晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

和田竜 『忍びの国』

2017-01-20 | 日本人作家 ら・わ
「忍者」といえば、世代によって第一に浮かぶのが
違ってくるんでしょうけど、ハットリくんであった
り、ショー・コスギさんであったり、あるいはニン
ジャタートルズとかナルトあたりですか。
あと「キン肉マン」にザ・ニンジャっていましたね。

もっと古いのになりますと猿飛佐助とか赤影とかですか。

この作品の舞台は戦国時代の伊賀。忍者の故郷ですね。
ちなみに、ハットリくんは伊賀でライバルのケムマキ
は甲賀で、伊賀と甲賀は、史実では別に敵対関係には
なかったそうですね。

織田信長が全国統一を着々と進めていく中、伊勢国の
領主、北畠具教が義息の信親に討ち殺されます。
信親というのは信長の次男で、北畠家に養子に入り、
具教を討ったことで父の信長に認めてもらえると思い
ますが、信長は褒めるどころか声もかけてくれません。
そして、「伊賀には手を出すな」と命令をします。

伊賀は領主という者がおらず、地侍という小領主が戦国
時代には六十六人いて、その中で有力な十二家が集まる
「十二家評定衆」が実質的な政治を行っています。
が、この十二家も仲が良いわけではなく、評定衆どうしで
たびたび戦が起こります。

地侍の下には「下人」という、これがいわば家臣のよう
なもので、ただし主従関係というよりかは、傭兵のような
存在。

さて、伊賀の隣国である伊勢の北畠具教が討たれたと聞き、
「十二家評定衆」では、伊賀は織田家と戦わず支配下に
なると宣言。
しかし、これが伊賀に足を踏み入れさせないための幾重
にも張り巡らされた罠だったのです・・・

無門という自称「伊賀一の忍び」は、安芸から「俺と
夫婦になれ」と、お国という女性を連れ帰ってきます。
ところが、無門はお国の尻に敷かれています。
この無門という一見あまりやる気のない伊賀者が地侍
同士の戦で活躍したところから「罠」が始まります。

「忍者」というと、目出しの覆面に黒い装束、手裏剣
に水の上を歩いたり壁を登ったり、とこんなイメージ
ですが、もちろんこれらもやるにはやりますが、実際は
現代で言う「諜報員」で、アメリカのCIA、イギリス
のMI6,または旧ソ連のKGBのような、ひらたくい
えばスパイがメインの活動ですね。
百姓や大工、または侍に扮して相手国に侵入し、情報
収集をしたり、ときには嘘情報を流布したりします。
地侍にとって下人とは将棋の駒のような存在で、それ
を承知の下人も地侍を裏切るのは当たり前。
生き残るためには味方をも欺きます。

よって、いくら下克上の戦乱の世とはいえ、戦場において
名乗らなかったり、または主君を背後から襲ったり騙し
討ちしたりすれば、やはり白い目で見られたりする時代に
あって、「伊賀者は武士にあらず」という評価だったそう
です。

ネタバレにならない程度にしておきますが、ラストの信長
と無門のシーンは思わずゾクッとしました。


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