、授賞式
にのぞむビリーと夫、というシーンで終わるのですが、なんともオシ
ャレな締めくくり。

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